債券市場概観 – 2018年6月

債券市場のアップデートはじめました。値動きのトップ/ワーストな銘柄を紹介しましす。

債券市場の情報発信を開始

さて、債券市場は株式と市場違って情報が入りにくいので今月から定期的に情報発信することにしました。債券投資のカンどころについては弊社のアドバイザーに聞いていただくとして、ここではどのような債券があるのかの情報だけに絞って発信して参ります。

資産運用に万人に共通する正解はありませんので、魅力的な投資対象に見ても飛びつくことなくアドバイザーに相談しながら慎重に投資判断を行ってください。これまで債券投資のご経験がない方はまず、格付、イールドと債券価格の関係、特約など基本的なことを学習することをおすすめします。特にご投資経験が少ない方ほど高いイールドの高いものに飛びつく傾向があるように感じます。資産運用のための資金をコア(退職/住宅/教育のための資金)とサテライト(それ以外)に分け、コア資産は利回りが低くとも鉄壁の守りで固めた後、余裕のあるサテライト資産で徐々にリスクをあげるようにしてください。

クローズド・アカウント内債券限定

弊社では運用ニーズにあわせて複数の運用口座の取扱がございます。現物債券(国債/社債)を購入できるのは、オープン・アカウント(購入できる金融資産の種類に制約がほとんどない運用口座)とクローズド・アカウント(購入できる金融資産の種類に制約がある)の2つがございますが、この債券市場アップデートではクローズド・アカウントにて購入可能な現物債券群に的を絞っています。理由は以下のとおりです。

1. 債券市場の動向をおおまかに知るためには取引可能なすべての債券を対象とする必要はない

2. クローズド・アカウントの債券を組み合わせれば、一般的な運用ニーズはほとんどまかなえる

下で取り上げる債券リスト以外のものでもオープン・アカウントを通じて弊社からお取引することは可能ですので、もしお取引を希望する債券がございましたらお問い合わせ下さい。なお、オープン・アカウント、クローズド・アカウント両口座とも十分な分散効果を得るためにはUSD1,000,000からの運用が目安です。

債券市場一言コメント

連銀の利上げペースがより速まるかもしれないとの観測、米中貿易戦争の影響から株式市場と同じく債券市場も軟調でした。個別債券でいうと、弊社にも引き合いの多いソフトバンクのハイブリッド永久債6.875%(ISIN: XS1642686676)は今年に入ってから15%近く値を下げました。これが株式だと肝を冷やす場面ですが弊社の債券投資方はあまり気にしていない様子です。債券投資家は息の長い方が多いことの表れですね

銀行系のココ債(偶発転換社債)も相変わらず人気です。たとえばHSBC銀行のココ債6.375%(ISIN: US404280AT69)などはそのブランドネーム、分厚い資本も相まって投資家の方は安心して買っているようです。一方、これから債券投資を始めようとする方は債券市場が全体的に軟調なだけにタイミングをみてらっしゃる投資家の方は値ごろな債券を探してらっしゃいます。イベント物でいうと中国の航空会社海航集団(NHA Group)の再建に中国政府が手を貸すのかどうなのか、というところで債券価格がいったりきたりしてます。2021年10月満期6.250%(ISIN: XS1499773098)の債券がイールド12%近くまできてますね。満期は3年先ですから、もし海航集団が倒産せずにいれば計算上は満期までに35%の利回りが得られることになります。先日海航集団の社長がフランスで自撮りしようとしてバランスを崩し崖から落ちて死んでしまいました。まずはご冥福をお祈りします。

運用額が十分にあり、分散効果が得られる方は海航集団のような期の短いものを好まれる気がします。イールドカーブがフラット化してきている昨今ですから、満期まで長いものはよほどのディスカウントがないと投資家には見向きされないのかもしれません。

クローズド・アカウントで購入可能な債券本数

現在

567

本がクローズド・アカウントにて購入可能です。購入可能な債券リストはこちら(Google Spredsheetに飛びます)。リストにない債券はオープン・アカウントでお取引することが可能です。

