債券市場概観 – 2020年5月

先月の債券市場をざっくり振り返り。セル・イン・メイは起こらず、金融市場はコロナショック前の状態を取り戻しつつある

皆さんこんにちは、アドバイザーの宮脇です。今回は定例の債券市場概観ですが、最初にコロナ禍中での弊社取り組みの総評を少しだけ。

オンラインポートフォリオ診療コーナー総評

4月より期間限定で行なっていたオンラインポートフォリオ診療ですが、非常に好評をいただきました。5月末で締切としましたが、私たちの仕事が変わるわけではないので、もしリクエストがありましたら随時お問い合わせいただけたら幸いです。

仰々しい名前をつけてしまいましたが、普段お話しする機会が少ないお客様とも、押し付けがましくない接点/きっかけ作りをしたい、コロナで生活や事業に不安を感じる方も多いなか、資産運用にまで不安を感じて過ごすことのないようにしたい、というのが本来の目的でした。「お時間いただくのも申し訳なく…」という一部のお客様からの言葉もあったのが個人的には印象に残っております。万が一返信に漏れがあった、あるいは改めて聞きたいことができた、などありましたらいつでもご連絡いただけたら幸いです。

では、債券市場概観に戻ります。

米10年国債利回りはほぼ横ばい

2020年5月の米国債市場は非常に穏やかなものとなりました。経済支援策などを大々的に発表するなか、米国債の発行も増加しましたが、金利上昇には繋がりませんでした。また、米連邦準備銀行(FRB)でも金利水準を長期間低位に据え置くなど、フォワードガイダンスを導入する可能性についても憶測がありましたが、今時点では特に新しいものはありません。日本銀行のようなイールドカーブ・コントロールを米国債中期ゾーンに対して、少し検討しているのでは、という話が出ているくらいです。

株式市場の“Sell in May”は今のところ具現化せず

実体経済の割に株式市場が好調のように見えて不気味に感じる人も多かったのではと思います。特に良かったのはアメリカのナスダックであり、概ね今年の最高値へと向かって反発しています。アメリカ・ウォール街の格言では「Sell in May (, and go away; don’t come back until St Legar Day.)」、通称”セル・イン・メイ”というのがあり、相場が高い5月に売って、相場が安い9月に買いなさい、と言われています。過去の実績的には6月〜8月は軟調な(やや下落基調の)株式相場になりやすいという事実からですね。相場の季節性のようなことはよく言われますが、それは夏休みやクリスマス休暇に入るトレーダーが増える(あるいはボーナスが支払われてバカンスをする)ことなどから、起こるのではとも考えられますから、コロナで一年のサイクルが乱れるようであれば、これもまた今年は違うかもしれませんね。(いや、そもそも格言でしかないんですけどね。)

原油相場の立ち直りも後押し

コロナショックの一つの引き金であった原油相場についても、一時マイナス価格を記録した後は落ち着きを見せており、このことも市場の安心材料となったことだろうと思います。OPECを中心に始めた減産も需給環境の改善に寄与すると考えられており、一時期のように原油相場に注目が集まる、といったことは当面なさそうです。

FRBが米国社債ETFの購入を開始

米連邦準備銀行(FRB)は立て続けに金融緩和策を発表しましたが、実はまだ始まっていないものもあったりします。5月にようやく始まったもので言えば、米国の投資適格社債を保有するETFを買い入れるというものです。日本銀行は既にETFを購入していますが、アメリカでは初めての試みです。購入したETF銘柄についても随時公表されており、代表例としては以下の、iShares iBoxx $ Investment Grade Corporate Bond ETF(通称、LQD)です。巨大な買い手の登場により、米国社債市場に広まった安心感は計り知れません。

FRB、緊急融資プログラムで購入した社債ETFを開示 – Bloomberg

個別債券でみても概ね正常域に戻っている

2020年3月の株式市場の下落が印象に残っている人も多いと思いますが、同時期に債券市場も投げ売りが増え、かなり安くなっていました。その後は落ち着きが見られており、おおよそ平時に戻った、と言えるでしょう。特段推奨をするものでもありませんが、HSBCの一銘柄を例に確認してみましょう。

HSBCと言えば発行体としての格付けもよく、日本人にも馴染みのある金融機関です。現在はリスクフリー金利である米国債利回りが非常に低いので、債券価格としては上昇しやすくなります。それでも2020年3月にはおよそパー(額面100)まで下落し、利回りで言えば6.8%まで上昇しました。コロナショックによる見通し悪化を受けてS&Pからは1段階の格下げを受け、現在はBBBとなっていますが、引き続き投資適格級に留まっています。表面金利(利率)で言えば6.8%ですが、価格が再び上昇しているので、今では満期保有利回りは3.8%くらいです。

  • 銘柄:HSBC 6.8% 06/01/2038
  • 米ドル建の劣後債(S&P格付:BBB+→BBBへ格下げ)
  • 表面金利:6.8%
  • オプション:なし
  • 満期保有利回り:一時6.8%をピーク → 足元は3.8%まで低下
  • 債券価格:一時100まで下落 → 足元は135程度で推移

まとめ

6月を迎え、全体としてやや楽観的なムードが金融市場には漂っており、ボラティリティも低下しました。世界の国際金融センターで続々とトレーダーがオフィス復帰しているようですし、この6月を落ち着いて過ごせるかどうかは、2020年後半の金融市場を占うものになりそうな予感がします。

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