債券市場概観 – 2019年3月

先月の債券市場をざっくり概観。中国のジャンク債市場が復活。

まさかの年内利上げ停止

昨年暮れから市場が荒れたせいなのか、はたまたトランプ大統領から怒られてビビってしまったのか連銀のパウエル議長が「今年は利上げをやめる」と言い出しました。トランプに限らず時の為政者は低金利を求めますが、これほどまでに露骨に連銀議長に要求したのは初めてのケースではないでしょうか。そしてここまで分かりやすいタイミングで、すなわち大統領に押し切られたように見えるタイミングで「利上をやめる」と言い出した議長も初めてなのではないかと思います。

インフレが思うように伸びないことや中国の景気が鈍化しておりアメリカも無傷でいられないことなど連銀が利上げを少なくする要因は昨年から見られました。しかし、「今年はもうやめる」と言わなくても別に良かったのではないか… 連銀は政治から独立している、というのが一応の建前ですから、それを貫徹するためにも利上げのタイミングごとに「利上げをしない、利上げができない理由」をその時々での経済状況から語れば良かったのではないかとも思います。

いわゆる「金融政策の正常化」は経済政策に携わる方たちだけでなく私たち資産運用業界にとっても悲願であります。金融政策が正常化できなければ、次の不景気にどのように備えるのかが分かりにくくなります。日本のように、リーマンショックを「蜂が刺した程度」と言い放った与謝野さんの言葉とはうらはらに、日本が被った経済被害は欧米と比較しても甚大でリーマン・ショック前からゼロ金利政策をとっていた日本にとっては防御手段がほとんどない状況となっていました。

Japanification

それと同じことがアメリカヨーロッパで起こるとすると(そしてその蓋然性は高まってきているのですが)、世界経済はかつての同じく「失われたン十年」となるかもしれません。低金利政策は住宅や自動車など金利センシティブな業界にとっては福音ですが、適切な金利を設定しないと本来なら清算するような企業が生き延び、資本の再分配が適切に行われず、次の成長産業にマネーが振り向かないということにもなりかねません。世界が日本化する。これをJapanificationというそうです。

資産運用業界は2016年くらいまで「とにかく低金利、とにかく量的緩和」という態度でおりましたがここ最近は潮目が変化してきているように感じます。私たちの仕事はクライアントにより少ないリスクでより高いリターンを上げることですが、それが低金利や量的緩和のせいでだんだんと難しくなっているように感じていたからです。

この10年の株高は、低金利と量的緩和からの自社株買いが大きなドライバーでした。株価は2012年から2017年まで50%以上上昇していますが、同時期に米国企業の利益はほとんど横ばいです。これはすなわち、株価収益率(PER)がただただ上昇していることを意味します。すなわち人々は「株価はまだあがる」と思って投機していることになりまして、地に足の着いた株価の成長とはいいがたい側面です。

中国のジャンク債市場が復活

株価だけではなくてこれは債券価格にも現れています。中国の格付けの低いジャンク債についてはこのブログでも何度も取り上げておりますが、昨年の利上げ局面で死に絶えそうになっていた中国のジャンク債市場が再び息を吹き返しているのです。たしかに中国政府による33兆円の景気浮揚策が発表されたのもあります。リーマン・ショックのときが景気浮揚策が60兆円程度でしたから、かなり思い切った政策でしょう。しかし全債務の5分の1が今年満期を迎えると言われていた中国にとって、連銀の利上げ停止はまさに神風が吹いたという感じかもしれません。

なので、「ゼロになるかも」とヒヤヒヤしながら抱えた債券はかなりの確率で急上昇しているはずです。ただ、今から二匹目のどじょうを狙いにいくにはちょっと筋違いかもしれません。資産運用を始めるにあたって最もよいタイミングというのは、誰もが資産運用を始めないであろうタイミングです。ご自身で判断ができない場合は、私どもにお任せくださいね。

債券ランキング中止

価格の変化やイールドの高さなどでランキングをしておりましたが、債券ランキングを書きますと投機的な債券で人生一発逆転を狙おうとされる方のお問い合わせを頂くことが増えまして… 投資はギャンブルではありませんからね。虎の子のおカネはキワモノ債券で運用してはいけません。

そんなこんなで「ポートフォリオの中心は安定線で固める」という私どものアドバイス・ポリシーから逸脱するよねと他のアドバイザーからの意見もありしばらく債券ランキングは見合わせます。何卒ご容赦ください。

ただし、情報の透明化は私どもの使命ですから何らかの形で債券市場のダイナミックな変化を感じていただけるような仕組みは引き続き考えていきたいと思っております。引き続き、債券リストはこちらにアップしていきます。

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