運転席か助手席か。投資家とIFAはどちらに座るのが幸せか

IFAを使った資産運用において、IFAに何を判断させるかについて自覚的になるべきというお話。クライアントの現状、IFAのジレンマ、幸せな資産運用生活を送るために投資家としてやるべきこと

奥様がガンになったという話から始まる、こちらのTEDトーク。困難な状況において自分で意思決定をするか、それとも他人に意思決定を委ねるかのお話。まずはご覧ください。

がん治療など複雑なモノゴトにおける意思決定の主体を、誰がするべきかという問題を、自分でするべき(運転席にすわる)・他人にしてもらうべき(助手席にすわる)という分かりやすい表現に置き換えられている。

中でも、INCAな局面(トーク中に使われている言葉。主体的に判断した結果、すぐに否定的な反応が帰ってくる場面。たとえば資産運用であればマーケットで主体的にリスクをとったにも関わらず思った結果がすぐに得られないような場合)では自分が助手席に座ったほうがうまくいくことが述べられている。

これを、勝手に運転席/助手席問題と名付けることにしよう。

運転席/助手席問題 – 資産運用では

あなたは、おカネのことは自分で判断したいタイプだろうか。それとも、誰かに任せたいタイプだろうか。誰かに任せるとしても、何なら任せられるだろうか。

IFAとして、様々なクライアントの意思決定場面に立ち会ってきた。私たちの仕事の半分が、クライアントのポートフォリオ管理だとすればもう残りの半分がこの意思決定について、可能な限りご本人が納得できる決断をサポートする仕事だ。

この「納得できる決断」がポートフォリオ管理と同等程度に大事なのは、理由がある。納得できる決断が、結果を左右するからだ。「納得」という曖昧で主観的なものがなぜ最終的に数字で現れるか。その理屈は上記のTEDトークでも語られているがこうだ。

  • 今の選択に納得していない
  • 他の選択肢が気になる
  • ちょっと試してみる
  • なんとなく良く思える
  • 短期的な騰落に耐えられなくなる
  • 次々といろんな方法を試す
  • どれがうまくいったのか、なぜその方法を採用したのか覚えておらず、自分の選択に自信が持てなくなる
  • 結果、状況に関わらずポジションを手仕舞う

もちろん、これは単純化したものなのですべてのパターンに当てはまるわけではない。私が見てきた中では往々にして、そうだということだ。またIFAに任せたから大丈夫ということでもない。問題は「納得感」であってIFAに任せたかどうかではない。IFAに任せてもその決断に納得していなければ、同じ結末となる。

最初に納得していると、逆に良い循環に入るのも自分の経験には符合する。たとえば先日の3月中旬のような株式市場の騰落でうろたえなくなる。焦って資産を投げ売りしなかった結果、売買に摩耗することなく資産が増えていくという構図だ。

最初の納得感を得るには一体どうすればいいのか。何を分かって決定すれば「納得した」といえるのか。

なにせ、クライアントには資産運用にまつわる意思決定ポイントがあまりに多くあるのでいくつかのレベルに分けてみよう。もっともベーシックなものから積み上げていく。

レベル1. 生活/資産運用

  • そもそも資産運用を検討するべきなのか。たとえば預貯金1,000万円あるとしたら検討を始めるべきなのか。逆に、資産運用ができるくらい生活基盤が盤石なのかどうかは、どうやって判断するのか。
  • 資産運用のほかに、有効な資産の使いみちがあるのではないか。そもそも資産運用でおカネを増やすということが自分の価値観に合致するのか。

レベル2. 資産クラス

  • 資産運用するとして、株や債券などの金融資産がいいのか、それとも不動産などの実物資産がいいのか。
  • 税効果も検討するとなると、税理士に聞くべきか。

レベル3. ポートフォリオレベル

  • 金融資産で資産運用するにしても、株式/債券の割合をどうすればよいか。オルタナティブ・アセットを入れるべきか。
  • どれくらいの頻度でリバランスするべきか。ポートフォリオのパフォーマンスの計測はどれくらいの頻度で行うべきか。
  • 業種別でもオーバー/アンダーウェイトするべきだろうか。

レベル4. 銘柄レベル

  • 期が長いが利回りの高い債券Aと、期が短いが利回りの低い債券Bでは、どちらを選択するべきだろうか。
  • 似たようなETFがあれば、どちらを選択するべきだろうか。

