債券市場概観 – 2020年1月

先月の債券市場をざっくり振り返り。年初から大きなイベントが立て続く中ではあるものの大局に影響は見られず。ただし、世界経済の成長減速の度合いを年央に向け見極めたい

さて、今回は定例の債券市場概観をお届けしたいと思います。年初に2020年の見通しを書かせていただいてからいくつかイベントがありましたので、改めまして、年初からの市場の大まかな動きをおさらいします。

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2019年の怒涛の米株高からの調整

2019年は米中通商交渉に一喜一憂しましたが、いわゆる「第一段階合意」を経て、結果的には米株は右肩上がりを継続しました。2020年の年初も同様の上昇基調を継続し、駆け出し上々かに見えました。ただし、1月末にかけては新型コロナウィルスによる景気減速懸念を受けて、一時調整局面が見られました。ただこれも米株の決算などを経つつ、楽観論に打ち消され、2月に引き続き最高値更新をする展開となっています。

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原油価格の高騰

1月と言えば少し緊張感が高まったのは米国によるイランのソレイマニ司令官暗殺ですね。これを受けて戦争勃発となればリスクオフ継続だったかもしれませんが、双方振りあげた拳を下ろす形で落ち着きました。中東情勢は燻り続けるのが厄介なところで、実際年初にかけ原油価格は1バレル60ドルを超えて高騰しましたが、その後は比較的早いスピードで低下し、足元は1バレル50ドル近辺です。市場は米国が世界第一位の産油国であることを再認識した面もあるでしょうが、原油は需給が命。石油一大消費国である中国の景気減速懸念が出ていることで、産油国も減産に向けて動いているようです。

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米国債券市場も上昇

さて、本題の債券市場です。株が上昇するのでリスクオンかと思いきやそうでもありません。各種データが出てこない中ではありますが、米連邦準備銀行(FRB)は半期に一度の金融政策報告で、新型コロナウィルスを「新たなリスク」として認識を示しました。また、パウエル議長は「コロナウィルスの感染拡大を懸念」と個人的に示唆したことは少し印象的だったかと思います。ただし、ウィルスという意味では、どちらかと言えば、米国内のインフルエンザの流行の方がダメージが大きいとも言われていますので、米経済にとって中国の影響がどこまで出てくるかは今の時点では不透明です。

関連記事:新型肺炎、世界経済と市場への「新たなリスク」FRB金融政策報告 -Bloomberg

米10年国債利回りに関しては、昨年末1.9%まで上昇していたものが、利回り低下で足元は1.5%程度で推移しています。3ヶ月ぶりの長短金利の逆イールド状態が復活しました。今年末までに利下げを織り込む向きもありますが、果たしてそこまでのものなのか、しばらくは探り合いが続くことでしょう。

振らされるマーケットばかり見ていても仕方ないので、少し落ち着いてトランプ大統領の今のスタンスを確認するために、CNBCがダボスで行なったインタビューを聞いてみました。米ドルが強い状態が継続しているメッセージが印象的です。

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一方、日本の10年国債利回りですが、米欧債券利回りが低下するなか、1月は0%近辺と、相対的に動きの少ない月となりました。もともと政策変更余地の少ない日銀を見透かしてか、市場も大きなチャンスを見つけてはいないように見受けられます。

新型コロナウィルスの影響を嫌気して、上海株式指数は旧正月明けに急落

中国の旧正月は香港の4日間よりも長く、2月2日まででした。(実際は政府による対応もありその後も出社できない状態が続いています。)民族大移動とも言われるこの時期にウィルスの感染拡大が見られたことは大きな影響であったことは言うまでもありません。この間中国金融市場もお休みだったわけですが、長期休暇明けの市場は休暇中のイベント消化で荒れやすいということで、上海株式市場は旧正月明けに一時8.7%の急落を記録しました。中国への投資を検討されている方はセクター別に見てみるのが良いかと思います。

ちょっと小ネタでマスクの需給逼迫について。完全に余談ですが、マスク生産の多くはMade in China、しかも武漢工場が多いという事実を私自身今回初めて知りました。武漢封鎖による生産停止、再開しても労働者が少ない状況、そして中国国内でのマスクの配給制実施により、対外輸出は急減しているようです。例えば日本国内もマスク不足報道が見られますが、もともと高めのマスク需要を持つ日本で、さらに需要が増えたというよりは、どちらかと言えば供給が実質的にストップしている状況がこれを生み出しているのではと思います。その意味で「中国人が買い占めている」というのは合っていると言えば合っているということになりそうですが、もっと根本的なところに理由があるわけです。わずかな国産マスクの流通は問題なく行われているようなので、サプライチェーン次第ということは、お店によっては”あれ?あるじゃん?”という現象が起こるのではないかと思います。

2020年1月総括

想像していたよりも、ここまでの金融市場へのショックは小さかったように思いますが、少なくとも年央まで引きずる話であることは留意が必要です。しかし、「世界経済の減速」という言葉が毎年のように聞かれるのは少し残念で、もう少し景気が良いと感じられるとよいのにと思う次第です。牽引役の中国やインドが先進国に近づいてきていて全体として”成長率”が低減するのは歴史の必然なのですけどね。日本はオリンピックという成長チャンスを掴めるかどうかといったところですが、私自身は潜在的に成長する国の馬力を利用して皆様の資産運用のお力になれたらと思っています。

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