ランキング

1. 値動きトップ

2. 値動きワースト

3. ハイイールド

の3つのカテゴリーでのランキングです。ランキングの母体は上述のリストからです。同じ会社で複数債券を発行している場合は、その中でもっとも良い(悪い)ものを1つだけ選んでいます。数字は6月30日時点のものです。値動きの計測期間は過去1ヶ月です。オファープライスはお取引価格(債券価格と未確定クーポンを足したもの)、格付けはS&Pのものを使っています。

値動きトップ3本

この1ヶ月で債券価格が上昇したもの上位3本です。

上昇幅+17%, NOBLSP 8.750% 09Mar2022 Corp (USD)

香港の資源・農作物商社です。騰落が激しいですね。

オファープライスUSD104,303
格付けD
満期までのイールド(実質利回り)32 %
表面利回り8.75%
償還期限2022年3月09日

上昇幅+5.3%, FANHAI 7.750% 27Jul2020 Corp (USD)

中国の不動産デベロッパー・代理店です。発行体はBVI籍です。

オファープライスUSD180,093
格付けCCC-
満期までのイールド(実質利回り)16%
表面利回り7.75%
償還期限2020年6月27日

上昇幅+4.8%, YZCOAL 5.730% 16May2022 Corp (USD)

中国の石炭会社です。

オファープライスUSD202,379
格付けBB
満期までのイールド(実質利回り)5.6%
表面利回り5.73%
償還期限2022年5月16日

値動きワースト3本

この1ヶ月で債券価格が下落したもの上位3本です。

下落幅-25%, CHIHUI 6.500% 16Aug2020 Corp (USD)

中国の飲料会社です。4月から急落していますね。

オファープライスUSD124,453.67
格付けCCC+(Fitch)
満期までのイールド(実質利回り)37%
表面利回り6.5%
償還期限2020年8月16日

下落幅-12%, CSCHCN 7.250% 20Nov2022 Corp (USD)

中国の工業材料品のロジスティクスの会社です。中国は不動産がしばらく弱い時期が続いていましたが、今は不動産セクターは相対的に持ち直していますね。

オファープライスUSD139,301
格付けB-
満期までのイールド(実質利回り)18%
表面利回り7.25%
償還期限2022年11月20日

下落幅-9%, LPKRIJ 6.750% 31Oct2026 Corp (USD)

親会社がLippo Karawaciという、香港のアドミラルティにあるコアラをビルに貼り付けたような外観のリッポセンターを建てた不動産デベロッパーです。

オファープライスUSD145,648
格付けB-
満期までのイールド(実質利回り)12.3%
表面利回り6.75%
償還期限2026年10月31日

ハイイールド上位3本

ハイイールド(High Yield)とは、もともとクーポンが高かったり債券価格が大きく下がって満期を迎えたときにより大きなリターンを手にすることができる債券のことです。「高イールド債券ファンド」みたいな名前でファンドとしてよく売られていますね。下記のものはもちろんファンドではなく現物債券です。Bid/Askの乖離が大きいのでほとんど流動性がなく、投機に近いものとなっています。

770%, AUSGSP 8.450% 20Oct2018 Corp(SGD)

オーストラリアのマイニングなどエネルギー会社のAus Groupは数年前から財務的に厳しい状況におかれているようです。

オファープライスSGD140,645
格付けなし
満期までのイールド(実質利回り)770%
表面利回り8.45%
償還期限2018年10月20日

367%, HSINCG 8.500% 22Jan2019 Corp(USD)

値動きワーストトップの中国の飲料会社です。

オファープライスUSD52,154
格付けなし
満期までのイールド(実質利回り)367%
表面利回り8.5%
償還期限2019年1月22日

71%, NOBLSP 6.750% 29Jan2020 Corp (USD)

値動き上昇幅トップ3の3番目に出てきた香港の資源・農作物商社です。

オファープライスUSD52,103
格付けD
満期までのイールド(実質利回り)71%
表面利回り6.75%
償還期限2020年1月29日

お問い合わせ

これら現物債券の購入アドバイスや手数料についてのご相談はこちらからどうぞ。

関連ブログ:日本の投資家がわざわざ香港に来て買う債券3選

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