このように、資産運用を始めるまでに無限ともいえる選択肢が敷き詰められておりかつれぞれの選択肢にトレードオフが存在する。各選択について1冊ずつ本がかけるくらいの重たい話なのだが、銀行や証券会社にいくといきなりレベル4. 銘柄レベルのお話をされるから、どうしても投資家には納得感が得られにくいことになる。クライアントにとってはまだレベル1.の話が終わってないからだ。納得感が得られないと、やはり失敗の確率も高くなるのが現状だ。

これらの選択に直面したときが、まさに運転席/助手席問題を思い出すべきだろう。

IFAのジレンマ

では、私たちIFAはこの問題にどうアプローチしているだろうか。お恥ずかしながら、ご本人の価値観(上でいうとレベル1)にまでさかのぼってお話をできているかというと全然そんなことはない。むしろ銀行・証券と同じでレベル4くらいから話を始めて、お話する中でかろうじてレベル2までたどりつくといった感じだ。

それには2つ理由がある。1つは「そもそも、クライアントは私どもIFAにレベル1,2の話をすることを期待していない」とうことだ。クライアントはわざわざ時間を使ってIFAと話をするわけだから、手っ取り早く「儲かる話」を教えてほしい。

2つ目は、私たちIFAに時間がないことだ。クライアントとレベル1から話をしていると、時間がいくらあっても足りない。私たちIFAは口先でどんなキレイなことを言おうが最終的には金融商品の販売で生計を立てている。すべてのクライアントの人生をまるっと受け入れられるほど余裕がない。

IFA側からみた運転席/助手席問題は、可能な限り手間をかけないために以下のどちらかに収斂されてしまう。すなわち、クライアントが100%運転席にすわるパターンか、IFAが100%運転席にすわるパターンだ。

A. あなた(クライアント)の考えること、感じることがすべてです。すべてあなたの考えるとおりに私どもは動きます。

あるいは

B. あなたは、ご自身で判断する能力がありません。だから私たちがいるのです。私どもに任せるなら全部任せてください。そのほうが結果的にあなたのためです。

クライアントの満足度からいうと、実はA.のほうが高そうだが実際にはそうではない。A.ではIFAがあらゆる面倒を回避し、投資家を運転席に座らせることに徹している。これはお客様が膨大な選択肢を前に一歩も進めないことになり、IFAとしては失格だろう。B.も、仮に精緻なポートフォリオを組めたとしてもクライアントの納得度が高くない以上はクライアントに良い結果を返せなくなるという点ではダメだ。白い巨塔の財前先生の手術のように、仮に最高度の技術を提供したとしてもリスクを引き受ける方の納得感は、とっても重要なのだ。

幸せな資産運用生活を送るために投資家としてできること

ファーストワンマイル問題

物流の世界で、配達拠点から荷物を受取人にまで運ぶことを「ラストワンマイル」と言う。物流ではこの最後の区間で人手不足が深刻であることから、ラストワンマイル問題ともいわれる。
しかし、資産運用の世界ではファーストワンマイルが問題だ。すなわち上記のレベル1,2の話を相談できるプロフェッショナルが少ないからだ。IFAも銀行、証券もファイナンシャル・プランナーも下流のレベル3,4で忙しく、もっとも重要な問題であるレベル1,2をないがしろにしてきている。信頼できるプロフェッショナルに到達しさえすれば、あとは自分は助手席に座っていればいいだけ、という状態になりやすい。
この運転席/助手席問題を解決するためには、今のところはクライアントが自覚的になるしかない。レベル1,2はきっちり自分で運転席に座り、レベル3からは誰かにお願いするという姿勢が大事だろう。

最初は身近な人に相談

リサーチによると、資産運用は自分ひとりで決めずに誰かと相談したほうがうまくいくという。誰かと相談することによって、自分が気付かなかった点にも気付けるようになるからかもしれない。
身近な人に相談しながら、自分がこの問題については運転席に座れることが分かってくるだろう。

一度は、ぜんぶ一人でやってみるのもアリ

時間が十分に取れる方は、ご自身で資産運用をイチからやってみるのもいいかもしれない。自分の考えが及ぶ部分、及ばない部分がはっきりすれば誰を運転席に座らせるかがわかる。IFAに頼らず、どの営業マンの意見も聞かずに自分でやってみて、その後に考えるというパターン。

IFAにどの選択を委ねるのかは、かなり明確になってくるだろう。

QRコード https://amgwm.jp/2AMfjJ3

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