債券市場概観 – 2019年9月
先月の債券市場をざっくり概観。日米欧の中銀会合を経て、緩和競争の結果は如何。反発した債券利回りを見つつ、10〜11月でポートフォリオを見直すのが良さそう。
そろそろポートフォリオ見直しの節目になりそう。アドバイザーの宮脇健が、今回は定例の債券市場概観をお届けします。
先月の緩和競争レースの結果を振り返る
前回の記事で、各国中央銀行の政策決定に関してのざっくりとした予想をしましたが、その結果を振り返ってみたいと思います。
欧州中央銀行(ECB)
予想通り、緩和策のパッケージが発表されました。1)預金金利のマイナス深掘り▲0.40%→▲0.50%、2)資産購入再開、3)資金供給オペの条件緩和、です。一番印象に残ったのは、各国の銀行を平等に扱うことが難しい、金利階層化を導入したことでした。政策の細かな内容は複雑なのでここでは説明を省きますが、正直、こういった緩和パッケージを一気に入れられるのはECB内でのドラギ総裁の存在感のなせる技だと私自身は思いました。経済状況の異なる国々を一律の金融政策で縛るというのはもともと無理がありますから、ECB会合においても全会一致というのは非常に難しいのです。会合後の市場の反応は「ドラギ総裁は全てをやりきった」という印象でしたので、結果としてユーロも、欧州金利も上昇という形で幕を引きました。押し切って決めたことに賛否両論はあるかもしれませんが、ラガルド次期総裁へのバトンパスとしては悪くなかったのではと思います。
米連邦準備銀行(FRB)
こちらも概ね予想どおり、▲0.25%のわずかな利下げに止まりました。今後の利下げについても、明確なスタンスは示しませんでしたので、市場の織り込みとの乖離は埋まらないままです。パウエル議長とトランプ大統領の戦いも続きそうです。10月に入ってトランプ大統領の弾劾の話が出てきていますので、多少静かになるかもしれませんが。
日本銀行(BOJ)
予想通り、現状維持となりました。ただ一つ明確に残したメッセージは「10月にまた再検証する」ということです。幸運なことに一時進んだ円高も戻していましたので、日銀として何かしなければならないという気運は弱かったと思います。ただ、足元の金融機関の動きに関する報道を見ていると、マイナス金利の深掘りに対する対策を打て=口座維持手数料導入に向けて議論を進めよ、と水面下で指示を出しているように感じなくもないです。改めて10月に金融緩和すべき局面が来るのか、つまり9月と比べて何かが悪くなったと言える状況になるのか、気になるところですが、布石は打って日銀として動きやすくしてはいる、と言えそうです。
先月の債券市場の動き
さて、債券市場の動きを見てみましょう。
結果として緩和競争は進展したものの、大きなサプライズはなかったので、緊張は緩みました。また、10月1日の中国の国慶節を前に、米中貿易戦争も少し落ち着いた装いを見せていることもプラスに働いたと言えるでしょう。米10年国債利回りも1.9%近くまで上昇する場面がありました。
為替も合わせて見てみましょう。ドル円についても1ドル=105円近辺からじりじりと戻し、1ドル=108円くらいの水準で足元は推移しています。
日本の10年物国債利回りも下げ止まっています。
一点、注目を浴びたのは、FRBによる資金供給オペの結果でした。ロイター通信の記事はこちらです。
簡単にいうと、「9月中旬にアメリカの銀行セクターで資金不足が起きてFRBが対処した」ことを示しています。FRB会合を前に、やはり「金融政策決定の不透明感」が影響したのではないでしょうか。私は以前の仕事で短期金融市場のディーラーをしていたことがあるので、政策会合前にこうしたことが起こるのは不自然ではありませんでしたが、今のタイミングでこのニュースが出ると株価暴落のシグナルに捉えられないかどうか、というのを色々と考えてしまいました。結果的には、法人税支払いなどが重なったからという理由でしたので季節性要因とは言えそうですが、フォワードガイダンスがないなかで、会合前後でこうした動きは起こりやすくなっているので、FRBとしては何らか対策を迫られることになるでしょう。
12月はクリスマスなどで金融市場はお休みムードに入りますので、取引をされる方は10〜11月は悪くないと思います。一旦大きなイベントは消化しましたので、改めてご自身のポートフォリオを見直してみてはどうでしょうか。
弊社でポートフォリオの変更が必要であろうと判断されるお客様に対しては、各アドバイザーからご連絡をさせていただきます。またお客様と話していても全体的に不安感が高まっているように感じられますので、いつでも・どのような事であってもアドバイザーにご相談していただければと思います。