香港で家を買おうとして直面した熾烈な住宅購入事情

世界一住宅価格の高い香港で、熾烈な競争が繰り広げられる新築物件の購入に名乗りを上げたアドバイザー・栂尾佑二の不動産購入ドタバタ記。当選倍率40倍の壁を乗り越えて、マンション購入なるか?そこで学んだこととは?香港の新築物件購入の手順と現場の様子をレポート。

世界一住宅価格の高い都市、香港

2019年の世界で住宅価格が最も高い都市に9年連続でまたまた香港が選ばれたそうです。(Bloomberg記事)住宅相場は今年こそは下落予想とそこかしこで囁かれている中、予想に反して過去最高を更新。2017年、そんな住宅バブル真っ最中の香港で、売り出し開始となった新築物件購入に名乗りをあげてしまったのが、なにを隠そうこの私。なぜ、こんな高騰している時期に?といった声が聞こえてきそうですね。理由はたくさんあるにはあるのですが...ブームに後押しされ、大規模タワーマンション、豪華施設に、駅・モール直結物件という魅惑的な言葉の数々にやられてしまったのかな。

実際に購入希望の名乗りをあげてみないとわからなかった手順を、ここでざっとお伝えさせてください。まずは、すでに高ぶった気持ちを抑えつつ、未来の新生活を妄想しながら、物件情報を入手。それから1週間後、第1期販売価格が知らされ、購入後の支払いをより鮮明にイメージしていくわけです。香港のマンション販売は何回かに分けて部屋を販売する小出しスタイルで、第1期販売は価格が安く、マンション開発会社からの割引率も高くなります。実はそこが私の狙い目で、第3期以降の購入には参加する気もありません。

マンションの第1回抽選会はなんと当選倍率40倍

そして、物件内覧。不動産セールス、購入希望者の山で、会場は熱気がすごく、手続きだけで約2時間。人混みにもまれながらモデルルームまでたどり着くまで3時間。実際には会場に中国大陸の方々はもういませんでした。ただ、いつもは紳士淑女な香港人も、はやる気持ちがそうさせたのか、無秩序に我先にと進みたがるので、かえって身動きがとれなくなってより多くの時間をロスしてしているように見えます。もはやモデルルーム内を楽しく見て回る力はありません。内覧後はジェットコースターのような早さで追い立てられ、考える時間を与えないのが香港スタイル。本当に目まぐるしいスケジュールで進んでいきます。3日後には申込手続き完了(しなければならない)し、抽選の申込もします。香港で新築物件を買うには抽選に当たらなければいけません。購入資金はもちろん、運も持っていなければ購入することはできないのです。抽選には約300万円の小切手が2枚必要で、申込用紙に添付して提出します。申込提出後1週間以内に第1回目の抽選が行われます。今回の当選倍率は40倍で、もちろんあっけなく落選。そのまた1週間後に第2回目の抽選があり、とんでもない倍率を聞いて、徐々にしぼんだ私の情熱は抽選の神様にも見放され、ゲームオーバー。第2回目の物件価格は前回より3‐4%高い設定になっていましたが、倍率は20倍でした。その後、また次の抽選、そのまた次へと続いていきます。ちなみに第2期抽選に当選して購入された高層階の一番小さいサイズの(約25平方メートル)フラットは第1期に比べて11%増、第3期は約39%プラスの価格となったそうです。

高層マンションの一室が25平米でなんと一億円

実は、香港の住宅相場は長年にわたり、市民の購買能力からはかけはなれており、現在は主に投資家の累積資金で取引されているとのこと。しかも、デベロッパーが建築する前述の高層階の極小フラットですら、日本円にして約1億円を超えるため、頭金だけでも4千万円は必要です。不動産投資で利益をあげて、わらしべ長者化している投資家は別として、一般の香港人はどうしているのかと大きな疑問が生まれてきました。そこで、懇意にしている私の不動産会社の担当者に聞いてみると、こういった物件の購入者は、もうすでに潤沢な資金を手にしている富裕層や、多額の融資が見込めて、購入しても利益が得られる会社経営者がほとんどではあるけれども、香港人の中には頭金の準備にも、残金の手配にも二の手、三の手、奥の手までも駆使して不動産投資として購入し、利益を追求する人々がまだいるそうです。さすが、リスクを負ってでも利益を追求する香港人!香港人の投資に対する姿勢には驚かされます。実にたくましい!(皆さんにはお勧めしませんけどね。)

投資はやはり余裕資金でやりましょう

家計に対する住宅ローン負担も高いだろうから、米国がさらに利上げをすれば、住宅ローン金利も上がってたいへんだろうなぁ。悪くすると住宅価格は急落し、実体経済に影響する可能性もあるし。。と思い、フッと気づく。そして一筋の汗がツーっと背中に。あぁ、抽選外れてよかったかも。住宅価格が下がった時にお金を借りずして購入できる余力を蓄えた方がよくないかい?人のふり見てなんとやら。「投資は余裕資金でやりましょう」いつもクライアントに言っていることです。今回は投資ではないけれど、そんな基本を思い出す、貴重なよい経験ができてよかったです。これを予行練習として、「その時」がきたら、万全の態勢で臨める力を持っていられるよう、日々の鍛錬を心に誓う、そんな素敵でほろ苦い出来事でした。

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