景気後退期の資産運用 – メンタル・テストとキャッシュ・テスト

景気後退期において投資家がまず考えるべきこと。それはメンタルとキャッシュ。

これから世界中が景気後退に陥る。そのインパクトがどれくらいのもになるのかはまだ誰にも分からないが、ある人は「景気が悪くなったのは単に人為的に経済を止めたせいだから経済をもとに戻せばそれまでせき止められていた需要が一気にあふれだし、経済は通常運転にもどる」と主張しまたある人はそれとは逆に「連鎖倒産で信用不安が起こり、金融機関にもそのダメージが波及しリーマン・ショック以来の金融危機となる」と主張する人もいる。

今のところは中央銀行による政策で金融市場は盛り上がっている。インデックスでいうと3月下旬の底値から損失は半分は取り戻した。もちろんここから下落する可能性も大いにあるわけだが、3月4月のパニックは収まったようにも思える。とはいえこれからコロナの影響で人為的にストップさせた経済の影響が失業率やGDPの下落幅というかたちで数字に置き換えられてくる。「思ったよりもマシだった」のであれば市場はまた上昇基調に戻るかもしれない。その逆に「思ったよりも悪かった」というのであればまた中央銀行はこれ以上金利を下げられないのでマイナス金利を導入したり、ますますリスク資産を買わなければならなくなる。

この流れが続くと、構造的な資金需要不足の問題がなぜか金融政策論争にすり替えられ続けている日本と同じような轍をアメリカも辿りそうな気がしてならないのは私だけではないだろう。

さて、景気後退局面においては弊社クライアントはじめ様々な方から「何に投資をすればいいですか?」とか「資金を引き上げるべきでしょうか」というお問い合わせをいただく。

投資を始めたばかりの方はもちろんベテランの方でも陥る罠。ご自身のおかれた状況とマーケットを切り離して考えてしまうという罠だ。投資先の選定はもちろん大事だが、これまでのご投資経験や今後の人生計画をきちんと反映させた上でマーケットに入っていかないとなかなか資産運用自体がうまくいかない。資産運用においてはマーケットそのもの以上に、投資家個人の状況が大切である。

特に景気後退期には大切になる2つの前提=テストをクリアしてから運用先を検討するというクセを突けておくと、今後の資産運用がずっと楽になるだろう。

メンタル・テスト

マーケットそのもの以上に、投資家個人の状況が大事だと書いた。なぜかというと、資産運用の成果は運用先をするかだけでなく投資家個人がおかれた状況との合成で決まるからだ。そして人間は感情。資産運用においては欲望と恐怖という感情が運用結果を左右する。欲望が恐怖に先行して資産運用を始め、恐怖が欲望を上回って資産運用を終える。これらの順序は逆にならなければいけないが、頭で分かっていてもなかなか行動には移せない。感情は動物的な本能に根ざしており、人間的な理性は司る前頭葉のパワーではなかなか押さえつけられないからだ。

いや、理性で感情を押さえつけよと言っているのではない。生まれながらにそういうことができる方はいるが、私どものクライアントのほとんどは理性と感情の間を行ったり来たりしている。感情が大きく勝ってしまうとき、すなわち景気後退期で資産価格のボラティリティが大きくなって不安に駆られてしまうならそもそもリスクを取りすぎだったと考えてストンとリスクを落としてしまって構わないと思う。

リスクある資産運用を継続することで眠れない、とかメンタルがどうにかなってしまうくらいなら資産運用そのものをやめてしまうほうがいい。もちろん、理性が感情に打ち勝って「今こそ仕込み時だ」と思えるならそれが一番だが、メンタルが安定していないと資産運用の成果も安定しない。健やかに長生きするために少々の追加の余裕資金が必要だから資産運用するのであって、健康を犠牲にしてまで資産運用するのは本末転倒だ。

話は変わるが「借金が複数ある場合はもっとも金利の高いものから返済しなさい」というアドバイスがある。もっともだ。経済合理性を考えるなら、金利の高いものを先に返済したほうが返済額の合計はもっとも少なくて済む。たとえば金利10%で100万円の借金5%で5万円の借金があったとすると先に返済するべきは前者である。合理的に考えるのであれば。

しかし優秀なファイナンシャル・プランナーはこれを「5万円を先に返済しなさい」という。小さな成功体験を先におくことで、次の大きな壁(この場合だと100万円を返済する)という目標を達成する可能性が断然高まるからだそうだ。まず5万円を返済して、「自分には返済できる能力がある」と自信を得てから100万円を返済するほうが結果として途中で断念し新しい借金を抱えず両方とも完済する確率が上がる。

資産運用にもこのことが当てはまる。「理性が感情に勝つ」という成功体験ができるくらいの小さなポジションがから始める。もしご自身の運用内容が芳しくなかったとして理性が感情に勝っていたら、それはすなわちあなたが金融市場という魔物に勝ちつつあることを示している。それは資産運用に成功するであろうサインだ。逆に感情が理性に勝ち恐怖に支配され夜も眠れない日が続くようであれば、仮にそれが最悪のタイミングだとしても持っている保有資産をいったん現金化したほうがいいのかもしれない。

キャッシュ・テスト

メンタルが定性的なものであるのに対し、こちらは定量的なものなので判断は簡単だ。今後2-3年以内に資産運用をやめてまで必要になる資金が出てきそうなら、一段リスクを下げるべきだ。そこにご自身のマーケット観がお有りならアドバイザーと相談しながら売買をしキャッシュが必要になるイベントに備えていくべきだろう。

特に事業をされている方はご自身の業態によっては景気後退期に追加の事業資金が必要になる場合もあるだろう。「必要になるかしれない」という可能性段階でもいいので、早めにファイナンシャル・アドバイザーに伝えておくべきだ。私どものほうでも、「あと2ヶ月後に必要です」と言われるより「あと2年後に必要です」と言われたほうがよりよいアドバイス、資産マネジメントができる。

メンタルテストとキャッシュテストを経てようやく運用先の検討

景気後退期においては、この2つの前提を考えておくことでようやく運用先の検討に入る。

「これからはIT化がますます進みます、ほらApple株だって最高値までもうすぐで戻りそうでしょう? やっぱりIT関連株は持っておいたほうがいいですよ!」というアドバイスは半分参考になり、半分参考にならない。運用先はもちろん大切なのだが、ご自身のおかれた状況が運用成果の半分を決めるのだから。

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