コロナショックとリーマンショックの共通点と相違点

激しい値動きを記録した「コロナショック」を過去のリーマンショックと並べることにどれくらい意味があるのか。共通点と相違点をまとめてみる

先週は「世界同時株安」についてお届けしましたが、今週は米大統領候補指名争いの山場であるスーパーチューズデーもあり、ただただ落ち着かない相場が続いています。

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さて、新型コロナウィルスの流行を発端した金融市場の動きに対し、日本では”コロナショック”という呼び方が市民権を得つつあるようなので、私ものっかかって使ってみたいと思います。ところで、リーマンショックという言い方は日本人だけが使っているのはご存知ですか?英語でLehman Shockという出来事が語られることはありません。大概はコロナショックとリーマンショックの共通点と相違点コロナショックとリーマンショックの共通点と相違点Bankruptcy of Lehman Brothersですし、もとい日本人がリーマンショックで広義に意味している事象を指すのはGlobal Financial Crisis(GFC)です。コロナショックも和製英語として定着するか、あるいは流行語になった後、歴史に埋没する存在になるかもしれません。

景気を語る世界では「いざなぎ景気以来の~」とか「リーマンショック以来の~」という言い方がよくなされます。特にリーマンショックは金融機関と世界経済に深い深い傷跡を残しましたので、その後10年くらいはその修復過程と捉えられていたからです。やや振り返るのには時期尚早な気がしますが、今回のコロナショックについて過去のリーマンショックと比較してみたいと思います。

コロナショックとリーマンショックの共通点は何か

①金融市場の動きの規模感とスピード感

2月最終週のニューヨーク株式市場のダウ平均株価の値下がりは3,583ドル、値下がり率では12%を記録しました。値下がり幅としては過去最大、値下がり率でいえば18%であったリーマンショック時に次いだ規模と言われています。1週間でこの動きでしたからチャートをご覧になる方からすればこの規模感とスピード感は一目瞭然で、このタイミングで株式を買うのは「落ちてくるナイフを掴む(catching a falling knife)」ようなものだ、という言い方も随所でされていましたね。当初は中国の景気減速懸念だったわけですが、結果的に、世界的な影響に変わり、世界同時株安の様相となったことがリーマンショック時と似ているといえば似ています。

一方、米10年国債利回りに関しては1.0%を割れ、過去最低を更新したのは印象的で、合わせて安全資産である金も上昇をしました。米中貿易摩擦などを経ながらも、株高債券高をじわじわと進行してきたので、市場にとって、大規模な株安債券高というのは久々だったように思います。

②もともとの経済が好調に推移

今回、米国も中国も経済環境は良好で、それゆえに経済収縮の影響が色濃く出てきそうな雰囲気があります。リーマンショックの前もやはり経済にイケイケな雰囲気はあったわけですから、当時は冷や水どころでなく氷水がかけられた状況だったわけです。今回も、中国を始めとしてグローバルサプライチェーンが実質稼働率を落としていることが指摘されていますから、冷や水で終わればよいなというところです。合わせて、コロナショック前は資産価格が高騰していましたので、今年に限っていえば様々な統計で”悪い数字”を目にすることになりそうです。とはいえ多くの場合は「前年比」だったり「前年同月比」だったりするので、トレンドが形成されなければ、少なくとも来年にはリバウンドした数字を見ることになります。

③金融当局が金融安定化のための緊急対策を発表

3月3日にはG7財務相・中央銀行総裁による緊急電話会議が行われ、共同声明が出されました。「協調利下げ」が発表される噂が事前に市場に広まりましたが、共同声明自体は大きな示唆がありませんでした。おそらくサプライズであったのは、その後、米連邦準備銀行(FRB)は通常の会合ではなく、緊急会合を設けて意思決定を行い、緊急利下げを行なったことでしょう。記者会見での質問にもありましたが、その前週に各高官から「時期尚早」との発言が相次いだなかでの発表だったことが印象的です。3月の通常会合に向けてさらなる議論の余地を作ったということになるでしょう。金融当局側の異例の対応はやはり金融市場の動きが極めて大きいことを如実に表しています。

G7財務省・中央銀行総裁声明 – Bloomberg

コロナショックとリーマンショックの相違点は何か

①金融政策による景気刺激余地は少ない

個人的には、日本市場はともかく、米市場はコロナショックが本当に単純に経済成長への影響を悲観した「売り」だったかには若干疑問が残るような気もしています。確かに世界経済への影響を懸念する声の広がりはあり、そしておそらく成長減速するでしょうが、リーマンショックのときのように特定のトリガーがあったかというとそうでもありません。過去十数年に比べて、自動売買、高速売買のような取引が増え、心理的ではなく”機械的に”リバランスをすることも多い状況ですから、売りが売りを呼んだことは確かですが、今のところは少し高かったものが正常位置に近づいただけであって、皆が投げ売りをするような悲観的な状況ではないかなという気もします。もちろん、ウィルスの広まりが水面下で進んでいた数ヶ月があるのと同じように、金融ショックのトリガーの顕在化がまた数ヶ月後といったことも想定されないわけではないですが。金融当局としては最低限「悲観的な状況」に陥るのを食い止めたいということですが、リーマンショックのときのように金融政策で撃てる弾は決して多くありません。政府による財政政策の果たす役割が大きくなる必要があります。

②感染拡大は時系列的な現象であってピークアウトする

リーマンショックがもたらしたものは結果的には経済の心臓たる金融セクターの機能不全でした。今回も低金利下で金融セクターの体力が弱るなか、実体経済に様々な支援をしなければなりませんから、金融セクターにとって正念場であることは確かです。感染がどのくらい持続するのか分からないので万が一を想定する人はいるかもしれませんが、予見できる、緩やかな状況の変化に社会は対応できるものだと思います。

また、感染にはピークというものが存在しますので、山場がいつくるかはある程度予測可能で、それを乗り切ればあとは収束に向かうということですから、過度に慌てる必要はないだろうと思います。

両者の比較から得られるインプリケーションとは

リーマンショックは金融セクターに大きな傷跡を残しました。その後、様々な金融監督制度、リスク管理体制が構築されてきたことは確かです。新型コロナウィルスの拡大による影響を抑える上で、その体制がしっかりと機能したかどうか、試される一つの契機にはなるでしょう。

一般投資家として気をつけたいことは、仮にコロナショックが良い方向に収束したとしても、過度なリスクオン環境(楽観論)に陥るような場合には警戒が必要だということです。もともとアメリカが景気サイクルの後期に差し掛かっていたことは事実ですし、様々な資産価格が依然として高い状態にありますから、慎重に市場を見極めなければならないことに変わりはありません。

最後に、両者を比較することで見えてくるものはあったかもしれませんが、少し注意したいのが、今回のコロナショックと機を同じくしていた、米大統領候補の指名争いです。トランプ氏とはいわば真逆な政策を訴える、急進左派のバーニー・サンダース氏が序盤でリードをしていました。14州で同時に開票となるスーパーチューズデーを前にこれを市場が材料視していた可能性は確かにあります。FRBによる緊急利下げがまるでなかったことのような市場の動きになったことも印象に残りましたね。中道派の候補がバイデン氏に集約されたことで、打倒トランプのメインシナリオに戻ってきたことは確かでしょうが、サンダース氏がそれに並ぶくらいの支持を得ている、という事実はアメリカの世相を見る上で意味があるのではないかと思います。

民主党スーパー・チューズデーでバイデン氏がカムバック -BBC

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