香港返還20周年と日本の20年

1997年7月1日にイギリスから中国への返還された香港は20周年を迎えた。30年後にせまった2047年問題と中国の影響力増加に揺れる香港。一方この20年間の日本の歩みを香港と比べると何が見えるか。データで比べる香港の返還20年と日本の過去20年。

一国二制度と2047年問題

2017年7月1日は香港がイギリスから中国に返還されて20周年にあたります。今日から3日間、2013年の就任以来初めて習近平国家主席が来港するということで、当社のビルの前の湾岸道路添いにもたくさんの警察官が立ち、軍用ヘリコプターが飛ぶなどして、厳重な警備がされていることがわかります。

返還20年にあたり誰もが心配しているのが、1997年から50年間つまり2047年まで約束された一国二制度がどうなるかでしょう。香港では、防衛・外交権以外は高度な自治を認めるという制度の下、中国本土にはない言論の自由や民主的な教育が認められてきました。中国政府に批判的な本を扱う書店の経営者が香港内で誘拐されるなど、ここ数年で政治的な圧力が強まり、香港の独立性と自由に対する信頼が揺らいでいます。一般投資家の中には、香港での投資について心配している人も当然ながらいると思います。

28日付の日本経済新聞朝刊でも香港返20周年が大きく特集されていました。様々な識者が独自の見解をコメントしていますが、皆さん政治的な影響力の強まりについては強く懸念しており、経済面については今後も香港の重要性に変わりはなく、一国二制度をこのまま保証して香港の発展を維持するのが中国の国益にもつながるという意見が大半のようです。

データで見る香港と日本の過去20年

上記の日経記事の中で、「返還20年で香港はこう変わった」と称して1997年と2016年の様々なデータが比較されていました。そこでこの記事では、総務省などのデータを用いて香港と日本の過去20年を比較をしてみたいと思います。(内閣府GDP統計の推移は2015年までしか掲載されていなかったため、2015年のデータですがご了承ください。)

 1997年2016年増減
人口 649万人734万人13%増
域内総生産(GDP) 19兆円35兆円84%増
1人あたりGDP296万円475万円60%増
上場株式の時価総額45兆円347兆円671%増
訪問旅客数1040万人5665万人445%増
海外企業の地域統括本部数903拠点1379拠点53%増

まず日経による香港のデータを見ると、中国経済の急成長と一国二制度の下、香港経済が大きく発展しているのがわかります。GDPは20年間で84%増、1人当たりGDPは60%増、上場株式の時価総額は7倍以上で、金融市場として大きく成長したのがわかります。また、訪問旅客数をみると、20年で5倍以上にもなっています。これは、2003年にそれまで規制されていた中国人の個人旅行が解禁されたことなどが影響しているようです。私が香港に移住した2011年には、大陸の観光客が大挙して押しかけ、繁華街のショッピングモールに入っている高級ブランド店には平日の朝から多くの中国人が入店のための行列を作っていたのが印象的でした。訪問旅行客の増加に伴い小売り業界も売り上げを大きく伸ばしました。また、中国人投資家が香港の土地をこぞって買ったため、不動産価格が急騰し社会問題にもなっています。ここ数年は旅行客は落ちついてきたものの、不動産価格は伸び続け、香港の住宅価格と商業地の地価は世界トップクラスの高値を更新し続けています。

 1997年2015、2016年増減情報元
人口 1億2610万人1億2699万人1%増内閣府のGDP統計(2015年度)
国内総生産(名目GDP) 533兆円532兆円0%減内閣府のGDP統計(2015年度)
1人あたり名目GDP423万円419万円1%減内閣府のGDP統計(2015年度)
上場株式の時価総額281兆円580兆円106%増日本取引所グループ
訪日外客数422万人2404万人470%増日本政府観光局データ
外資系企業動向調査(回答者数)1532社3410社123%増経済産業省データ

一方、日本はどうでしょうか。「香港の返還20年」は、バブル崩壊後の日本の「失われた20年」とかなり重なる部分があります。それを象徴するかのように、経済がほとんど成長していないのがよくわかります。日本はこの20年間GDPが横ばいで成長0%、一人当たりGDPが1%減です。内閣府によると、一人あたりのGDPはOECD(経済協力開発機構)加盟国中、1997年の世界4位から2015年には20位まで後退しています。返還時、日本の70%以下だった香港の一人あたりGDPに抜かれてしまっています。

逆に、日本で伸びているのは訪問外国人数で、1997年にわずか422万人だったのが20年間で5倍以上の2404万人になっています。それでもまだ香港の訪問旅客数5665万人の半分に満たない数です。政府は2020年のオリンピックまでには訪日外国人目標を倍増の4000万人にする目標を掲げていますが、外国人観光客を呼び込むだけでは経済全体の押し上げにはならないでしょう。日本が国際競争力をつけるためには、外国企業の誘致、外国人労働者の受け入れ、日本企業の海外進出、実用的な英語教育などが必要で、そのためには大規模な規制緩和や構造改革がなくてはならないと思いますが、変化に対応するスピードも香港やその他の主要国にくらべてかなり遅れている印象を受けます。

香港のこの先と日本のこの先

こうやっていくつかのデータを見ているだけでも、頭の中の「香港はこの先大丈夫か?」という疑問が「日本はこの先大丈夫か??」という疑問にとって代わられてしまいました・・・。人口減に伴う超高齢化、労働力不足、低い出産率、社会福祉の破たんリスク、巨額の国債と財政赤字などなど、目の前に迫る問題に根本的解決策が見られない中、世界経済における日本の存在感は急速に落ちていっています。海外で資産運用をしている人の中には、香港の政治的リスクよりも、日本の投資環境や財政の方が不安だと考えている人が多いかもしれません。たとえ政治的な自由度が失われてきたとしても、中国の成長スピードが鈍ってきていても、それでもなおGDP実質成長率2~3%を維持し、財政黒字で、ビジネスのしやすさランキングで世界4位*の香港は、投資家にとって相対的にまだまだ魅力的な場所と言えます。(*世界銀行発表。日本は世界34位)

個人的には、自由で多様性にあふれ、おカネを稼ぐのが大好きでエネルギーみなぎる香港が、このままずっと変わらないで欲しいと切に願うばかりです。

関連ブログ:投資をする前に香港についてもっと知ろう(基本編)

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