株価暴落に備えて、現金比率を高めるべきか

株価が上がれば上がるほど、一方で現金比率を高めたくなるという心理に打ち勝つには。肝心なのはリスク量のコントロール

アドバイザーの宮脇健です。ポートフォリオを組む上で現金比率をどれくらいにすべきかという話は何も新しい話ではないのですが、実は最近はお客様からよく聞かれることでもあります。どうでしょう、株価が少しでも下がると不安になって、でも上がると一瞬嬉しいもののまた不安になって、と…いうループを繰り返してはいないでしょうか。

お客様がこの質問をなさる理由を聞いてみると「株の大暴落が間近だと言う人が増えていて、怖いから」だというのです。このようにおっしゃる方はよくニュースを観たり聞いたりされている方なんだな、と私たちアドバイザーは思います。株が大暴落”した”からなぜ大暴落したのかと質問なさっているわけではないですからね。ただし、怖いというのは感情的な要素ではありますので、「投資家として具体的にはどうしたいのか」に繋げるために、どのように頭の整理をすべきか、ということを考えてみたいと思います。

株か現金かという極端な投資構図からの脱却

まずはじめに、投資家としての自分が先入観に陥っていないかを落ち着いて考えてみましょう。個人投資家にとっては「株 or 現金」が投資であるという構図が頭の中にできあがっているときがしばしばあります。つまり、「攻め=株、守り=現金」という二者択一なわけです。

例えばバブル期くらいに現役だった方々は株”券”が存在したことを知っているでしょう。一方で残念ながら今の若者にとっては株とはネット証券でボタンをポチッと押して買うものです。それでも、証券会社の担当がついていることを嬉しいと思う人もいるようですが。また、日本国債を買って紙の証券を金庫に保管した人(あるいはどこに保管したっけ?と悩んだ人)もいるでしょう。一方で今の若者でほとんど金利の付かない日本国債を買う人はほとんどいないように思いますし、買うにしてもやはりボタンをポチッとですね。

また、ご家庭で語られるご両親の投資話は、ご子息の投資認識にも影響を与えると個人的には思っています。若かりし頃の株の儲け話はやはり名言も残しましょう。それでも、時代の大きな流れは投資信託、そしてETFへ向かったこともまた捨て置くべきではありません。結果として、一昔前に比べれば、株か現金かという構図ではなく、「”リスク量”を自在に増やしたり減らしたりはできる」ようになってきています。

まずは、現金比率について考えるようになった人が歩むべきいくつかの選択肢を考えてみます。

1 何か状況が変わったのかを考えてみる

そもそも、ニュースで流れてくる情報を噛み砕くことができれば、まずは「怖い」という感情から抜け出すことができる人もいるのではないでしょうか。そこから「株価が下落する」と思える要素があるのであれば、まずは株から抜け出す(=株を売却する)ことは一つの選択肢となります。あるいはいつ、どういう理由で下落すると考えるのかを明確化することも重要です。ただし、これは経済分析の領域だったりするので、誰もができるわけではないとは思います。株価が上昇するのにもちゃんと理由がありますが、多くの人は「株は上昇するものだ」と思って買っています。投資の基本は”買い=Buy”から、だからですね。ただし、上昇する理由がなくなれば上昇しないという当たり前の展開が待っていますので、状況の変化には対応しましょう。

2 株式をショートする

株か現金かというよりも実はもっと直球勝負な方法ですが、株が下落するのならショート(売り)ポジションを作ればいいじゃないか、という発想です。ヘッジファンドなんかはこれを狙うことがあります。玄人にはいい手法ですが、リスクはあります。下落しないかもしれないし、下落するにしてもそれが数日後か数年後かは分からないからです。繰り返しますが、皆さん基本は”買い=Buy”そして”保有=Hold”です。冷静さを取り戻りましょう、現金比率について悩むあなたは、きっとリスク回避的ですから、株式をショートするという選択肢は少し違うのではないでしょうか。

