債券市場概観 – 2020年3月

先月の債券市場をざっくり振り返り。嵐は過ぎ去るも、未だに燻る火種はいくつかある。ベアマーケットの訪れを感じつつ、投資活動に繋げたい

アドバイザーの宮脇です。2020年3月は金融市場の激しいボラティリティの様を見ることになりましたが、個人的な感覚としては非常に早く過ぎた1ヵ月だった印象です。さて、3月は市場イベントが多過ぎて改めてまとめるのも一苦労ですが、恒例の債券市場概観をお届けしたいと思います。

各国株式は嵐が過ぎ去り一旦反発

債券市場概観なのに!というところですがやはり注目を浴びたのは株式市場でしたので、さっと見ておきます。年明けからの株価の一段上昇から一転、ほんの数週間の間にものの見事に下落しました。予め現金化していた人は逃れられたかもしれませんが、多くの投資家にとっては決してよい一ヶ月ではなかったのではないか、と推察致します。しかし、各国金融当局が矢継ぎ早に対策を打ち出したことで、金融システム不安には繋がらず、落ち着きを取り戻したかにも見えます。リセッションの程度としては、リーマンショックを超え、かつての世界大恐慌相当かという声もありますが、リーマンショックと今のところ異なっているのは、金融システムは正常に機能し続けているようだということです。実体経済がほぼストップしていますので、気休めといえば気休めですが、かつてのように「資産を手放したくても売ることができない」という状態になっていないことは一安心です。

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ちなみに、以下の記事のように、中東の石油資金(=国家資金)を運用するファンドはまだまだ株の売り弾を残している様子です。また、ロシアも金の購入を打ち止めるとの報道がありました。「上がるか下がるか」ではなく、「売らなければ困る」状態が続くようであれば株価の本格的な持ち直しにはネガティブな影響があるかもしれません。

産油国政府系ファンド、最大2,250億ドルの株処分か – ロイター

ロシア、金購入を4月1日から停止-世界最大の買い手 – Bloomberg

米国債利回りは一時上昇も、リスクオフムードは維持

株価が下がっているのに、債券が下がるなんて、という人もいるかもしれませんが、突如として起こったのはリスク資産全般からの退避=「現金化」の動きでした。特定の資産で急激な値動きが観測された場合、リバランスをするために、他の資産を売ることだってありますが、それが一斉に起こったことは印象に残りました。米国債利回りの上昇はこうした背景があったと言われていますが、中長期的にはどうでしょうか。一つは今後の米連邦準備銀行の政策の方向性次第ではありますが、米政府によって講じられる景気刺激策は国債の大量発行によって賄われる可能性が高いです。国債の需給面からすれば、供給増ですから、国債価格は下落、国債利回りは上昇します。一方、現状は米国ではマイナス金利は想定されていませんが、それがこの先織り込まれるようであれば情勢は随分と変わってきます。

FOMC、緊急追加利下げ、パウエル議長は財政政策訴え – Bloomberg

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金融政策は「撃ち方やめ」なのか

定例の金融政策決定会合で様々なことが決まるのに慣れてしまった私たちにとって、3月に各国で見られたような緊急対応は政策の中身の精査に時間を割く余裕を与えてくれなかったように思います。あまりに様々な政策が出てきたので、とりあえず”オールイン(All-In)”したんだな、という印象で終わっている気がします。実際、金融政策の全てが「景気刺激策」だと感じると、中央銀行の大胆に見える政策により、なぜ株価が上がらないんだ、という指摘に繋がっていたように記憶しています。もちろん、景気刺激にならないとは言いませんが、ここまでの多くの施策は、「金融安定化」を意図しています。(例えば、無利子で事業資金が借りられるとしたらそれは景気刺激策か経営安定策かというと後者だというのと同じです。)金融市場はチェーンのごとき取引で構成されるので、それぞれの市場参加者に対してしっかり潤滑油を流してあげること、中央銀行が最後の拠り所となり得ることを宣言することが重要でした。

