年に一度の資産運用の棚卸し – サボリッチのための現状把握・ゴール再設定・事務処理・税務

資産運用を始めたのち、それにまつわる一切を放置する方がいる。そんな方にやっていただきたい一年一度の資産運用の棚卸しとは

資産運用の棚卸しとは、現状把握・ゴール再設定・事務処理・税務確認の4つ。1年に1度少しの時間を割いてこの資産運用の棚卸しをしておけば、資産運用がより実りのあるものになるというお話をしたい。

サボリッチとは

資産でいうと数千万円から数億円くらいで、ご自身は自分のことを特別お金持ちだとも思っていない。なんとなく数字に苦手意識があるため経済金融ときくと拒否反応。銀行口座の残高くらいは理解しているが、証券会社やIFAが管理している資産の数字に意識が向かない。相続でリッチになったのでではなくご自身の実力で作った資産であるため「管理する」「守る」という意識が希薄

思い切って資産運用を始めたが最初の数ヶ月は運用報告を確認していたもののその後興味がなくなって放置してある…

このような、リッチだけど資産運用の現状に関心がない投資家はあなただけではない。弊社のリサーチによると弊社のウェブサイトのクライアントポータルに過去1年間一度もログインしたことがない方は34%もいらっしゃる。これはすなわち、弊社での運用状況を1年以上ご覧になってない方が34%いるということになる。更にその中の一部は運用が始まってから一度も確認したことがないという筋金入りもおそらくいらっしゃるはずだ

運用報告書自体は数字に苦手意識のある方にとってはつまらないものだ。なぜなら数字が羅列してあるだけだから。平時の金融市場は微増と微減を行ったりきたりするだけなので大きな興奮も落胆もない。なのでこれをつまらなく思ってしまってしまうのも無理はない。運用報告が封書で届いても封すら開けずにゴミ箱直行、「紙を無駄にするなんて資源の無駄遣いだなぁ」なんて独り言を言う。

モニターに張り付いて秒単位で株取引をするわけでもない大多数の投資家にとっては資産運用は始めるまでがドキドキ・ワクワクなジェットコースターで、その後は公園の散歩道を非常にゆっくり歩くようなつまらなさなのだ。

もちろんこの散歩道を楽しく歩いていかれる方も少なからずいらっしゃる。ご自身で経済や金融市場のことを継続的に学習されていく方は単なる数字の羅列が躍動感をともなって見えてくるので楽しい。

ここでは、そんな真面目な投資家ではなく資産運用をほったらかしにしちゃっている方のための「資産運用の棚卸し」についてシェアしておきたい。どれくらいを「ほったらかし」と判断するか、だが

過去1年以上IFAや証券会社からのメールや運用報告を読んだことがない。また担当者と最後に話したのがいつなのか分からない。したがって今どの資産がどういう状況になっているのか分からない。

このような投資家の方だ。

命の次に大事なおカネに関わることを1年以上も放ったらかしにするなんてあり得るのか!? と思う方もいるかもしれないが、むしろあなたのような真面目な方は少数派だ。

そして運用額が多いか少ないかはほとんど関係ない。むしろ体感的には比較的リッチな方が資産運用を放置する傾向があるように思う。そういった方々はおそらく当面の生活には困らないので精神的な余裕があるからこそ、またご自身で稼げる能力が長けているからこそ資産運用の状況に注意が向かないもしれない。そういったサボりがちなリッチを勝手に「サボリッチ」と勝手に命名する。

私どもIFAとしてはクライアントの資産運用が資産運用のゴールまでつつがなくお手伝いするのが仕事。とはいえそれには投資家の協力も必要だ。あまりにサボってしまわれると下記のようにご自身だけでなくご家族にとっても困ることが出てくる。

とはいえ真性サボリッチな方々はこのブログも読んでいただけないだろうけれど… いつの日か読んでいただけることを念頭に書いておきます。

そもそも何のために資産運用の棚卸しをやるのか

サボリッチな方々がある日いきなり直面する問題がある。

たとえばどの金融機関にどんな資産があるのかを把握していないためにぼんやりとしか全財産を把握しておらず、急な資金需要の際にうろたえてしまうことがある。

また相続の際に財産目録がないために相続人に迷惑をかけたり、あるいは生命保険においては受益者指定をきちんとしておかないために相続でモメたりする。

資産運用はご自身そして家族がよりよい人生を送るためにあるはずなのに、サボり続けたことで資産運用していることがかえって重荷ることもある。これを避けるための棚卸しをやるわけだ。

