運用利回り5パーセントのポートフォリオ例をデザインする

長期的な運用を視野に入れたとき、無理な運用はしたくないですよね。同じ利回り5%でも様々なポートフォリオが組めることを紹介します。リスクも様々、好みも様々です。あなたに合ったポートフォリオはどれか。

富裕層担当アドバイザーをしている、宮脇健です。私の仕事の一つは、お客様の投資プランを考えることですが、お見せする提案書の裏側でどんなことをしているのか、今回は「利回り」という視点から簡単に紹介したいと思います。

「宮脇さんはどんな運用をなさるのですか?」

そんな質問を最近いただきました。ポートフォリオの作り方は本来話し始めると長くなる話なのですが、出来るだけコンパクトにお届けできるよう頑張りますのでお付き合いください。

はじめに

ポートフォリオというのは人によって違っていて当たり前

だということはまず意識して欲しいです。誰しも「必ず勝てる」「鉄板の運用」なんてものが欲しい気持ちにはなるものです。でも、世界にはうじゃうじゃポートフォリオマネージャー(運用担当者)がいますから、一体誰が「優秀」なのか分からなくないですか?

いっそのことシンプルに「結果=リターンが全てであるということにしてみよう」とおっしゃる方もいます。実際、その結果を得るために、リスクをどれだけ抑えたか、はたまた分散投資したのか集中投資したのかなんて、後から振り返ってみれば何の意味もないように思えてきます。だから多くの人はリターンの目線を先に持っています。

投資においてはプロセスの話をしよう

もちろんリターンの目線はとても大事です。なぜなら、漠然と「儲けたい」と思っているのではなく、その人にはきっと「なぜそのリターンが欲しいか」という投資の目的がその裏側にあるはずだからです。これを投資用語では”要求収益率”と言います。これは完全に自己都合です。ただ「これだけのリターンが欲しい」という話を一方で、今の経済環境の中で、その要求収益率、リターンの目線が適切なのかを認識することも重要です。同じ投資戦略であっても好景気ならリターンは20%かもしれないものが、不景気だとマイナス5%まで落ちてしまうこともあるのです。

ですので、投資において一番大切なことは結果としてのリターンだけでなく

リターンを生む「プロセス」に納得ができるか

どうかだと私は思っています。

ポートフォリオでなくても、この「プロセス」の見極め方を磨くことで、儲け話に飛びついて詐欺にあうことも減らせるかもしれません。ここが、オトナの投資家になれるかどうかの境目であるといっても過言ではありません。

なぜプロセスが大事なのか

理由は2つあります。

① 将来リターンが不透明だから

② 同じリターンを達成するためには色んな方法があるから

投資家だけでなく普通の人間は①を凄く嫌います。だから、「利回り◎%保証」と言われると安心して飛びついてしまいます。でも仮に利回り保証がついて①がクリアできたとしても、やはり②は無視してはいけません。利回りが保証できるのはなぜなのか、そして保証できるカラクリは何なのかを考えることです。そうすると、投資の持つリスクが見えてきます。一方、多くの投資はリターンが保証されていませんから、どういう方法でそのリターンを達成するのかを考え、それは実現しそうか、という評価をします。

なのでここでは、②の切り口から、同じリターンを得るための複数の方法について話をしたいと思います。

資金USD1m(約1億円)で利回り5%のポートフォリオを目指してみる

プロセスの大切さを理解するために、ちょっと変わった試みをしてみましょう。それは、先に”利回り5%”を設定しどういうポートフォリオを組めるのか検討してみるのです。

通常、ファイナンシャル・アドバイザーのみならず資産運用会社は自社のポートフォリオがいかに優れているかを結果としての数字で誇示します。たとえばS&P500などの対象指標から運用成果がどれくらいプラスとなっているか、などです。

マーケティング資料として分かりやすくキャッチーであることはもちろん大事ですがそれは諸刃の剣。投資家は「へぇ、この運用会社は運用がうまいんだな」と漠然と知ることはあっても、その投資家が”リターンを生むプロセスに納得すること”はないでしょう。果たしてそのリターンがどれくらいのリスクを取って得ているリターンであるのかが分からないからです。

もちろん、リスクが少なくてリターンが多いほうがいいに決まっています。しかしそのリスクの感応度も人によって違う以上、投資家本人が「何をリスクに感じるか」「そのリスクテイクに納得しているか」が非常に大切です。

アイデアとしていくつかのポートフォリオを紹介しますので、ご自身にとってどれが「フィット感がある」のかを考えてみてください。どれも利回り5%であることを忘れないでくださいね! USD1mのmはmillionすなわち1,000,000です。1mなら1,000,000、5mなら5,000,000です。あえて利回りを5%に固定することで、「5%よりも6%が、6%よりも7%のほうがいいじゃん」という結果に飛びついてしまう思考をぐっとこらえていただきどのようなポートフォリオを組めるかを例示してみます。

ポートフォリオ① 現物債券のみ

現物債券のみで構成したものです。債券価格は動きますが、満期まで持つのであれば、購入した時点で利回りは確定です。債券につきまとうリスクとして、デフォルトリスクがあります。発行体企業が倒産(デフォルト)してしまえば保有債券の価値は無価値になることもあります。

  • ポイント

現物債券はあまり小さな金額では購入できませんので、4〜5銘柄くらいが目安でしょう。債券によっても違いますが、おおむね一銘柄USD200,000と考えていただいて構いません。バイ&ホールドでは保有コストはかかりません。

