確定拠出年金について思うこと

2001年の確定拠出年金法により、日本でも徐々に広がりを見せている個人型確定拠出年金について、「どのファンドを選んでよいのかわからない」というクライアントも多い。気をつけたいポイントをちょっとだけアドバイス。

以前は国が運営する一方だった年金に対して、現在は日本でも個人型確定拠出年金(通称:iDeCo、イデコ)の発足など、「投資なんか自分には一生関係ない」と最近では言えなくなってきている現状があります。”貯蓄から投資へ”という標語が色んなところで聞かれますが、その準備はできているのでしょうか。

急に投資をやれ!と言われても

最近では前述のように将来受け取る年金の運用の一部を個々人が一定額の毎月積立によって投資をせざるを得ない環境があります。今までは国が年金保険料として徴収し、その巨大な資金を国が運営し、それを給付していました。確定拠出年金の導入企業は2001年の確定拠出年金法により徐々にその広がりを見せています。

これはある一定の拠出額(年金の原資)をその将来の年金受給者(つまり自分自身)の投資運用指図によりお金を育て、将来老後の年金の一部にしようとするものです。つまり将来その金額が大きく育つか、それとも運用に失敗して目減りしてしまうかは受給者本人の責任となるのです。

弊社のお客様でも多くの方から「どのようにすればよいのか?」「どのファンドを選択して良いかわからない…」などの多くのお問合せをいただきました。

弊社のお客様は比較的投資という事には慣れていらっしゃる方が多いのですが、それでも自分自身でファンドの選択をしなければいけないというのは相当なプレッシャーがあったようです。しかも会社からは簡単な説明だけで、あとは何日までに決めてください、と言ったような状況でした。強制的に投資の世界に引き摺り込まれてしまった感じだと言われた方もいらっしゃいました。

ちなみに香港ではMPFという年金制度がありまして弊社ではHSBCのMPFプラットフォームが利用されておりますが、香港では全てのファンド選択を自分自身でおこなわなければいけません。

比重は日本を中心に、というアドバイスは本当にいいのか

それぞれの会社が加入している金融機関にもよりますが、おおよそ20個前後のファンド(投資信託)や定期預金、保険関連商品などがあるようです。

多くの方が会社の説明ではその個々人のリスク許容度をYes/No方式もしくは得点方式で進めていき、それぞれのリスクカテゴリーに合わせた金融機関おすすめのパターンを提示しているようです。

あるお客様よりお聞きした組み合わせですと、ちょっと私たち香港のアドバイザーとは違った考え方が多い印象でした。

まず圧倒的に多かったのが、平均すると70~80%前後を「日本株ファンド」もしくは「日本債券ファンド」「元本保証型商品」に比重の多くを置きなさいというアドバイスです。残りはお好きに外国株式や外国債券などを組み込みなさいとの事でした。

どのファンドを選ぶのが良いのか

ここではいろいろな法的な問題から具体的な投資助言やファンドの選択について回答する事はできません。しかし限られたファンドの中から選択をするにあたり注意点のみお知らせしようと思います。

残念ながら日本株の時価総額は世界中の株式から見ても今現在では10%未満です。また最近の経済の流れからみても成熟し切ってしまった日本の優位性は少しずつ脅かされている状況です。そんな中で上記のアドバイス通り日本一国にそのほとんどをビットしてしまっても本当に良いのでしょうか?もちろん日本に住んでいて日本の企業に勤めているのであればその気持ちはよく理解できます。上場している企業にお勤めであればなおの事です。

世界の株式の時価総額の約半分ほどを占める米国株式よりもシェアの少ない日本関連ファンドにその多くを掛けてしまうのはちょっと私たち香港のアドバイザーからすると非常に違和感を感じます。販売側からすると、日本の企業であればおおよその見当は付くし景気も住んでいればよく分かる。だからもし仮に大幅に下がったとしても「日本は今こんな景気ですからね~」なんて事で納得していただくのかもしれません。

もちろん世界株式や世界債券を買ったからと言って必ず将来的に儲かるという保証はどこにもありません。ただ世界中では必ずどこかでより良い経済を求め、より新しい商品やサービスが要求されています。言い換えれば、日本が仮に停滞していたとしても、世界のどこかでは必ず景気の良いところはあるという事です。もちろんそれが日本であるという事もこれから十分にあり得るとは思います。ただ、世界の上場している株式のシェアから公平に見ますと日本に偏り過ぎるのは…と思います。

元本保証型商品は絶対に損をしないのか

最後にこの選択肢に必ずと言っていいほど入っている「元本保証型商品」。これが本当に絶対に損をしないか?将来絶対に元手を減らしたくないのでこの元本保証型商品を100%組み込みます、という方がいると仮定します。30年後、積み立てたお金が毎月3万円だとして合計10,800,000円。投資結果が仮に0.5%複利でずっと固定金利が付いたとすると11,678,910円。利益は878,910円となります。よく「放っておいてこれだけ付くのであれば良いのでは?」という事を耳にしますが、本当にその通りでしょうか?

もし仮に現在の日銀黒田総裁や安倍総理大臣が掲げるインフレ目標2%が達成できた場合、前述の投資結果は14,896,599円になってトントンという計算になります。つまり、投資結果<物価上昇となり、結果として投資をして実質的に損をしてしまう事になりかねないのです。もちろんこの30年の間ではこの商品の金利も上昇する局面があるとは思いますのでそのままの数字で仮定してしまうのはいけないことかもしれませんが…。

ここ香港ではこの物価上昇つまり常にインフレ状態で、ここ数年の間では2~3%で物価が上がり続けています。豚肉の値段、スタバのコーヒー、家賃、特にひどいのが学費などの教育関連。普段食べているレストランなどはメニューの価格改定が間に合わず、シールを貼り付けて値段を書いているところもあるくらいです。

余談ですが、生命保険商品などの長期的な商品ではその購入時点での金利が固定になってしまう商品があります。前述の通り、もし仮に現在の低い固定金利で何十年という契約になってしまった場合の恐ろしさがお分かりいただけると思います。物価上昇に追いつかない、言い換えれば「元本保証という名の、毎年損をする商品に資金を投入し続ける」という結果にもなりかねませんね。

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