とはいえ棚卸しといってもそんな大した話ではない。一年に一度、1-2時間のことだ。どんな忙しい方でも1年で1-2時間が取れない方はいないだろう。

1. 現状把握

収集

まずは現状把握から。銀行や証券会社、保険会社からの明細を数カ月分取っておく。最近では紙ベースのものはなく電子明細もあるから必要に応じてダウンロードする。資産が有価証券だけでなく投資用不動産もあれば、管理会社からの賃貸料報告を取っておく。同じ種類の明細が溜まってくれば、収集はそこで打ち切ってよい。あるクライアントは「資産運用」と書いた封筒入れを玄関に作っておき金融資産に関するレターをすべてそこに集約していた。収集することでまずは金融資産に意識を向ける。

保有口座、保有銘柄をリスト化

金融機関に預けてある資産がまとまってきたら、口座別に並べて保有銘柄をリスト化する。エクセルやワードなどで銀行、証券会社、IFAと金融機関別に保有銘柄をリストアップしておく。口座によっては保有銘柄が何十にもなることがある。それをすべて転写するのは面倒だという場合は保有銘柄一覧のコピーやスキャンを貼り付けることで代用する。

ここで保有銘柄名と時価総額の2つを記録しておく。たとえばA銀行、B投信、100万円、などだ。意識を金融資産に向けるのが目的なのでざっくり把握で構わない。神経質にやりすぎて途中で投げ出してしまっては意味がないのでまずは「これで資産は全部だろう」と思える程度にリスト化する。

今資産がいくらあるかが分かったら、現状把握は終わりである。

2. ゴール再設定

さて情報を収集し、リスト化していく過程で「あんな銘柄なんて持ってたんだ」「意外と増えてる(減ってる)な」という気付きがでてくる。そこで銘柄を一つ一つ見ていただいて「なぜこの銘柄を保有しているのか」を思い出していただきたい。株式なら値上がりを期待して買ったまま塩漬けになっているのか、債券なら魅力的なクーポンを期待してのことなのか。

あるいはそういった数字目的ではなく銀行との付き合いで仕方なく持っている投信だとか優待目当てで保有している株式だとか、何らかの保有目的があるはずである。

保有銘柄の目的がわかれば、次はその保有銘柄をどうしたいのかのゴールを改めて考える。

  • 現金保有割合を増やすべきか減らすべきか
  • リスクの高いものをリスクの低いものに買い換えるべきか
  • 保有債券や生命保険の満期はいつか

などを考えながら、「この銘柄は引き続き保有しておこう」あるいは「この銘柄については保有目的がよく分からないから改めてIFAに聞いてみよう」「事業でまとまった資金が必要になるから、管理不可能なものは売却しよう」という前向きな姿勢を引き出せたらそれでよい。サボリッチな方たちはこのプロセスが苦手なので、必要に応じてファイナンシャル・プランナーやIFAの手を借りる。

ただ、可能な限りプロフェッショナルには相談せず一人で、あるいは家計を同じくする配偶者とともにやってみる。なぜなら資産運用の成否は結局のところ金融市場がどう動くかは重要ではなくて投資家の価値観に合致した運用が長期にわたり継続できるか、にかかっているからだ。自分がどれだけリスクを取るのを許容できるか、できないかというのは究極のところ本人にしか分からない。ファイナンシャル・プランナーやIFAはプランの設計のお手伝いはできるが、投資家の価値観がこもらないお仕着せのプランでは投資家は幸せになることはない。

自分の運用イメージを持っておく

金融資産の保有当初は何かしらの運用イメージがあったはずだ。ゆっくり着実に増えるものなのか、激しい騰落を期待するものなのか。しかしサボリッチな投資家は運用を始めたときの記憶も曖昧になっており、どういったゴールを目指してその金融商品を購入したのかがわからない。当時のパンフレットやメモ書きなどが残っていればいいが、その一切をとうの昔に捨ててしまっているため記憶の引き出しがない。

