香港の保険と日本の保険の違い

世界中の保険会社が凌ぎを削る香港の保険が選ばれるのは一目瞭然。日本の保険のように節税目的ではない、柔軟な設計と安い保険料が魅力。

1. 世界中の保険会社が凌ぎを削っている香港、そうでない日本

香港の保険監督当局である、Insurance Authority(以下、IA)によると、香港には認可保険会社が合計162社(うち49社が生命保険会社、94社が損害保険会社、残りの19社が生損保両方のビジネスを営む保険会社)あります(2019年3月31日時点)。保険会社がきちんと登録されているかはIAのサイトで確認できます。

ちなみに、日本の場合、生命保険会社41社、損害保険会社54社(金融庁公表、2019年7月1日時点)ですから、香港という狭い地域にいかに保険会社が集中しているかが想像できます。香港の人口はせいぜい700万人程度ですから、国内ビジネス以上に、グローバルなビジネスに積極的な会社が集まっていることも想像に難くないでしょう。

世界の富裕層が香港に保険商品を買いに来るのを私たちは毎日みていますが、残念ながら世界の富裕層が日本に保険商品を買いに行くというのは聞いたことがありません。

2. 商品設計が柔軟な香港、お上が決めてしまう日本

損害保険の場合、損失事由が確定した時点でその金額が決まりますから、色んな損害保険に入ったところで、損失額以上にお金が返ってくることは基本的にありません。一方、生命保険の場合、その人の命がいくらだったかと問うこと自体がナンセンスです。したがって、複数の生命保険に入って、複数の会社から保険金を受け取ることを期待している方も多いのではないでしょうか。

気をつけたいのは、日本の生命保険に関しては、加入者が亡くなった際に受取人が得られる死亡保障は3億円程度が上限です。それ以上の死亡保障は日本政府が「社会通念上ふさわしくない」として生命保険会社に引き受けないようにしているのです。

香港でサービスを展開する海外の保険会社についてはこの上限がグッと引き上がって死亡保障額100億円を設定することができるところもあります。保障額がさらにあがる場合、保険会社同士がリスク分散のためにコンソーシアムを組む場合もあります。もちろん保障額が増えれば、保険料も増えるので、結局は必要と思う金額を設定することにはなりますが、シミュレーションをしてみると、死亡保障額対比での総保険料支払額は香港の方が少なく、場合によっては半分から3分の1になりますから、富裕層の方が利用されるのは納得できます。よく相続対策で生命保険が使われますが、生命保険で相続税を全額支払ってもなお遺産を丸まる相続させることが可能になるわけです。

結局のところ、その人にいくら死亡保障が必要かなんて、お上が決めることではないのです。ビジネスとして成立する余地があるなら認めてしまおう、というのが香港のやり方です。

死亡保障額100億円の保険契約に対し、プレミアムファイナンスを利用するケースは過去にも紹介していますので見てみてください。

ブログ:プライベートバンカーがおススメする”プレミアム・ファイナンス”のウラ・オモテ

3. 同じ死亡保障で日本の保険料の半分から1/3になる香港

その理由には、先述した保険業界の競争度というのがあります。やはりたくさんの会社が競って顧客獲得をすれば、自然と顧客にとってはメリットのある契約内容が増える、と弊社社長のArnold Yeungも言っております。実際、弊社内でも20社以上の保険が取り扱えるので、比べるだけでも一苦労です。

もう一つは、保険契約そのもののフレキシブルさにあります。日本であれば、死亡保障額が完全に未定のものは保険として扱われないため、例え変額保険であっても、一定の死亡保障額があるはずです。保険会社としては保障額にコミットをするために費用をかけますので、このコミットを免除してあげるだけで保険会社側の運営はとても楽になります。また、毎月の保険料を変動させるような保険もあり、こうしたフレキシブルなものをユニバーサル生命保険といいます。本来、年齢等に合わせて、死亡確率は変動するわけですから、保険料も変動して当たり前というのがベースです。でも、保険料は一定の方がいいという顧客に合わせて、保険会社が固定の保険料をコミットすることでこれまた費用をかけています。保険会社も固定の保険料を欲する一部顧客ニーズに合わせて売れる商品を作っているわけです。でも、そうした努力はすべての顧客に安い保険料という形で返ってくるわけではありません。

