日経平均株価はもう上昇しないのか
株式市場には世代間、国家間で認識の違いがある。資産形成に日経平均株価を利用するなら、さらなる上昇を期待したい。そのためには米中貿易交渉の動向や追加緩和ではなく、やはり企業業績の向上が不可欠。
今回は、日本人が最も気にするであろう日経平均株価の今後の動きについて考えてみたいと思います。
《世代間》の株式市場の認識の違い
「株式市場は上昇する」という認識そのものも、実は世代間に格差があると考えられます。例えば、皆さんの中には、
- バブル期を過ごされた方
- リーマンショックを乗り越えられた方
- アベノミクスしか見たことがない方
など、様々いらっしゃるかと思います。
景気変動という考え方をご存知の方は多いと思います。経済学的には、景気サイクルには数年単位の小さな波から、50年単位くらいの大きな波まであると言われていますが、一方でご自身の1回きりの人生の中で、景気のサイクル(拡大→後退→収縮→回復)を複数回経験することは多くはありません。
一番直近は「アベノミクス」や「黒田バズーカ」などの動きを受けて、1万円くらいから2万円くらいまで大きな上昇をした日経平均株価ですから、それが皆さんの記憶に新しいかもしれません。徐々に関心が薄まっている人は多いとはいえ、まだ比較的良いイメージではあるのではないでしょうか。
ちなみに日経平均株価はバブル期は3万9,000円弱まで上昇し、リーマンショックと東日本大震災の後は1万円割れる水準まで下落したことは知っておきたいところです。
《国家間》の株式市場の認識の違い
前段の話はあるにしても、日本の場合、株式市場は自然と上昇するものではなく、「頑張って上昇させているもの」という感じが拭えません。
一方、よくある話として米国株式市場はどうかというと、投資のことを多少勉強された方であれば「右肩上がり」のイメージをきっと持っていることでしょう。これは米国国内に住む人からも同じで、それゆえに米国民が積極的に株式を通じて資産形成を目指し、実際それが達成できる、という好循環を生み出しているとされています。
足元は、米国のリセッション入りの声がしばしば聞かれていますが、S&P500が史上最高値にすぐに戻っていくのは、それだけ株価を下支えするニーズがあるということかと思います。
日経平均株価はなかなか上昇しない現状がある
投資を始めた方などは、まずは日経平均株価をご覧になりますし、少し買ってみて上がった、下がったに一喜一憂される方も多いでしょう。ただ、やっぱり継続的に上がってはくれないことに多少イライラし始める人もいるかもしれません。実際、今年に入ってからも、あまりはっきりとした動きをしていません。
ただ、長期投資を考えるのであれば、短期的な動きには左右されないことも重要です。長期的に日経平均株価が上昇すると期待できるならば買っておくというのは今だからできることでもあるのです。
日経平均株価がもう一段上昇するために必要なこと
長期投資だから株価が上がっても下がっても買いましょう、というのは一見正しいのですが、最終的に株価がどの水準まで上昇できるか、というのは重要な要素です。その意味で、企業業績がしっかりと伸び、グローバルにも展開する大企業を抱える米国株式市場の方が相対的に強さがあると考えるのは素直かと思います。
また、米国の方は量的緩和もずっと縮小を続けてきており、最近は縮小しすぎたのでは、ということでまた一部資産買入を再開しましたが、ヒストリカルに見てやはりまだ緩和余地があります。
日経平均株価がもう一段上昇するために必要なことも、やはり企業業績の伸びに尽きると個人的には思います。確かに、米中貿易交渉の見通しが明るくなって株価が上昇したり、あるいはテクニカルな分析により買いの局面にきたりという話はよく聞くようになりましたが、こうした一時的な要素を排除した上で、やはりもともとの企業価値が上昇していかなければなりません。日銀の追加緩和も大きな手は打ち出しづらいのが現状です。
日本国内は人口減少の時代ですから、内需が弱まってくることは仕方ありません。そのため、どれくらい外需を取り込んでいけるかが今後の日本の経済成長のカギになってきます。
2020年には東京オリンピック、そして2025年には大阪万博と日本という国を国際的にアピールする機会も十分に用意されていますから、企業として縮こまらず、また既存の仕組みに捉われすぎず、外国人労働者を雇う、海外のビジネスパートナーを作るなど、新しい事業を展開していくことが重要です。
経済産業省の通商白書でも足元の日本企業の海外進出動向などをまとめていますので、参考にしてみてください。
資産運用だけではない、お客様との関わり
私のお客様は、外貨建てでの運用を考えていらっしゃる方が多いですし、そもそも香港の金融機関ということもあって、あまり日本の株式を買いたいというニーズは多くありません。一方で、日本と全く縁のないところで本業をなさっている方も稀ですので、日本の景気が良いことはやはりお客様にとってもプラスです。黒田日銀総裁の言う「緩やかな景気拡大の継続」が生活実感として現れてくると良いですよね。私たち日本チームも海外に身を置くからこそ、ある種、経営コンサルタント的な立場で、お客様の事業をお手伝いできることもあると強く実感しています。