単に「余剰資金を運用にまわす」というだけでも、運用先がハイリスクなものなのかローリスクなものなのかによって数カ月後数年後その資産運用がどうなっていてほしいかは変わってくる。たとえば投資適格債券の価格が来年2倍になることは想像しづらいし、新興企業の株式が安定的に3%の配当を出すことも考えづらい。そういった銘柄に対する自分のイメージみたいなのを固めておくと良い。すべての銘柄について詳細なレポートを期待することはできないが(おカネを払えばやってもらえるのかもしれないが)、簡易なコメントくらいは引き出せるはずだ。

保有銘柄に対して運用イメージがわかなければIFAやファイナンシャル・プランナーに相談に乗ってもらう。金融資産一覧を彼らに見せてみて、簡単にどういった資産が特にリスクがあるのか(あるいはないのか)、値上がりが期待できるものなのか安定的な収益を期待するものなのかを簡易に判断してもらおう。

総論として「自分はどういった資産運用のあり方を望むのか」があって、各論として保有銘柄を吟味しゴールを再構築していく。骨が折れる作業のように思われるかもしれないが、一度やってしまうとそう短期間にブレるものではない。

3. 事務処理

次に事務処理。サボリッチな方がもっともサボってしまいがちな分野である。

住所など個人情報が届け出のものと一致しているか

結婚して姓が変わった、引っ越しした、携帯電話の番号を変更した、など。連絡がつかない、大事な書類が届かないなどといったことがないようにしておくために届け出の個人情報が一致しているか確認する。

生命保険の受益者は自分の現在意思と一致しているか

たとえば父親が長男一人に会社の株式すべて相続させるかわりに、他の子供らには現金を相続させるということがよくある。しかし生命保険を契約した当初はその予定だったがやはり長男でなく次男に変更したい、といったような変更が受益者指定にきちんと反映されているかどうかを確認していただきたい。

特に厄介なのが愛人を生命保険の受益者にしている場合。香港では日本と違って受益者に関するルールは緩いため、愛人を保険金の受益者に指定することができる。保険金は保険会社から愛人の口座に直接振り込まれるため、本妻に知られることなくおカネが愛人に残せるのだが、その愛人と別れたのに受益者だけ愛人のままになっているケースもある。

相続人に対する配慮

たとえば50代、働き盛りの方にとってはご自身が死ぬということなんて微塵も考えていないに違いないだろうけれど、突然死はあり得ないことではない。財産目録くらいはあったほうが相続人に対して優しいだろう。特に外国に資産がある方は相続人は一体誰を頼って連絡をすればいいのか分からないから、担当者の名前(たとえばAMGオグラ)と連絡先をどこかにメモしておいて、相続人と共有するようにしたい。配偶者には見られたくないから財産目録はシェアしないという方もいらっしゃるだろうから、顧問税理士や信頼できる第三者に預けておくといい。

4. 税務

キャピタルゲイン税、雑所得、一時所得など税金

香港はキャピタルゲイン課税はないが、香港外に在住している投資家、たとえば日本居住者が香港で投資をしていたとしても日本国内と同じ課税基準が適用される。税金が繰り延べられるているだけなのか、本当は申告する必要があったものなのかは金融商品によって変わってくるので確認する必要がある。

信託財産にまつわる税法の改正はあるか

こちらは信託を保有している方のみ対象になるが、信託財産はタックスヘイブン対策税制やOECDのCRS(共通報告基準)も絡み、国際税務の専門家の助けが必要になるときもある。通常は大きな変更があれば信託側からの通知があるのだが、サボリッチな方々は自宅に届く書類を片っ端からゴミ箱に入れているので気付かない。ふだんからこういった情報に敏感でない方ほど棚卸しのタイミングで信託会社やIFAに聞いておく。

一年に一度で大丈夫

サボリッチにとっては資産運用の道のりは別に楽しくもなんともないだろう。だからこそ今までほったらかししてきたのだ。

しかしこの1年に1度の作業があるからこそ資産運用の本来の目的、自分も家族もハッピーにするという目的が達成できる。盆暮れ正月のような比較的ゆっくりと時間が取れるタイミングでこの「資産運用の棚卸し」を年に一度の行事としていただきたい。

QRコード https://amgwm.jp/2Td0XIK

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