投資について前向きになるために知っておくべきお金に関する超基本のセオリー

どんどん膨れ上がり過去最高の1000億円を超えた日本人のタンス貯金と銀行預金。「投資は怖い」と思う前に、だれもが知っておくべきお金に関する基本的なセオリーがある。

現金・預金が過去最高の1305兆1000億円

NHKの特集を紹介した前回の記事でも、日本の現金・貯金が増えていることに触れましたが、日銀のマネーストック速報によると、7月の「現金・銀行などの預金」額の合計の月中平均残高が1305兆1000億円で過去最高になったそうです。1305兆円がどれほどの額かというと、日本の平成28年度の国家税収が約58兆円で一般会計歳出が96.7兆円ですから、ものすごい金額です。国の借金は大きな問題となっていますが、予算ベースで今年度末の長期債務残高は1037兆円程で、国民のみなさんが現在タンスや銀行口座に貯めている資金の方が金額が上回るのですね。それほどの膨大な資金が積極的な投資に回って、日本企業の人材確保やイノベーション、海外市場開拓につながっていくと日本経済はもっとうまく回っていくのではないかと、素人にも想像ができます。

金融庁も確定拠出年金やNISAの導入で一般人による投資を促そうとしていますが、それ以前に基本的なお金に関する教育や意識の改革を行うことが、日本経済の成長のカギになるのではないでしょうか。日本人は「投資」というと怖いイメージやうさん臭いイメージ、もしくは富裕層がするもので一般の人には縁がないことのように思うようです。しかし、自分のビジネスや会社に勤めて稼いだお金をうまく運用して増やすことは、効率よく家計を回すためにとても大事なことです。特に、少子高齢化が深刻になる日本では、老後に向けた投資や資産運用が重要になってきます。日本人は「清貧」を重んじ、お金のことを話すのははしたないという文化で育っていますが、そろそろお金について、そして投資について基本的な教育をすべき時代になっていると思います。

そこで、どんな勉強から始めたらいいのでしょう?難しい金融や為替の話は置いておいて、まずはお金にまつわる超基本のセオリー(理論)を知るといいのではないかと考えました。

セオリー① 時間価値=The Time Value of Money

それは、投資を勉強する際に基本理念として習う「The Time Value of Money(お金の時間的価値)」です。お金は利息を生んでくれるので、今持っているお金の金額は、将来手にする同じ金額より価値が高く、その逆も言えるという考え方です。つまり、今の1万円は、3年後の1万円よりも価値が高く、今の1万円は3年前の1万円よりも価値が低いということです。銀行に預けておくと利息が付いて増えるというのが一番わかりやすい例です。(現在の金利ではほとんど増えないので実感はないと思いますが・・・)単純に毎年1回利息が発生するものとすると、数式は以下の通りです。

PV × ( 1 + r ) ⁿ = FV

PV=Present Value(現在の価値), r=interest rate(利率), n=number of years(運用年数), FV=Future Value(将来の価値)

ではなぜ、お金を人に貸すと、何もしなくても増えるのでしょうか。それは、元手があればそれを投資してビジネスを行い、より増やすことができるからです。例えば、手元に100円あるとしましょう。100円でバラの花を1本買って、150円で売ると、手元にあった100円が150円になります。自分で仕入れや売買をできない人は、自分の持っている100円を誰かに渡して、それを120円で返してもらうように頼めばいいのです。100円を借りた人は、そのお金で花を100円で仕入れ、150円で売って、120円を貸してくれた人に返し、残りの30円は自分の懐に入れます。借りた人からすれば元手0円で、30円の利益を上げ、貸した人からすれば自分の持っていた100円が、自分では何もしないで120円に増えたことになります。これがお金がお金を生むという、利息の基本的概念です。

この仕組みをそのまま利用したのが債券で、国や企業が発行する債券を購入すると、毎年1~2回クーポンという形で利息が払われ、満期には決まった額面のお金が戻ってきます。一方、より企業の経営に踏み込んだ形でお金を融資するのが株式で、株式を購入すると経営方針に意見することができる議決権と共に、利益が出た場合に配当を得る権利がもらえます。

