香港が年配者向け国債(Silver Bond)を発行

香港の年寄り債(Silver Bond)にみる世界標準の金融商品の利回り。対象は香港居民、65歳以上に限られるが、利回り3%で香港居民の心は動かない。

新しい香港の政府債券「Silver Bond」

香港は政府財政が黒字。なので基本的には日本のような赤字国債を発行する必要がありません。しかし香港政府は方針として「香港の債券市場の活性化」を目指し、ここ数年で積極的、主導的に国債を発行しております

その香港政府が発行している国債に新しいラインナップが加わりました。その名も年寄り債、Silver Bondです。最低利回り3%を保証しています。

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そもそも債券はなぜ発行されるのか

債券とはいわば発行体の「借金」です。一般的にそのリターンは信用格付けが低ければ低いほど高い傾向にあります。理由は「貸し倒れ」になる可能性が高いからです。発行体の信用格付けが高ければ貸したおカネは返ってくる可能性が高いと思われます。従って利率が低くてもみんな貸したがります。一方、発行体の信用格付けが低いところは貸したおカネが返済される可能性が低いとみられます。ですので「これぐらいの利率はもらわないとワリに合わん」といって利率が高くなる傾向となります。もちろんその他の政策金利、政情、発行通貨、流通量などの要素も加味されますので全てがその通りになるとは限りません。

ちなみに香港の格付けはAA+、手元のブルームバーグ端末で確認しますと発行する国債は満期によって異なるもののイールド1-3%で取引されています。

AA+は最高の格付けAAAから1ランク下がりますが非常に高い格付けであることにはかわりありません。

Silver Bondは最低金利3%保証

香港のように信用格付けの高い国における国債はその安定性から通常は誰もが欲しがるため利回りはかなり低めで流通している事が多いようです。香港以外にもシンガポールやスイスなどの国債が低利回りで流通しています。

冒頭に記述しましたように香港は借金がありません。以前に香港政府は「この先2年間の政府歳入がなくても政府運営していける」と宣言しました。これくらい自信があるので従って「貸し倒れ」リスクは低いとみなされます。
しかし実は今回発行された香港の債券は「最低金利3%保証」なんです。3%と聞いて高い低いと感じ方は人それぞれですが、日本国債10年0.1%と比較すればその高さが非常に高いと感じてもらえるかと思います。もしくは定期預金の金利とも比較すればその高さは非常に魅力的に感じるのではないでしょうか。この商品の実際の金利の決定は物価上昇率などの要素が加味さ、どちらか高い方が適用される事になっています。しかしいずれにしても最低年利3%は香港政府が保証してくれるのです。

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香港在住以外の人でも買えるの?

残念ながらこの魅力いっぱいの国債はまずは香港居民であることが必須となります。さらに現在65歳以上(1953年12月以前に生まれた方)が対象です。つまり香港のお年を召した方々への「政府黒字還元」の意味も込められている性質の債券なのです。

しかしこれと同時に香港はRetail Bond Issuance Programmeという日本でいうところの「個人向け国債」のような債券も発行しています。こちらは香港市場に上市しますので香港居住者以外の方でもHSBCやスタンダードチャータード銀行、中国銀行などの市場で購入する事は可能です。

香港では年利3%前後の商品はゴロゴロ

香港では年利3%前後の商品というのは実はゴロゴロしているのです。

「どうして日本とこれほどリターンがかけ離れているのか?インチキなんじゃないのか?」という質問を受ける事があります。この質問に対する答えは大変シンプルで、

世界の金融商品は米国債が基準となる。米国債10年利回りは現在3%前後。日本国債10年利回りは0.1%前後なので日本の金融商品の利回りはこの0.1%が基準となっている

ここ香港ではこのように政府が発行体となっている金融商品でさえも年利3%保証… といったようなものがたくさん存在しますので、一般企業である生命保険会社など金融機関はこれに対抗すべくさらに高い金利や流動性、保障などの魅力を高めた商品開発に余念がありません。

利回り3%では香港居民の心は動かない

ただ香港ではこの3%程度の利回りではあまり心を動かされないのが実情です。実際に今年からスタートした「香港年金」というこれもやはり政府がテコ入れした制度が発足しましたが、利回り4%で運用、死亡時でも元本割れ無し(死亡時は元本が割れないように残金を受益者に支払う)といった日本であれば「即完売」すると想像するような商品が出たにも関わらず、香港では定員割れを起こしています。これは香港居民が年利4%では「足らない」という事を示しているほかにありません。「日本とは全く違うから」といった一方的なモノサシだけで判断してしまうのは非常に良い機会を逃してしまう可能性もあるという事を知っていただければ、世界中に溢れている良い金融商品にめぐり会えるかもしれませんね。

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