年利4%の金融商品、香港年金という商品から考えると

香港の2つの年金である「MPF」そして「香港年金」からみる政府主導の金融促進。

現在香港には主に2種類の年金システムがあります。

1. MPF

一つはMPF(Mandatory Provident Fund、強制積立年金)と呼ばれる日本の年金制度に相当するもので18歳以上65歳未満の従業員は毎月給与から一定額を拠出し、自分の選択した金融機関(銀行や保険会社)の口座で自分自身で運用指示を行います。例えば、米国株式ファンドに50%、ヨーロッパ株式ファンドに30%、債券ファンドに20%といった具合です。

自分で選択した金融機関に、自分で選択した運用スタイルで運用するので同じ年齢の人が同じ掛け金を運用したとしても将来の年金受給額はそれぞれの運用結果によって異なることを意味します。

これは日本と香港では年金の大きく制度設計が異なることに起因します。日本は「世代間助け合い」すなわち若い現役世代が年老いた引退世代を助けるという制度ですが、香港はそういった考え方はなくあくまで拠出した自分の投資金は自分の年金にのみ使われる制度であるのです。

また日本の場合は「年金積立金管理運用独立行政法人」という組織(= 他人)が皆さんの年金を皆さんに代わって運用するシステムですね。香港は運用会社を自分で選択し、しかもその中からリスクレベルに応じて運用スタイルも自分で選択しなければなりません。そういった意味から香港の人と日本の人では若い時から資産運用に対する経験が全く異なっているとも言えるでしょう。日本では「他人」が運用するので失敗した時には文句を言いますが、香港では自分自身の決断ですので失敗しても文句を言える相手がいません。

2. 香港年金

香港のもう一つの年金システムは2018年に導入されました「香港年金」と呼ばれる香港政府が導入した金融商品です。この商品は60歳になると申込資格が取得でき、一括で資金を投入することにより証券発行後からその投入資金に応じて一定金額の年金が毎月入金されるという仕組みとなります。最低金額は5万香港ドルから最高金額は300万香港ドルまでです。

もし仮に年金受給者が早く死亡したとしましても掛け金の105%は必ず保証される仕組みとなっており、未受領の残額は残された家族へ死亡保険金として給付されることとなります。そういった意味では元本は必ず保証された素晴らしい年金システムと言えるでしょう。

パンフレットによりますと、例えば男性60歳の時点で100万香港ドル(1香港ドルを15円と仮定しますと約1,500万円)でこの香港年金を申し込んだとすると、毎月5,100香港ドル(約76,500円)が毎月年金として生涯支給されます。この方の損益分岐点は約17年となりますので17年以上生存したとすれば本人が元を取れるかたちとなります。

しかし先にも申し上げましたがもし万が一この方が早期に死亡してしまったとしましてもトータルで元本を割らないように残された家族へ死亡保険金として給付されますので家族単位としてみれば決して損をすることは無い金融商品となります。

この商品が香港政府より発表された会見によりますとこの商品の収益率は約4%とのこと。

この商品が香港政府より発表された直後、民間の保険会社はこの商品に対抗すべく様々な切り口の年金関連商品が開発されました。なにせ格付けの非常に高い香港政府(スタンダード&プアーズAA+)が肩入れした金融商品が年利4%近くで運用されるのであれば、民間の商品に大きなプレッシャーを与えたからです。香港政府はこの時の会見で「銀行や保険会社をはじめとする金融機関に適正な競争を促すことができる」と言っております。

これは消費者にとっては非常に喜ばしいことであり、より良い選択肢が増えたことを意味します。このことからも香港の金融業界が正常で健全な競争原理がきちんと働いていることを示している良い事例だと感じました。

香港政府が金融商品開発の先鞭をつける

現在、香港の民間保険会社はこの香港年金に堂々と対抗できる素晴らしい金融商品を次々と開発・販売をしています。例えば契約者変更だけでなく、被保険者(保険金支払いのトリガーになる人。生命保険であれば被保険者が死亡すると保険金が支払われる)すら変更が可能で、それも何度も変更することができる、といったようなアメリカや日本ではまったく考えられないような、既存の概念を覆すような素晴らしい金融商品も開発されました。行政が金融商品開発の先鞭をつけ、民間がそれに追いつき追い越せとなるのは香港以外では考えられないことではないでしょうか。まさに金融立国香港のとしてのあり方ここに極まれり、です。

時々お客様より年利3%-4%の元本保証の金融商品なんて日本ではほとんど見ないから「詐欺ではないか」「もしかしたらリスクの高い商品なのでは?」と言ったようなご質問や疑いを持たれるケースもありますが、上記の香港年金システムを見ても金融立国香港では年利3-4%近くの元本保証商品が決して「おいしい話」や「詐欺まがい」の商品ではないということがご理解いただけると思います。特に日本を基準としてしまう自国バイアスに近いものが他国よりも相当強いのかもしれません。

香港人のマネー感覚

ここからは余談となりますが、この香港年金が発足した時、申込は抽選であったのですが実は抽選割れをしまったようです。(元本を保証するには一定のスキームを構築しそのスキーム内で運用をするため購入可能人数に制限をつけることがあります)抽選割れ、つまり申込者全員当選。香港在住の申込該当者は年利4%では魅力を感じなかったということを示しています。

これは香港が常に年3-4%のインフレに直面しているということ(つまり4%ぐらいでは防衛が出来ない)と4%ぐらいの年利であれば株式など自分自身の腕で運用で出来るといったような自信があることが背景として考えられます。

それを象徴するのが朝9時から午後4時ぐらいまで香港のテレビを観てもらえば分かることですが、この時間帯は多くのチャンネルで株価や経済の番組を放映しております。ニュースや娯楽番組よりも断然株式に関する情報の方が圧倒的に多いのです。さらにニュースの放映中も常に株価や為替、金価格などあらゆる金融情報がテロップで流れていることを観ていただければいかに香港の人々がこういった金融商品に日々注目しているかがご理解いただけると思います。

この時間帯は電車の中でもバスの中でも多くの人が株価を携帯端末でチェックしています。この光景を見ればきっと香港がおカネの街であることを肌で実感できることでしょう。次回香港へお越しの際には是非とも注意してみてください。

最後にこれはあくまでも私見ですがもし日本でこのような商品を販売したとすれば、日本の人々はこの商品の申込に殺到し恐らく高倍率の抽選になることでしょう。以前日本の有名企業S社が社債を販売した時の状況を見れば想像するに難くはありません。格付けからすれば決して高くない利率であるにも関わらず殺到、即完売になってしまいました。私たち香港の日本人アドバイザーはその心理を良く理解できますが、香港であれば容赦なくリスクとリターンのバランスが非常に悪いと評価され、恐らくそのような状況にはならないどころかダブついてしまうと予想できます。

これからの時代、情報はチカラです。是非とも皆さんのアドバイザーに世界のおカネの動きについてディスカッションをしてみてはいかがでしょうか?

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