負け組企業を自動的に排除するETF, “XOUT”

“XOUT”のXは負け組企業、OUTは排除という意味だろう

ETF。

上場投資信託と呼ばれるもので、今では手数料の安い投資信託の代名詞のようになってしまった。インデックスそのもの、あるいは特定のカテゴリー(たとえばITなど)の構成銘柄をコピーしたもので、たとえばS&P500の構成銘柄をコピーしたステート・ストリートのS&P500(ティッカー: SPY)は年間手数料0.09%となっている。

こういったインデックスをコピーする投信をパッシブファンドという。パッシブすなわち受動的、ということはこの構成銘柄をコピーしただけという点にある。そもそもETFの手数料が安いのはアクティブファンドであれば行う「銘柄選択」を行わないことからだ。

パッシブの反対はアクティブだがアクティブファンドは勝ち組企業になるであろう業を人手をかけてリサーチするのでその分手数料が高い。ただし、アメリカのような情報が瞬時に公正に行き渡るような金融市場でアクティブに調べたとして他を出し抜くのは難しい。アメリカ市場では10年連続してインデックスに勝つことは不可能だと言われている。またアクティブファンドであってもどのアクティブファンドであれば勝てるかを探すのはさらに難しい。

手数料が安く、いつでも買えるしいつでも売れる(流動性がある)。そんな流れで、ETFがアクティブファンドを駆逐するようになって久しい。アメリカでは資産残高ではすでに昨年の段階でETFがアクティブファンドの運用資産残高をに抜いてしまっている。

History Made: U.S. Passive AUM Matches Active For First Time

新興国などはまだまだアクティブファンドが優勢だが、アメリカやヨーロッパ、日本などの先進国ではETFが主流となる傾向に歯止めがかかることはなさそうだ。

ETFはブラックロックのiSharesやVanguard、香港では Xtrackersなどが有名。アメリカのETFだけでも非常にバラエティに富み、先日紹介したリモートワーク関連の株式だけを集めてETFにしたWFH(Work From Homeの頭文字だろう)なんかが出てきており、百花繚乱だ。

そして、中にはアクティブファンドに近いようなETFまである。今日はそのうちの一つ、GRANITESHARES FUNDSのXOUT U.S. Large Cap ETF(ティッカー: XOUT)を紹介する。

XOUTはS&P500企業のうち、

  • 売上
  • 従業員の増加率
  • 技術調査や技術開発への投資(R&D投資)
  • 自社株買い戻し
  • 利益率
  • 業績見通し
  • マネジメント・スコア

の7つの項目で定量的に評価し、

  • 500社のうちの半分にあたる下位250社を自動的に排除
  • 3ヶ月に1度の見直し(リバランス)

をするというものだ。このETFが驚きなのは評価する項目まで明らかにしていることだ。アクティブファンドなら、仮に全く同じことをしたとしても項目までは分からない。

そして肝心のパフォーマンスだが、この1年ではベンチマークであるS&Pを上回っている。

もちろん過去1年だけで判断するのは時期尚早ではあるのだが、ETFでありながらアクティブファンドのような売買の比較検討項目を作り、それを自動化することでアクティブファンドにかかるような手数料は省いている。ちなみにXOUTの手数料率は年間0.60%となっている。

仮にこういうETFが出てくるとすれば、投資アイデアで勝負するようなETFが他にどんどん出てきてもおかしくない。また投資家のニーズに答えるために、投資アイデアと投資家とをマッチングさせるようなETFプラットフォームが出てきてもおかしくない。

今までアクティブファンドはなぜその銘柄を買っているのかは見えにくかった。ファンドのマネージャーのコメントから推測するくらいしかなかった。また、Morningstarが出しているアクティブファンドのファンドマネージャーをスコアリングし比較するようなシステムを利用するなどしてアクティブファンドにおける「良いファンドマネージャー」「悪いファンドマネージャー」を洗い出す作業も必要だった。

しかしここまで情報が透明だともはや株式市場は個別銘柄を売買するグループと、その動きに乗っかるETFとで二分される。ETFも、XOUTみたいに自分の好きな投資戦略に乗っかるか、あるいは気にいるものがなければインデックスを幅広く買うETFを選択すればよい。

ETFは投資家には歓迎されていたものの、金融業界からは蛇蝎のごとく嫌われていた。アクティブファンドを運営していれば、ETFがアクティブファンドのコストにタダ乗りしているように感じるからだろう。しかしアクティブファンドの理屈はあくまでファンド運営者側の理屈でしかない。パフォーマンスという結果を残せない以上、投資家は他のバリューを感じないからだ。

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