そして、複利の効果は大きい

お金は人に貸せば時間の経過とともに増えるというのが先ほどの「The Time Value of Money」のセオリーですが、時間の経過とともにその増え方が大きくなるというのがもう一つ知っておきたいセオリー、「複利の効果」です。利息の計算の仕方には「単利」と「複利」の2種があります。当初の元本にのみ利息が支払われるのが「単利」、支払われた利息を元本と合わせて、新しく元本として利息を計算するので利息の額が単利より増えていくのが「複利」です。

例えば、単純に毎年1回利息が発生するものとみて年利3%で100万円を運用した場合、「単利」ですと100万円の3%にあたる3万円を毎年もらうことになります。それが「複利」ですと、1年目は100万円の3%で3万円増え、2年目は増えた3万円を加えた103万円の3%にあたる3万900円がさらに増え、2年間で増えた6万900円を加えた106万900円の3%にあたる3万1827円が増え・・・という風に、増え方がどんどん大きくなります。10年で実質金利は30.45%, 20年で80.61%、30年で142.73%です。投資したお金が14年で5割増し、24年で2倍、38年で3倍、47年で4倍になるのです。

この「複利」を投資に活かすには、株式の場合、もらった配当金でその株式を買い増す「再投資」をすれば、配当利回りを複利にすることができます。投資信託でも、日本でかつて主流だった毎月分配金が出るタイプではなく、配当を再投資するタイプのものの方が、将来的に大きなリターンを得ることができます。

1年で3%しか増えないのだったら、リスクを取って、かつ証券会社の手数料だ税金だと色々取られるくらいなら、そのまま置いておいた楽だと思う方は多いかもしれませんが、この年利3%というのは、複利であれば長期的にとても大きな額を生むのです。かのアインシュタインも複利のことを「人類最大の発明」や「宇宙で最も偉大な力」と言ったといわれていますから侮れません。

セオリー② すべての会社は投資から始まる

そしてもう1つ考えたいセオリーが、当たり前の話ですが、すべての会社は投資から始まるということです。トヨタだって、ユニクロだって、投資家=株主無しには会社は成り立ちませんし、新しい工場も、新製品の開発も投資なしにはできません。スタートアップ企業の可能性を信じて出資してくれる裕福な投資家を「エンジェル投資家」と呼びますが、少額の個人投資家の中にも、好きな業界や応援したい会社の株を買っている人は少なくないはずです。もちろん株主優待などが目当てということもあるでしょうし、利益が出なければすぐに資金を引き揚げ、別の企業や分野に投資することもあります。プロの投資家やファンドマネージャーであれば、あくまで自分のビジネスとして成果だけを求められます。しかし動機は何にせよ、すべての投資にはその人や会社やビジネスや業界に「信じて賭ける」という要素があります。ちろん投資の中には、デリバティブ(金融派生商品)など、高度に複雑化していて、ビジネスに出資するという理念とはだいぶ離れた投資の形もありますが、投資という行為自体が、特定の企業やビジネスや業界や国や地域、そして経済活動全般を促進させ、発展させる燃料になっているのは事実です。

以上のセオリーはとても単純で、小・中学生でも理解できるものだと思いますが、意外と気がついてない日本人が多いと思います。このセオリーが頭にあれば、お金を現在の超低金利の銀行や、タンス預金として置いておくのがなんとなく無駄なことだと感じると思います。もちろん労働は美徳。働いてお金を稼ぐことは素晴らしいことです。でもせっかく蓄えた資金をただ切り崩して使っていてはもったいない。わずかでも貯めたお金を人に運用してもらって、少しでも増やす。そうすることが、人を助けビジネスを助けることになり、それが将来の自分を助けることになるのなら、投資っていいことだとは思いませんか・・・?

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