日本で貯蓄目的で外貨建て保険を継続されていた方が、同じ月々の保険料を目安に香港で保険に入り直した場合、保険料は半分で済み(つまり、いつまでも払い続けなくていい!)、かつ死亡保障は2倍になることだってあるのです。保険契約は途中でやめないことが一番大事なことではあるのですが、これくらい違いが出ることを知るとお悩みになることも多いようです。

4. 節税メインの日本、資産メインの香港

保険料以外で日本人の方が気にするとしたら、税負担が軽くなるかどうかでしょうか。もちろん節税効果はあった方がいいのですが、それが「保険を購入した方がいいかどうか」という意思決定に影響するのは個人的にはあまり好きではありません。それに節税保険とは言いながら現実的には「法人税支払い先延ばし保険」です。とはいえ「節税保険」があれだけ騒がれたのですから、税効果を意識していた人は少なくないでしょう。

しかし香港の場合、商品自体に魅力があります。現在、利回りは3%後半のものが主力です。商品に魅力がない日本ではそれをカバーするために節税効果をつけないと競争力がありませんが香港では一部の損金性ある保険商品以外、経費算入が認められていません。支払った保険料が、将来資産として2倍3倍に増えていくので経費算入できるわけがないのです。

香港の保険で保険料や保障額のシミュレーションを一度も行ったことがない人は是非気軽にお問い合わせください。

日本での税務上の扱い

海外保険の場合、保険業法第186条において、「日本に支店等を設けない外国保険業者に対して、日本に住所若しくは居所を有する人 − 中略 – に係る保険契約の申込みをしようとする者は、当該申込みを行う時までに、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の許可を受けなければならない」と定められていますから、海外保険に加入されている方は当然多数派ではありません。日本の保険でもそうですが、どのような税法上の取り扱いを受けるかはケースバイケースになりますので、海外保険の場合は入り口の相談(保険料をいくらにするか、誰を受取人にするか)と同時に出口の相談(日本で相続が発生すると仮定した場合に、税金はどうなるか)を、予めアドバイザーと確認することが必要でしょう。

海外保険が多数派ではないと言っても、海外駐在員時代、あるいはもともと海外在住だった方は必要だと思って保険を購入されるケースも多いので、保険金を受け取るタイミングは日本というケースも少なくありません。ますますグローバル化する時代ですから、必要であれば弊社からこの分野に強い税理士をご紹介いたします。

香港保険監督制度の簡素化が間もなく始まります

興味がある人は少ないかもしれませんが、会社サイドでの動きの話を少しだけ。

香港の保険監督当局はIAだと既に触れましたが、香港には以下の3つの自主規制組織(Self-Regulatory Organization、SRO)が存在しており、特に保険仲介会社については、いずれかからライセンスを得て仲介を行うことになっています。弊社の場合はPIBAからライセンスを付与されています。

1 The Hong Kong Federation of Insurers(HKFI)

2 The Hong Kong Confederation of Insurance Brokers(CIB)

3 The Professional Insurance Brokers Association(PIBA)

これが、2019年9月23日からはIAが直接監督する体制に変わります。概要はIAのサイトにて確認できます。移行期間が用意されていますが、手続き面などでも変更があることが予想されます。お客様に直接ご迷惑をかけるようなことはないと思っていますが、弊社としては、状況をしっかり把握して対応して参ります。

この移行により、香港はより専門的でかつ透明性のある保険業界となること、またシステムインフラ面の向上が期待されます。

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