保険のパンフレットに要注意。その利回り本当にもらえますか?
マイナス金利政策の影響で日本での運用が行き詰まる中、最近注目されているのが外貨建て保険商品。最近人気だという商品のパンフレットには「積立年率は年3%最低保証」という魅力的な言葉が。実際に解約返戻金を計算してみると、パンフレットの印象とは異なる数字が・・・。
最近日本へ行って非常に興味をそそる金融商品のパンフレットを見ました。今日本でそのシェアをぐんぐん伸ばしているという外貨建て保険商品です。
最近の売れ筋商品
2016年1月の日銀黒田総裁のもとで施行されたマイナス金利政策。デフレ脱却を目指し、インフレ目標年2%を掲げて実施された。この影響を受け日本の金融機関は資金運用先に支障をきたし、特に生命保険会社では日本円建ての運用系の商品(終身保険、年金保険、学資保険など)では販売停止が相次いだようです。
そこで次第に注目されてきたのが外貨建て生命保険商品です。
魅力的な利率は本物か
そこで説明を受けたのが「積立利率は年3%最低保証」。さらに結果次第ではさらに…といったものでした。一般的に年利が高いと言われている商品を扱う我々香港のファイナンシャルアドバイザーでも年3%保証というのはなかなか魅力的です。いろいろな会社の商品を扱うこの日本の保険代理店の方も非常におすすめしていました。
そこの代理店では個別相談は事前予約が必要とのことであいにくその場ではお話をゆっくりと聞く時間が無かったのですが、パンフレットでおおよその金額も掲載されているので…との事でもらってじっくりと読んでみました。確かに「積立年率は年3%最低保証」と明記されています。具体的な保険料や将来受け取りができるであろう解約返戻金の事例も明記しています。
男性 30歳 15年払込
毎月238.9米ドル 払込保険料累計額43,000米ドル
- 経過年数15年で、払込保険料累計額43,000米ドル、解約返戻金額41,600米ドル。
- 経過年数20年で、払込保険料累計額43,000米ドル、解約返戻金額46,500米ドル。
- 経過年数30年で、払込保険料累計額43,000米ドル、解約返戻金額57,400米ドル。
- 経過年数35年で、払込保険料累計額43,000米ドル、解約返戻金額63,400米ドル。
※上記の数字はパンフレットに記載されている金額の若干変えて、端数を省いています。
実際に計算してみると
前述の払込保険料累計額と解約返戻金と経過年数で実際の年利(複利)を計算してみました。
- この契約は15年で支払は完了。支払完了時点で年複利マイナス。
- 経過年数20年という事は15年で支払完了時点での積上げた金額から5年間複利運用したとして計算。結果、年複利1.577%
- 経過年数30年という事は15年で支払完了時点での積上げた金額から15年間複利運用したとして計算。結果、年複利1.944%
- 経過年数35年という事は15年で支払完了時点での積上げた金額から20年間複利運用したとして計算。結果、年複利2.622%
結果としてパンフレットに堂々と記載されている「積立利率は年3%最低保証」には到達していない結果となりました。
最初からこうした「実際の利率」を知っていたのであれば問題がないのでしょうが、「積立利率は年3%最低保証」だけを信じて疑わなかった人は…どのようなご感想をお持ちでしょうか。
積立利率年3%は保証されているのではなかったのか?
原因は非常に簡単な仕組みです。
支払保険料からこの保険会社に必要な手数料(利益)が差し引かれて、その差引後の金額がその利率で運用されている
この記載はパンフレットの最後方にしっかりと記載されておりますのでこの説明を読めば何とか理解ができますが、パンフレットの特徴面に記載されている「年率3%で運用」だけを読んでしまい、支払った金額が年率3%で運用されていると勘違いをしてしまう人は少なくないはずです。
やはり実際の年率などはしっかりと自分自身で計算をするか、もしくはパンフレットに記載されている細かい注意事項を良く読むしか「勘違い」を防ぐ方法はないようです。
参考までにこの事例を用いて年率3%を計算してみると、15年目で約54,918米ドル、20年目で約63,666米ドル、35年目で約99,189米ドルとなります。(15年目までは毎月積立、それ以降はその金額を元手に複利で計算)
複利計算は数字を入力するだけの簡単なものがウェブなどで掲載されていますので実際に試してみるのが一番良いと思います。
そもそも香港の保険はそんなことになっていませんから、外貨建て保険商品を見るならば国ごとの違いにも目を向けてみましょう。似たような商品を香港で買ったらどうなるか知りたい人はこちらからお問い合わせ。