日本の銀行の闇についてテレビ番組をみて思ったこと

2017年12月22日(金)に放送されたNHKクローズアップ現代+の「2017冬 スペシャル ~“あの疑惑”徹底追跡~」で取り上げられた「銀行が高齢者に金融商品“押し売り”!?」という話題。金融都市香港では考えられない日本の銀行の現実に、香港在住のファイナンシャルアドバイザーとして思ったこと。

日本の銀行が高齢者に「押し売り」している現実

先日のNHKクローズアップ現代プラスは衝撃的な内容でした。詳細はこちら。銀行が不必要な金融商品を商品知識のない高齢者に対して押し売りしているケースが多くあるそうです。特に「投資信託の回転売買」として「外貨建て保険商品の一括払い」をさせると銀行への販売手数料(コミッション)が高いため、厳しいノルマに追われている営業担当行員はその道を選んでしまうそうです。また、現在、国民生活センターに寄せられる70歳以上からのクレームが激増中で、2016年度に寄せられた相談の内、43.4%(2012年度は33.4%)は70歳以上からのものだとのこと。高齢者のニーズには合っていない、彼らが容易には理解できない複雑な仕組みの金融商品を押し売りしてはいけないことは銀行も分かっているのに、何故、銀行は70歳以上をターゲットに押し売り、またはお願い営業を行うのでしょうか?日本の監督機関や法律は機能しないのでしょうか。金融業界を健全に保つために厳しい法律による統制に努めている香港で、我々が同じようなことをすれば、多大な罰金を課された上に投獄されるか、そこまで大ごとにされなかったとしても、解雇は確実です。先日もコールドコール(勧誘の電話)をしたとわかった香港人アドバイザーがクビになったという話を聞きました。たとえ罰則がないとしたって、自分のノルマ達成のために、罪のない、喜んで家に招き入れてくれる高齢者をターゲットにするなんて、良心は痛まないのでしょうか。痛む人はもう辞めているのかもしれません。腹立たしい気持ちでいっぱいになりました。このような闇が生まれる理由はどこにあるのでしょうか。番組でも様々な理由があげられていました。

収益減にノルマ…銀行のつらい現状

1:現在の銀行経営はつらい

日銀のマイナス金利政策により日銀内の当座口座ではお金は増えず、従来の法人向けや個人向け金貸し(融資)業務に集中したいが、長引く低金利で収益が伸びない現実。信用度の低い個人向けカードローンで活路を見出したいが、金融庁からのカードローンに関する監視が厳しくなりつつあるため期待は薄く、コミッションとしての実入りの多い金融商品販売で利益をあげる手法を選んでしまう傾向にある。

2:リストラ対策も進まない。

銀行本体の収益も伸びない現在、各行はコスト高の中高年行員のリストラを実施しているが、リストラのスピードが遅く停滞気味。

3:収益確保のための三大通知(押し売り・回転売買・お願い営業)を実施

投資信託の回転売買は売りと買いを同時に行うので手数料が2倍発生するため、簡単でおいしい手法だという。一時払いの外貨建て保険は保険商品の中で一番販売手数料が高くかつ、一括で手数料をもらえるため、メリット大。つまり、1人暮らしで複雑な仕組みの商品を理解できない高齢者に投資信託の回転売買をさせ、その資産の一部を外貨建て保険で一時払いしてもらうことが銀行が手っ取り早く収益をあげる良い手法となるのだという。

4:厳しいノルマのため自爆営業が活発

上司からのノルマが厳しいため、ノルマが達成できない行員は、自ら投資信託や外貨建て保険を購入する自爆営業を行うらしい。そんな行員も少なくないという。

消費者が自己防衛のためにできること

銀行から各部門への厳しいノルマは末端の行員の心的・金銭的負担を増やすのみで、健全な組織にはなりません。自爆営業をして、その場をしのぐより、個々のクライアントの満足度を高めて、その先にある新たなビジネスを増やすことに努力すべきだという基本的な営業姿勢に目を向けられない現状があるのでしょう。 銀行組織からの圧力により、そうせざるを得ない営業担当行員の立場も、そうさせなければ収益をあげられない銀行の置かれている状況も理解しました。そこには同情の余地もあるでしょう。それでも、そんな売り方をして良い理由なんてどこにもありません。名の知れた銀行のやり方を止める術は消費者にはありませえん。既に被害にあった人のように裁判でしょうか?そうなる前にできることはないのでしょうか。今はまだ、消費者や投資家が金融機関にとっての良いカモにならないように自らが努めるしか方法はないように思えます。注意喚起したところで高齢者が実行できるかは疑問ですが、一応、その方法を思いつくままにあげてみようと思います。

その1 理解できない複雑な金融商品への契約はしない

担当者のおすすめ商品=売りたい商品と心得る。担当者の置かれている状況に同情しても、理解していない商品への契約は絶対にしてはいけない。

その2 株や投資信託は利益ができるまで保有する

確かに損切が必要な時もあるが、今が本当にその時なのか。営業担当者の話を鵜呑みにしない。ひとつの商品を解約して、新しい商品への契約を勧める意図を改めて尋ねてみる。その意図を理解し、納得した場合のみ、次の行動に移ればよい。

その3 自分の資産状況とニーズを把握する

新しい契約をする前には、必ず、それが自分の人生を豊かにしてくれる、自分の資産形成や今の状況にとってプラスとなる商品なのか?本当に今の自分に必要か?など、自ら判断する。

これらの心得は当たり前のようで、実行するのは難しいことです。加えて、自ら正しい判断ができる人のみに有効です。高齢者に限らず、誰にとっても難しいと思われます。商品は複雑で、説明者は理解しづらい金融用語を用いてかかってくるのだから、理解するの自体難しいこともよくあります。ですので、自分だけが、自分のせいで理解できないように思えてきます。故にわかったフリをしてしまうこともあるでしょう。また、高齢の父母にお留守番をお願いしているご家庭の人々は、気が気ではないでしょう。自分たちが出かけている間の出来事であるでしょうし、理解できていないことほど、説明することは困難であるわけですから、今日あった出来事をどこから話せばいいのだろうかと考えるうちに、面倒になり、それを避けたくなる心理が働くのはなんの不思議もないことです。子ができる手立てと言ったら、クーリングオフ適用期間内に親の変化に気づくように目を光らせるくらいしかありません。

お金について勉強して、面倒な客になろう

なぜ日本では、香港の監督機関のように、常に金融関連の営業活動に携わる全ての者への監視を怠らず、厳しく統制をしないのでしょうか。販売担当者の良心にかけるしかない今のような状況下では、消費者や投資家は保護されていないのもいっしょです。無理な営業や販売活動を直接行っている担当者よりも、それを黙認または推奨している組織が一番問題だと思いますが、敵は歯向かうには大きすぎ、戦うには強すぎます。投資家が保護される環境の中で、安心して資産運用ができるのが理想ですが、それを実現するのは容易ではないでしょう。今、自己防衛としてできることは、信頼できる第三者に相談するか、知識武装して立ち向かうしかないように思えます。お金儲けに興味がないふりをするのはもうやめて、まずはお金に関わるさまざまなことにこだわってみてはどうでしょうか。納得するまでしつこく質問をする面倒な客になることが、今は一番有効な手だと思います。相手にとって面倒な客になりましょう。それで納得するならば、それはそれでお互いにとって良いのだから。

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