中国本土の中国銀行口座(人民元口座)を解約したときの体験談

一時期は流行った銀行口座開設ツアーの末路。付き添いで中国本土の中国銀行(人民元口座)を解約したときの体験談。口座管理の重要性を改めて感じる。

海外の銀行口座開設ツアーの末路

海外の銀行口座開設ツアーが人気になって10年近くが経つでしょうか。近年、銀行口座開設そのものが難しくなったと言われていますので、かつてほどではないですが、今もちらほらと口座開設にチャレンジする方がいらっしゃいます。

一方で、最近たまに聞くのが「海外の銀行口座解約」です。仲間内で盛り上がった当時は、資産分散だの、きっと何かの役に立つだのと言って海外銀行口座開設に取り組んだ方が、時間が経ってみるとやっぱり必要なかったということで解約にいらっしゃるケースが増えているようです。弊社のアドバイザーにも口座開設時の付き添いの依頼はありましたが、その口座を10年も経たずに閉鎖する際にも付き添うというのは何とも奇妙な感じです。昔話ができるのは楽しいですけどね。

今回は、HSBC香港の香港ドル口座ではなく、中国本土の中国銀行(Bank of China)の人民元口座の解約にお付き合いしたときの話をしたいと思います。(念のため断っておきますが、ここで話すのは岡山県に本店をおき、山陰地方を中心に展開する地方銀行である”中国銀行”のことではありません。)

なぜわざわざ人民元口座を開設したのか

今回の登場人物は今も昔も日本在住の佐藤さん(仮名)です。佐藤さんは8年前に、香港での香港ドル口座開設、中国本土での人民元口座開設に挑み、無事両方を開設された方です。佐藤さんのように、日本から団体で来て、せっせと銀行口座を開いていく方々が一時期は本当に多かったです。銀行のカウンターに日本人が長蛇の列を作ったこともあり、当時の銀行員はとても不思議に思ったことでしょう。

何のために口座開設をしたかというと、「勢いだ!」と佐藤さんは冗談交じりに言いますが、本音のところは「外貨が持てるから」ことだったようです。日本円だけではやはり心もとなくて、何でもいいから外貨だ、そうしたら海外に出て口座を開くしかない、という発想でしょう。海外の方が銀行口座の利子も高かったですから。

当時、口座開設ツアーで来た人も、人民元の口座を目指した人は多くはありませんでした。中国の近年の経済成長の手前であって、人民元自体があまり有名ではなかったですからね。どちらかというと、香港へ来て口座開設する場合の”上級編”みたいに捉えていた方もいらっしゃるようです。

兎にも角にも、中国は経済成長を遂げましたので、今後の使い途はそれなりにはありそうですが、今回の佐藤さんは口座閉鎖の意向です。何故なのかを聞いてみました。

そしてなぜ人民元口座を解約するのか

佐藤さんは、当時勢いよく口座開設をしたものの、それ以降は日本での事業に波が訪れ、非常に苦労されたようです。今はその事業がまた軌道に乗り、時間が取れたので、色々と整理をしていたところ、また少し海外に興味が出てきたのと、存在すら忘れかけていた中国の銀行口座のことを何とかしたいと思ったそうです。

実際のところ、香港の銀行口座については、口座維持手数料がかかっており、気づいたら残高が激減していたので、ダウングレードしました。ただ、香港の銀行口座はまだ使い途があるとのことで、残すことになりました。一方、人民元口座は「今後使うことがない」と思ったことと、ご友人から「人民元の国外持ち出しが年々難しくなってきている」ということを聞いたためだそうで、この機会に定期預金を解約し、口座も閉鎖なさいました。人民元口座は定期的な利子の分だけ増えていたようです。

そもそも今人民元口座を開くことはできるか

正直にいうと、中国本土へ行って開設するのは大変だと思います。そもそも英語を話す銀行員は決して多くないですし、手続きや必要書類も支店によりまちまちな傾向があります。そのため、中国外に住所を持つ人は、身分証明、住所証明に苦労するようです。香港の場合も日本の居住者の銀行口座開設は確かに難しくはなりましたが、それでも書類と開設理由さえちゃんとしていればチャンスは残っています。

