好景気は株価を予測する材料にならない

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事によると、過去120年の不景気を調査したところ、ほとんどのケースで景気後退が始まるかなり前に株価は下落しているという。株価が下落するタイミングは予測できないので、結局は長期運用、資産分散を続けることが大事。

強い経済は株式市場の前兆としてアテにならない

前回のブログ「株式市場が荒れる時は何をすればよい?」でも触れましたが、2月の頭に株価が急落しすぐに落ち着きを取り戻しました。今後のボラティリティを不安視する投資家がいる一方、多くの投資家は景気が好調なのを理由に、先月の動きはただの一時的な調整に過ぎないと考えているようです。しかし、好景気の最中には、ベアマーケット(下げ相場)は始まらないかというと、そうではないという調査結果が3月4日のWall Street Journalの記事「Why the Strong Economy Is a Poor Predictor for the Stock Market(なぜ強い経済は株式市場の前兆としてアテににならないのか)」で解説されていました。過去120年のアメリカの景気と株価の関連性を調査したところ、株価が最高値をつけて下落し始めるのは不景気が始まるかなり前だったということです。

下げ相場は景気後退の8か月前に始まる

調査内容は、アメリカ最大の経済学研究所「全米経済研究所(NBER)」が過去に発表した景気後退の始まりと終わりのタイミングと、フロリダのリサーチ会社による過去のベアマーケットのタイミングを比較するというものです。定義としては、景気後退(不景気)というのは2四半期以上連続してGDPなどの経済指標が下落した場合で、ベアマーケット(下げ相場)というのは株価が最高値から20%以上下落した場合をいいます。調査によると、1900年から現在までにおきた22回の景気後退のうち、20回は下げ相場とほぼ同じタイミングかもしくは1年後に起こっていて、平均では相場が下がり始めてから8か月後に景気が後退していたということです。例外は1926年と1945年の2つのケースのみでした。

2008年リーマンショックの場合

2008~2009年に起こった金融危機を詳しく見てみると、2007年10月9日に株価が最高値をつけて落ち始めた際には経済ニュースは景気が好調だと好意的に伝えていました。10月31日には米政府が第3四半期にはGDPが前期の年3.8%から3.9%に上昇する見込みだと明るい兆しを発表しました。その年の12月になるまで、NBERの指標による景気後退は始まりませんでしたし、NBERが正式に景気後退を確定したのは翌年2008年の12月です。つまりこのケースですと、下げ相場は景気後退の2ヶ月前、かつ正式に景気後退が発表される14ヶ月前には始まっていたのです。

「嘘の警告」となる下げ相場も多い

では、下げ相場が始まると必ずその後には景気後退が始まるのかというとそうでもないようです。調査によると、1900年以降下げ相場は36回あり、それに対して景気後退は22回しかありませんでした。20%までは落ちなくても最低10%下落した調整局面も含めると、もっと多くの数になります。これはいわゆる「偽陽性」で、株式市場が景気後退を予感しながらも経済は下向かなかった事例が沢山あるということです。最近のケースですと、2011年の4月から10月と2015年の5月から2016年の2月です。厳密に言うと、この2つのケースではダウ平均株価もS&P200も終値では20%まで下落しなかったので「ベアマーケット(下げ相場)」とまでは言えないかもしれませんが、日中ではS&Pが20%以上下落していますし、小型株の値動きを示す指標のラッセル2000インデックスでは、それぞれのケースで25%と24%の下落を見せました。ですが、どちらのケースの後にも景気指数が1四半期以上下落することはありませんでした。

結論は・・・予測するのは厳しい

記事の最後に、この調査の結論として述べられているのは、「これらの議論は、株式市場が景気動向を気にせず動くことを意味しているわけではなく、景気が株式市場による資本の動きに影響されないというわけでもない。しかし、この確固たる事実をもとに実行可能な投資アドバイスをすることは驚く程難しい」ということでした。つまり経済ニュースや経済指標を入念に追いかけて、さまざまなリサーチや分析をしても今後の株式の動きやタイミングを正確に予測することは、結局誰にもできないということではないでしょうか。そしていつも私たちがお客様に語るように、「長期運用を続ける」「資産を分散する」「こつこつ積み立てる」ことが資産を増やすための最善の策という、毎回同じ結論に達するのでした。

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