ポートフォリオ② バランス型(保守的)ETFのみ

近年急速に預かり高を伸ばしているETF。もちろん弊社でも取り扱えます。手数料が非常に低廉なこと(たとえばVanguard S&P500は手数料0.03%)で、適切なものを選択すればほぼ小さな金額から購入できるETFの特徴を活かして、できるだけ多くのETFに分散投資します。ETFを用いれば通常のファンドよりも保有コストを抑えられるのがポイントです。

  • ポイント

主要な市場インデックスに沿った銘柄、あるいは債券インデックス中心に構成し、多くても15銘柄くらいがいいでしょう。銘柄は保守的なものを選び、可能な限り入れ替えは行わないことにします。

ポートフォリオ③ バランス型(ファンド・オブ・ファンズ)ファンド中心

様々な運用戦略に投資できるアクティブ・ファンドの特徴を活かして、ファンドマネージャーを分散させることで、それぞれのファンドではリスクを積極的に取りにいきますが、ファンドマネージャーの見極めが肝です。

  • ポイント

ファンドによっては最低投資額がありますが、10銘柄くらいを分散させれば十分でしょう。保有コストは高めになりますが、特定の投資戦略に依存しなくて済みます。またファンド・オブ・ファンズの場合ファンドの入れ替えコスト(たとえばサブスクリプション・フィーといってファンドを保有した瞬間にかかるコストなど)もかかりやすいので、始めから分散したポートフォリオを組み、入れ替えコストを最小限にします。

ポートフォリオ④ バランス型(積極的)ETFのみ

様々なインデックスの選択肢があるETFの特徴を活かして、特定のセクターやアセットクラスに傾けたポートフォリオを組みます。これまでのポートフォリオと違っていったん保有したら当分ほったかし、というものではなくてわりと積極的にポートフォリオ構成を変更しますので、一定の金融知識が必要とされます。市場環境を見ながらリバランスをしていきます。

  • ポイント

分散しすぎるとかえって戦略が取りづらいので、多くても10銘柄くらいがいいでしょう。リターンはより上下にブレる可能性が高まります。ETFを利用すれば保有コストは低めです。弊社のクライアントでも、玄人はだしのマーケット・ウォッチャーがいらっしゃいます。そういった方はこのポートフォリオのように機動的に資金を動かしてリターンを取りにいきたいというニーズが強いように思います。

ポートフォリオ⑤ 株式のみ

株式を中心に構成したものです。例はETFで構成していますが、保有したい銘柄がある場合などは、個別株式を選んでも構いません。

  • ポイント

景気サイクルの影響も色濃く出るので、リターンは大きく上下にブレる可能性があります。管理のしやすさから、5銘柄程度が良いですが、長期保有に適した優良株を選ぶことが理想です。

まとめ

文章ばかりだと判断しづらい人もいるかもしれないのでまた違う3点で見渡してみます。ここでリスクとは損失可能性ではなく、リターンの上下のブレです。

①債券②バランス型(保守的)③ファンド・オブ・ファンズ④バランス型(積極的)⑤株式
分散程度
リスク
コスト

どうでしょう?ご自身が思い描くものに近いものはありましたか?そしてそれはなぜですか?出来るだけご自身の言葉で口に出して語ってみることをお勧めします。

上で紹介した5パターンに誰もが選ぶべき唯一の正解はあったかというと、答えは「ない」になります。なぜなら実際の市場環境次第では、手堅くいった①が一番リターンが高いかもしれないし、実はリスクをとった⑤が一番リターンが高いかもしれない。いやいや、ファンドマネージャーがすこぶる優秀で③が一番良かったよ、なんて具合です。

皆さんに少し頭を使っていただいたところで、では最初の質問に戻ります。

私はどんな運用がしたいか

「私はこのように運用します。」と質問にまっすぐお答えすることもできます。なぜなら、投資一任で、お客様から大事な資産をお預かりする立場にあるからです。でも、もう一つお客様に大事にして欲しいこと、そして私たちアドバイザーがお客様に必ず聞くであろう質問は「お客様はどう運用なさりたいですか」です。お客様の頭のなかには「金融商品が先にあって、それを紹介してくれると思ってたのに、どう運用されたいか聞かれてもわかんないよ」と不思議な感じになる方もいらっしゃいます。

でも、その理由が、今回の「プロセス」の話を通じてご理解いただけていたら幸いです。そう、運用のあり方は人によって違うのです。違っていないとおかしいのです。お客様の人生はそれぞれ、投資感もそれぞれだからです。アドバイザーがお客様のフィット感を探り当て、お客様のためにテーラーメイドで金融商品を作っていくのです。それが最初からお仕着せであってはいけません。

「プロセス」にご納得いただいたうえで、金融市場を見て、ファンドを選んだり、ETFを組み替えたりするのはまさに私たちの仕事ですし、市場環境次第では、もう少し利回りの目線を上げられそう、といった話はもちろんいたします。船に例えるならば、いわば船長がお客様、私たちは航海士なのです。資産運用はギャンブルではありませんから、目的地までお客様を案内できるよう、精一杯努めて参ります。

この記事で登場する銘柄だけを見れば、自分でいうのもなんですが平凡といえば平凡です。なぜなら、①ポートフォリオの一瞬間を捉えた、いわば静止画像だから、②凝ってはいるが得体の知れないものを組み込むことだけがリターンの源泉ではないから、③安心して見ていられることが何よりも良い投資経験と言える時もあるからです。ひょっとしたら「真似できるんじゃないか」「これくらいだったら自分でもできるじゃないか」と思った人はいるでしょう。もし自分にあったポートフォリオについて聞いてみたいという方がいらっしゃいましたら、気軽にご相談ください。

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