人民元を中国国外へ持ち出すのは大変なのか

佐藤さんがご友人から聞いたように、人民元の国外持ち出しは厳しくなっているのでしょうか。佐藤さんはかつて、珠海で中国銀行の口座を開設し、今回は香港から近い深圳で閉鎖に挑みました。結果的に、2つの支店を回ることになり、片方の支店では「5万人民元以上の現金引き出しは事前予約が必要」、もう片方の大きな支店では「10万人民元以上の現金引き出しは事前予約が必要」と言われました。当然現金が欲しかった佐藤さんは諦めかけました。また、中国本土から香港への送金も金額制限がかかっていて当日中に解決はできそうにありませんでした。しかし、この後ご友人の助けがあり、「中国本土内口座間送金であれば金額の制約はない」ということで何とか口座解約まで漕ぎ着けることができました。

他にも口座解約時のトラブルが多い

現金引き出しや中国国外への資金持ち出しとは別に、口座解約時に起こったトラブルを紹介します。

登録住所が分からない

佐藤さんはそもそもどの住所が登録されているのか覚えていらっしゃらず、心当たりのある場所を答えてみても全然違うと言います。銀行員と何度かやり取りをしながら分かったことは佐藤さんは当時滞在していたホテルの住所を用いて、口座開設をしたらしいということでした。当時利用した部屋番号まで聞かれましたが、覚えているはずもありません。事情を説明し続けて何とか乗り切りました。

暗証番号(PIN)が分からない

佐藤さんは口座開設以降、この口座を放ったらかしにしていました。初期の暗証番号を伝えても間違っており、どうやら初期のPINの変更だけはしていたようです。残念ながら、心当たりのある番号を答えても違うようです。結果、珠海の支店まで行けばPINの変更ができると言われ、一時は途方に暮れることになりましたが、粘りに粘った結果、深圳の支店でPINを変更し、事なきを得ました。

様々なトラブルを乗り越え、佐藤さんと私が昼ご飯にありつけたのは夕方4時。朝から銀行に行ったので、本当に一日がかりでした。本来であれば住所やPINは覚えていなければいけないものですから、不正取引と疑われてカウンターから追い出されてもおかしくない状況でしたが、何とか口座閉鎖できたことにほっと胸を撫で下ろしました。やり取りは全て中国語ですから、お付き添いしたことを本当に感謝されました。

そもそも人民元はどのようなときに必要なのか

こんなに苦労する人民元の本土口座ですが、実は、香港でも人民元口座を開くことは可能です。ATMで人民元は出てきませんが、銀行窓口で行けば現金を受け取ることもできます。ただし、中国本土の口座のように銀行預金への利子は高くありません。

もし今、ビジネス以外で人民元口座が必要という方がいらっしゃれば、WeChat Payのために必要と考えている人が多いかもしれません。本土では人民元のキャッシュレス化が進んでいます。逆にいえばそれまでで、中国の外貨規制は目まぐるしく変わるので実需がない人が口座を持つことはやはりオススメできません。

必要なら管理する、必要ないなら閉鎖する、が鉄則

最後にまとめると、一般的な流れとして、国外に住む人がその国で口座開設するのは難しくなってきています。これはマネーロンダリングの観点なので日本も例外ではないはずです。逆に言えば、今新規に口座開設するのは確かに難しいので、開いた口座を閉じるのは勇気がいります。ただし、使わない口座は忘れないうちに整理するというのが大事です。資産分散!といって持っていたのに、銀行から手数料を搾り取られてすっからかんでは元も子もありません。自分がどんな口座を持っていて、どういった住所が登録されていて、どういうロックがかけられているのか、定期的に見直したいものですね。

口座管理で何かお困りのことがあればご相談ください。

関連ブログ:何がなんでもHSBC香港で口座開設したい方のための【ハードモード】マニュアル

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