金利が高めの外貨預金は本当に儲かるのか
金利が高いからという理由で取り組む人が多い外貨預金は果たして本当に儲かっているのか、実際に計算して確かめたら。高金利キャンペーンのカラクリを知ることの重要性。
最近、日本円の定期預金は低金利政策によりほぼゼロ近くが続いています。少しでも有利な高い金利を求め外国通貨で定期預金をされている方も多いと思います。ではいくらぐらい儲けることができるのでしょうか?実際に計算してみましょう。
外貨預金の特徴
外貨預金とはその名の通り、外国通貨で預金をすることです。その預金を一定期間金融機関に預け入れる事により得られる金融商品を「外貨定期預金」といいます。
主な外貨は米国ドル、ユーロ、カナダドルなど先進国の通貨が多いのですが、最近では南アフリカやトルコ、ブラジルなど新興国の通貨で行う外貨定期預金も見かけます。
最大の特徴は現在の日本円に対し非常に高い金利です。2018年1月現在の都市銀行では米ドル3か月定期で年利2.85%なんていうのも見かけました。
日本円⇔外国通貨には手数料がかかる
いうまでもありませんが、日本円から外国通貨にするには両替が必要となります。そこには金融機関側の両替手数料がかかります。もちろん外貨から日本円に戻す際にもこの両替手数料はかかります。この手数料は金融機関によりマチマチではありますが、一般的に窓口よりもインターネットで行う方が安い傾向にあります。この両替手数料により金融機関は利益を顧客からもらっています。
実際に外貨預金は儲かるのか計算してみよう
例えば日本円(JPY)100万円を米ドル(USD)定期預金に預けてみたことを想定して計算してみます。ある金融機関の提示された金利は年利2.85%、3か月間のみです。キャンペーン金利と表示されていましたので非常に魅力的な金利ですね。
両替手数料は日本円→米ドルで1米ドルあたり50銭。その逆も50銭となっています。つまり往復で1円となります。
以下の計算は次の想定で行っております。
・1米ドル=100日本円。
・為替は変動しなかったと想定します。
・端数は下3桁で四捨五入します。
・満期後は日本円に戻します。
(まずは日本円を米ドルに両替)
1,000,000円÷100.50円=9950.25米ドル
※100円+両替手数料の50銭=100.50円
(利息の計算)
9950.25米ドル×2.85%(0.0285)×90日÷365日=69.92米ドルの利息
※3か月定期ですので90日としています
(税金の計算)
利息に対し、20.315%の税金が自動的に差し引かれます。
69.92米ドル×20.315%=14.20米ドルの税金
(税引き後の利息)
69.92米ドル−14.20米ドル=55.72米ドル
これが実際に手に入れる事ができる利息
(元金+利息)
9950.25米ドル+55.72米ドル=10005.97米ドル
お、米ドルベースで元本以上になりました!!
しかし、ここから日本円に戻す作業を行います。
(米ドル→日本円に両替)
10005.97米ドル×99.50円=995,594.02円
※100円−両替手数料の50銭=99.50円
結果は元本割れ?!
為替レートは1米ドル=100円で変動しなかったにも関わらず、しかも金利が年利2.85%も付いていたのに3か月間で約4,400円近くも元本を割ってしまいました。。。いくら外貨とはいえ、定期預金と名が付いて金利も高かったはずなのに…と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。順を追って計算してまいりましたので原因は言うまでもありません。もちろんこの途中で為替が以前よりもドル高円安の方向に動いていれば利益が出ていたことでしょう。しかしもしその逆であれば…さらに損失が拡大しているという事にもなりますね。
それでも外貨預金を持つ理由があるか
預金保険制度の対象外であることを忘れない
最近では日本国政府の借金などの報道により日本円に対し不安を持たれて、その結果、外貨預金を持とうと考えていらっしゃる方も多いようです。しかし預け先の金融機関に万が一の事があった場合には、この「外貨預金」などは国が定めている預金保険制度の対象外であるという事も決して忘れてはいけないことです。このようなバックストップは海外で口座を持った場合、その国の中では提供されることがありますから、香港へ来てHSBCなどに口座開設をしていく理由はここにもあるのですね。
金利が高いことは通貨の信用力が弱いことの裏返しであることを知っておく
同じように、選択する外国通貨の信用力なども非常に大切です。特に新興国などの外貨定期預金で提示された高い金利には必ず何かしらの理由があります。米ドルやユーロであればそこまで為替レートは動かないかもしれませんが、新興国通貨の場合、3ヶ月もあれば10%くらいは為替変動があってもなんら不思議ではありません。為替手数料だけでなく、実際の為替変動リスクは金利での儲けをあっという間に吹き飛ばすくらいあることを決して忘れてはいけません。特に金利が高い新興国通貨は信用力がなく、放っておいても弱くなりやすいのです。通貨を発行する国の経済や政治の状況を把握しておくことが重要です。
なぜ、日本円を扱うはずの日本の金融機関がわざわざ新興国の外貨定期預金を集めるのか、その理由は金融機関が儲かるからでしかありません。預金する側が直感的に金利が高くて儲かる!と思っていても、実際には上記のような結果となってしまう可能性もあります。安全安心だと思っていた定期預金といえども金融商品には何も変わりはありません。実際にご自身で手数料などを計算の上、慎重に検討してみることが非常に大切です。日本の金融機関でよく見る「高金利キャンペーン」はそのカラクリをよく知って、上手に利用できるといいですね。