それに、金融政策はじんわり効くがキホンなので、日本流「黒田バズーカ」のようなマジックを期待してはいけません。金融安定化が達成された後に、そして実体経済が再び回り始めたときに、改めて景気刺激効果を発揮します。その過程で、拡大しすぎた金融政策は縮小し、そしてより効果的な政策へと転換していく必要もあるのです。

まだ市場に緊張感は少し残る

3月末を迎えるにあたり表面的には落ち着いた金融市場ですが、必ずしも平時のモードに戻ったわけではありません。

Libor-OISスプレッドが拡大

一つには銀行間の3ヶ月物金利と翌日物の金利のスプレッドとしてよく挙げられるL-OISスプレッドが拡大したままです。多少金利は高くなっても社債を新規に発行して資金の工面に成功した企業も多かったですが、銀行もまた数ヶ月をしのぐための資金の獲得に高い金利を払う必要性が出てきています(あるいは資金の出し手が高い金利を要求しています)。「え?銀行にはお金がじゃぶじゃぶしているんじゃないの?」と思う人もあるかもしれませんが、銀行だって、預かったお金を投資に回したりしていますから、手元現金はそれなりにしかありませんし、今日はうん億円の資金流入かもしれないし、明日はうん兆円の資金流出かもしれないからです。常に他の銀行とも資金調節をしています。資産の一斉売却は落ち着いたにしても、短期の貸し借りの市場はやはりしばらくホットなマーケットでしょう。

L-OISと言われても金融関係者でなければなかなか理解しづらいでしょうから、少し分かりやすい例で説明します。以下は、米国企業が発行する短期債であるCP(コマーシャルペーパー)と米国政府の短期国債の年限別利回りです。3月に米国はゼロ金利政策へと転換しましたから、国債利回りの示すとおり、1年以内の金利はほとんどありません。一方で、CPの利回りを見ると1%を大きく上回っています。もちろん、①企業業績が悪化するので、借入にあたってより高い金利が求められている、ともとれますが、もう一つは②このCPを賈う投資家というのは通常はマネーマーケットファンドだというのがポイントです。現金化の流れが起こったとき、マネーマーケットファンドにも大量の資金が流入しますが、市場が落ち着くとともに、今度は大量の資金が流出します。流入すればそれに合わせた資産を購入するわけですが、流出が明日にも大量に予定(予測)されているとしたらどうでしょうか。ファンドマネージャーとして資産を買うのはためらいますよね。つまり、今はマネーマーケットファンドが安心して満期3ヶ月の投資ができる(=投資家が3ヶ月間それなりにファンド投資を継続してくれる)と想定できていないことを意味しています。

VIXはまだまだ高い状態が継続

一時期はリーマンショック以来の水準を記録したボラティリティ指数ですが、3月末にかけては少し落ち着きが見られました。ただし、こちらも平時に比べれば随分と高い状態が継続していますので、依然として先行きの不透明感を織り込んでいることは間違いありません。もう少し落ち着かなければ、”霧が晴れた”とは言いづらいと思います。

ベアマーケットの足音が聞こえてくるが

市場ではブルマーケットからベアマーケットへの転換が叫ばれています。株価で言えば2番底を試すような展開が来るかどうか、といったところが注目になっているようです。投資家が全般に慎重となるなか、よほどのことがなければ3月のような株価急落には繋がらないと思いますが、ゼロ金利状態に陥り、債券による逆相関のクッションが敷きづらい今となっては、もう一段のショックは致命的になり得る可能性があります。一方で、数ヶ月前に比べれば買いやすくなったと感じる資産もありますから、長期投資を始めるには悪いタイミングではありません。アドバイザーともよく相談をしながら、焦らずに投資活動を進めていただけたらと思います。

いずれにしても人類はまずは新型コロナウィルスに打ち克たなければなりませんから、ワクチン開発などが急がれます。どなた様も是非健康にお過ごしください。もし質問等ございましたら、担当アドバイザーへの連絡でも構いませんし、お問い合わせフォームより相談いただければ対応させていただきます。

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