IFAは法人(中小企業)にとって資産運用での良きパートナーになり得るか
法人(中小企業)の資産運用の特徴を3つほど紹介し、法人がIFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)を利用するメリットについて考える。社長の一存で決めるのではなく、事業資金の確保や事業承継、退職金準備などの相談役は必要。
富裕層担当のアドバイザーをしております、宮脇健です。以前の投稿で、どういうプレイヤーが資産運用業には存在するのか、そしてIFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)の役割についてお客様が勘違いしやすいポイントなどを紹介しました。
今回はもう少し範囲を絞って、法人(中小企業)のお客様から見て、IFAは良きパートナーになり得るかという話をしたいと思います。
プライベートバンクのお客様は個人であり法人である
まず、
「プライベートバンクのお客様=個人の富裕層」
というイメージがあると思いますが、富裕層の方というのは概してご自身が代表する法人をお持ちのことが多いですから、お話を進めていく中で、対法人での契約になることがしばしばあります。
法人の代表を務められる方は、常に頭の中に①ご本人はもちろんご家族のこと、②法人のことが気にかかっていらっしゃいますが、実際に話を進めていくなかで、できれば前提としてどちらの話を考えているのかが早い段階で分かると有難いです。といっても、両方が同時に絡んでくることは大いにありますから、今回はアドバイザーが気にする法人資金の特徴について3つほど触れたいと思います。
法人の資産運用の特徴
① 運用方針を取締役会などで決める
少なくとも代表者以外の財務担当者であったり、あるいは共同経営者の方への説明が必要となることが多いです。また、一括りに法人といってもそれなりの規模になると、その資金の運用方針は取締役会などで決定することが多くなるかと思います。よくある規定としては、「絶対に元本が目減りしない」ことを掲げるケースがあります。この場合、ほぼほぼ定期預金、もう少し進んで債券で運用するしかないということになりそうです。逆にこれに縛られて、債券だからといって証券会社から仕組み債(という名の高リスク商品)を買わされて大損したというニュースは後を絶ちません。冷静になって考えてみれば、会社の規定の内容は、”債券で運用すること”でしたか?いや、そうではなくて”リスクを抑えること”であったはずなのです。経営者はしばしば冒険家でもありますが、資金の性質として一般的には「保守的」であると言われる理由を代表者の方もまたよくよく考える必要がございます。個人の資金は個性たっぷりの運用でも良いとは思いますが。
② 資金寿命は基本的に長いが、大きな資金流出もある
法人には寿命がありません。財団などの形態になると資産寿命の長さはさらに顕著です。代表者のライフプランに左右されない運用が可能なので、より長期的な目線に立つことができ、場合によってはリスクテイクの余地を作ることができます。
ただし、法人資金の場合、設備投資や事業投資、つまり大きな資金流出が発生することがあります。そういった計画は明日明後日というよりは数ヶ月先、あるいは数年先といった形で組まれますから、私たちもそういった情報を予め共有いただき、それに合った運用内容を考えます。
③ 退職金の準備が課題になる
個人の場合も老後の資金を用意しますが、法人においては、誰にどのような退職金をいくらくらい用意するか、ということも課題に挙がってきます。ご自身が一代で築き上げた会社を離れる算段をするのもなかなか腰の重い話だとは思いますが、どのように後継者に繋げて二代、三代と経営を続けていくのかもまた重要なことです。退職金が準備できたら辞めなければならないというものでもありません。でも、逆に退職金が捻出できないと辞めたくても辞められないことはあるのです。
以上は、個人資金と法人資金の大きな違いでもあるのですが、これら3つの特徴に対してそれぞれ、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)としての弊社ができることを挙げてみます。
IFAが法人資金の運用するにあたっての強み
① 共同経営者や取締役会での説明ができる
個人資金の場合であっても、ご家族に運用計画の共有をしますが、特に経営者の場合は、他のパートナーに対して、より客観的にそれを示す必要があります。社長が行なった運用であっても、社長の一存で決まったというよりは理解を得られやすいですし、セカンドオピニオンをとったという事実が何より重要です。仮に経済環境の説明などの軽い話でも、外部アドバイザーの意見を聞くことは、利害関係者が複数いるときには有効です。
② 本業の取引先でない資金の預け先となることができる
IFAの顧客セグメントはいわゆるプライベートバンクと被っているのですが、IFAを利用するメリットはその名の通り独立性(Independence)にあります。IFAはお客様の資金を自社口座で直接お預かりすることはありません。もちろん、銀行は大事な取引先だとは思いますし、おんぶに抱っこなところに出会えればそれはそれで経営を上手く行かせてくれますし、大規模なM&Aなどになれば専門の部隊を用意してくれるでしょう。しかし、”懐具合”を知りすぎていると、大胆な意思決定には賛同してくれないかもしれません。そういう意味でIFAは使い勝手の良い”隠れ金庫番”的存在になれようかとは思います。イメージとしては以下になります。
③ 複数世代に渡ってお付き合いすることができる
しばしば「プライベートバンカーは三世代に渡ってお付き合いできる」存在と言われますが、現実には社内での収益プレッシャーやあるいは銀行そのものの再編などに巻き込まれることがあります。もちろん、長く勤め上げる優秀なバンカーを私も複数知っています。IFAもまた、”転勤がない仕事”として、お客様の退職計画、そして次世代への事業継承などを長い目で支援することが可能です。場合によっては、後継者探しをお手伝いすることもあります。
IFAは資産運用のアウトソースであり、相談役でもある
もちろん、ソフトバンクのように自社を投資ファンド化して、投資そのものを本業とするようなケースもありますが、多くの場合は、本業の利益、経営を補完する形で資産運用を行なっているのが現実でしょう。これまで見てきたとおり、法人資金の運用において、IFAができることは意外とあります。
いわば、資産運用機能のアウトソースだとも言えますし、セカンドオピニオンを提供する外部の相談役と言うこともできます。法人のお客様で、私の方で何かお力になれそうなことがあれば気軽にこちらからご相談ください。