ポートフォリオにおける金(ゴールド)の役割

金価格はどこまで上昇するか。足元の上昇の背景と金保有の目的、そしてどのくらい金をポートフォリオに含めるべきかを考える。

”金”とはどういう資産なのか

資産家の自宅には金地金(ゴールドバー)があります。ただ、それは価格が上昇したときに売るために置いているのでしょうか。

投資におけるリターンは「キャピタルゲイン」「インカムリターン」の2つに分類されます。金はインカムを生まない商品なので、損ではないのか、という疑問が湧きます。しかし、金の保有目的は「資産保全」であって、そもそもキャピタルゲインやインカムリターンといった、リターンではないというのが一般的かもしれません。

とはいえ、金の価格が一定というわけではないことも覚えておきたいことです。したがって、資産の大半を占めることはリスクである一方、個人投資家としては持っておきたいアセットではあります。

金はどれくらい持っておくのが適切か

金を含めた安全な資産運用の例として、アメリカのハリーブラウンが提唱したパーマネントポートフォリオという洋書を私も読んだことがあります。短めの読み物なので、興味がある人は手に取ってみるのも良いかもしれません。

そのなかでは、

「株式」「債券」「現金」「金」をそれぞれ均等に25%を保有

することとしています。

現金を持っておきながら、さらに25%も金を持つのかというのが正直な感想ではないでしょうか。しかし、資産保全という目的のためであればリターンを諦めてこれくらい保守的になるべきということかと私は思っています。

一方で、リターンを少しでも多く求める投資家にとってリターンを生まない資産を25%を持つことは現実的ではないでしょう。それに、金融市場の発展により、ゴールドバーという現物ではなく、金ETFという形で、気楽にポートフォリオに金を含めることができるようになっていますから、金というアセットの長所は上手く利用したいものです。

今なぜ金価格は上昇しているのか?

上記は金価格のヒストリカルチャートです。ここ数ヶ月で金価格が上昇しているのは、シンプルに金が魅力的だ(あるいは他の資産より金がマシだ)と思われているからです。

その要因は、あげればキリがないのですが、3つほどにまとめてみます。

①米中貿易戦争による景気減速懸念

 景気後退局面においては債券の魅力が上昇するのと同じように、安全資産である金にも資金が流入します。市場のボラティリティが上昇する局面ではより安定した値動きをする資産に注目が移ります。

②債券利回りの低下

 金はもともと金利がない資産ですから、債券の利回りが下がると、デフォルトがない資産としての金はより魅力が相対的に増します。先日のブログでも書いたとおり、今の時代はマイナス金利ですから、金利がないことが逆に魅力になることもあります。

③地政学リスクの顕在化

 最近は米中貿易戦争が注目を浴びていますが、近年リスクオフのシナリオとしてよく挙げられるのは、地政学リスクです。例えば、ホルムズ海峡付近でのイランの活動活発化などですね。

今から購入することは高値掴みなのか?

インカムリターンがないということは、将来得られるリターンの逆算値として価値推定ができるわけではないので、上昇幅はいわば無限大で、需給のみによって動くことになります。

ではどのくらい上昇余地があるか、というと金価格の推移だけみてみると、一つの目安は2011年につけた過去最高値(1オンス1917ドル)にはなるでしょう。当時の日経新聞の記事も見てみると面白いです。ただ、今、金価格は当時の水準に向かってはきているもののまだ距離はあり、そして金融危機が起こっているわけではありません。したがって、景気後退が顕在化するなら、さらに上昇する余地がある、と見ることはできます。

一方、そもそも保有目的が資産保全ではなくて、安く買って高く売ることだった場合、比較的短期間の間に十分値上がりしましたので、利益確定すること自体は正当化できます。

色々な目線から見た金へのニーズ

チャイナニーズ

もちろん日本人の資産家の方でも金地金を保有されている方は多いです。ただ、上述したようなロジカルな理由だけではなく、やはり保有するものだ、という意識がそうさせているところは多いかと思います。経験に裏打ちされている、といえばその通りです。一方で、中国人の資産家の金地金への信奉度合いはこれを上回ると言われています。日本円は国際通貨第3位としての地位を確立したから、今の時代で日本円を持ち続けることに恐怖感を抱く人は少ないでしょう。一方、中国人は香港の不動産を買うなど、国外に資産を移したがっているように、通貨は脆弱であることも意識しています。こうした心理的な要素に加えて、人民元の国際化にも一役買っているのが金であることが、World Gold Councilのレポートでも指摘されています。

中央銀行ニーズ

ここ数回のブログで、通貨制度について何度か触れましたが、各国の中央銀行は金の意義を軽視していません。かつてのように金本位制が取られているわけではないのですが、法定通貨の価値の最後の拠り所となるのは金になりうると考えられるからです。安全と言われる国債ですら、デフォルトする可能性はゼロではありませんが、金にはデフォルトという概念がないからです。米ドルという外貨準備を潤沢に積むと同時に、金の保有も増やすインセンティブがあります。

まとめ

こうしてみてみると、資産家の方々が金を保有されている理由は「とりあえず保有するものだ」と思っていらっしゃるケースはしばしばありますが、実に理にはかなっています。

一方で、かつてよりもずっと様々な通貨に分散して投資をすることもできますから、金保有を盲信する必要もありません。上手く、ポートフォリオの一部として利用できると良いですね。

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