国際金融センターってどんな街? 金融の街、香港に問う
国際金融センターという言葉はよく聞くが改めて考えてみると何のことか分かりづらい。ただの金融の街ではないし、優秀な人材を集めればいいというものでもない。グローバル金融センター指数も結局は似たり寄ったり。
香港で富裕層担当の運用アドバイザーをしております、宮脇健です。ここ最近のデモで、香港の国際金融センターとしての地位が危ないだの、それでも大丈夫だのという報道は増えたと思います。覇権の奪い合いをしている感が強いですよね。でも、そもそも国際金融センターって何だっけ?と思っている人が多い気がしますので、私なりに答えを整理してみます。
Q1. 国際金融センターって銀行がいっぱいある街なの?
正直言うとNo。
でも何もかもなくなっても銀行だけは残るかもしれないですね。金融が主力産業であるというのは確かだからです。
オフショア地域として有名なケイマン諸島なんかもただの穏やかな島ですが、外国銀行の建物が並ぶ通りが確かにあります。
ちなみに香港は銀行もそうですが保険会社も数多あります。
Q2. 金融の街といえば、丸の内かな?そんな感じ?
それはYes。
日本で言うならば国際金融センターに最も近いのは東京丸の内・大手町だというのは間違いないですね。
東京証券取引所がありますし、国内の主要な銀行が軒を連ねています。金融とはお金の流れを司る仕事なので、お金が流れてないところにいても仕方がないですから。日本の首都、東京のど真ん中にそういう街があるのは不自然ではありません。また、企業同士の取引も多いとなれば、自然と物理的なオフィスを近くにしたくなります。そこに金融の街が生まれる、ということ。
香港にはアジアのヘッドクォーター(本店)機能が置かれているケースが多く、また企業がIPOをして資金調達する場でもあります。
Q3. でも丸の内は国際金融センターってイメージはないよね?
それもYes。
証券取引所があるだけでは国際金融センターという呼ばれ方はしません。
確かに、大きな証券取引所があることはその地域の経済活動が活発であることを意味しますが、例えば、築地の魚市場をイメージしてもらいたいです。魚を買いに来るなら築地(今なら豊洲)に行けば良いものが揃うでしょう。ただし、国外からわざわざ買い付けに来ることまでは想定していないかもしれません。(例えに使っている魚には鮮度の問題があるという点は置いておいても、)近場で取れた魚だけでなく、外国の魚もとにかくピチピチしていて、それをさらに外国人でも買い付けに来る、そういう状態が国際金融センターなわけです。
Q4. 結局のところ、国際金融センターってどんなところ?
国内外の金融関係者がとにかくワイガヤしてるところ
って言った方がいいんじゃないかと思います。銀行、証券、保険、金融法務、国際税務、投資家といったプロが揃う場所になっているわけです。丸の内に部分的にYesと言ったのはここが大きいですね。金融と一口に言っても窓口で個人のお客様を相手にするだけが金融ではありません。企業間の取引を円滑にしたり、外国為替の取引を行ったりします。
香港で日本人をガバッと集めると分かりますが、大概はあなたも金融、私も金融、ときどき不動産、みたいな挨拶になります。
もちろんお互いに国際金融センター内で協業をすることはありますが、どちらかといえば国外向きの仕事をしていることが多くなりますね。
国際金融センターとはいわば金融のハブ(=連結点)なのです。
一般の方々にとって金融取引のイメージは預金であり融資でしょうか。いや、もちろんそれもありますが、外国資本のアクセスがしやすいとか、国際的な資金の流れをチェックするシステムがしっかりしているとか、英語で全て行われているか、税金がかからないだとか、手数料が低いだとか、法律が整っているだとか、国際金融取引には何を置いてもスピード感が大事なので、空港のイミグレのように待たされては全く意味がありません。
国際金融センターでいるのには実は域内経済そのものが活発である必要はありません。ハブは障害を徹底的に取り除くことで巨大な流れを生み出しますから、外から来た水を中を通して、また外へ流せばいい。利益と税金は自然とそこに落ち、ハブとしての機能が国を潤すということです。
Q5. これから国際金融センターになっていく都市はあるのか?
アジアの国際金融センターとして今広く知られるのはシンガポールと香港でしょうか。
シンガポールも香港ももともとは港湾都市だったので、物流のハブとしての発想がありました。それが目に見えぬ金融取引のハブとしても開花したわけです。東京もそこに負けじと頑張っていますが、今時点ではそうなってはいません。
アジア地域では、いわばネクスト香港として、中国の深センや上海が台頭してきているとしばしば言われます。巨大な中国国内経済=中国株式市場を抱えるこうした市場は確かに存在感を増してきています。
しかし、一方で先に話したような「国際金融センター」としての地位を築くにはまだ時間がかかりそうという感触もあります。例えば中国の深センは個人所得税の15%までの引き下げを通じて、優秀人材の取り込みなどを始めましたが、それは国際金融センターに向かうために十分なことでしょうか。街として整っていっていることは確かに感じますが、金融関係者がワイガヤするにはクリアな法体系の整備など課題はそれなりにあります。
最後に、グローバル金融センター指数(GFCI)を見る
色々と個人的に考えてみましたが、より一般には、実は英国のシンクタンクZ/Yenグループが半年に一回発表する「グローバル金融センター指数(The Global Financial Centres Index)」というのがあったりします。2019年は9月19日に発表したので参考にしてもらいたいです。何でも指数化してみるというのは面白いですよね。香港はニューヨーク、ロンドンに次いで基本的には3番目。そしてギリギリでシンガポールが4番目。
ただ、総合点のための点数稼ぎになると最後は似たりよったり感が出てきてしまうような気がして、順位は確かに大事だけど、あれ?点数は大差ないのかな?という気もしてきます。総合点では比較的できない、都市の個性はやっぱり伝わりづらいのだと思います。
皆さんにとって香港とはどんな街ですか?
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