3 逆にどういう資産ならいいのか

一足飛びに現金に向かうのではなく、もう少し取れるリスクはないかを考える方法です。

株式にしても、景気後退局面に強い業界を選ぶとか、あるいは債券を選ぶとか、もっと安全なものでも、短期債のようなものにするとか、色々と選択肢自体はあります。ベースとして、非稼動な資産を持たないことは大事です。お金はお金を生む存在だからですね。本当は金利が高ければそのことを日々実感できるはずなのですが、今はその感覚が薄れてしまっています。1年定期預金で金利が0.5%と聞いたら、ジュース1本くらいの利益なら考える時間の方が無駄だ、という人は多いでしょう。でも5%だったらまともに取り合う気はしませんか。だから、ベースは正しいとして、あとはそれをやるのにどれくらい手間がかかるかということに帰着します。一度、現金や預金に落ち着いた資金はなかなか投資には向きません。だから、現金は基本的に少ない方が良く、常に何かに替えておくことは理想です。世の中には様々なリスクの商品が存在するのだから、運用→株式と思う必要もありません。まぁここで今は債券も高いじゃないかという話が出てくるのが難しいところなのですけれど。

なんのために現金を持つのかを意識すること

それでもやはり現金を持つことにするあなたは、なぜ現金である必要があるのかを意識しましょう。日常的に現金を持ち歩くときはどんなときでしょうか。

・突発的な出金が予定されるとき

お財布に現金を入れておく感覚に近いです。もちろん、デビットカードやクレジットカードでなんとかするというパターンもありますが、現金は一定量は必要ですし、必要だと思う量+バッファーを持っている人が普通でしょう。

・何か買う予定のものがあるとき

大きな買い物をする前には定期預金の解約をしたりしますよね。銀行口座の残高確認です。衝動買いでない限りは、時間をかけて現金の割合を増やしておけば足りるはずです。

・無意識、放っておいただけ

何も考えずにお金を置いておける銀行というのは本当にすごいなぁと思いますが、銀行は潰れないわけではありませんし、潰れたときにペイオフ以上のものを保証してくれはしません。

つまり、資金繰りにおいて大事なことは「どのくらいの金額」「どのくらいの期間」そのお金は現金であるべきなのかを考えることです。現金である必要がないのであれば、お金には働きに出てもらうのがいいかと思います。

ポートフォリオ運営においてこれを置き換えると、

1.手数料支払いのため

口座維持手数料だったり、証券保管費用だったりが自動的に引き落とされるケースは少なくありません。

2.お手頃になった証券を良いタイミングで買うため

ややトレーディングタッチな考え方ではありますが、こういった発想のお客様は多数いらっしゃいます。安く買って高く売る、まさに商売人的発想です。投資も同じで、キャピタルゲイン狙いです。

3.買いたいものが特にないから

株式も債券も高いと言われているので、何を買ったらいいのか分からない、下手に高値掴みをして損したくないですよね。

現金でなくてもいいという結論に達するなら

さて、足元は2から3寄りの人がやはり増えているように思います。ただ、先ほども話したとおり、ペンを湿らせたまま待つというのもあまりいい策とも言えません。

実は投資の中身を入れ替えるのにそんなに時間とコストがかかるか?というとそうでもありません。ファンドになると手数料やコストがかかるケースが多いですが、ETFなら一瞬だったりしますし。投資信託ですら最近は手数料がどんどん下がってきています。

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資産運用したいという人はやはり「儲けたい」と思っています。チャンスを逃さないことだけでなく、コツコツとした積み上げをやっておくことは実は非常に重要になってきます。短期債ETF等でも構いませんから、現金という安住の地を少しだけでも離れておくことはお勧めします。

また、相場に迷いがあるときは、アドバイザーとの対話に専念し、セットアップやメンテナンスだけ済ませておくことも一つできることかもしれません。投資はタイミングも大事なので、買いたいものが現れたときに、すぐに買えるようにしておくこと。たまにいらっしゃるのは、株が急上昇したのでやる気になって口座開設しようと考える人ですが、基本的には手遅れです。

最後はリスク量のコントロールによる、心理と数字の勝負

「怖い」という感情に基づいてアクションを起こすことも重要ではあるのですが、投資の基本はしばしば大衆心理にある、つまりみんなが買いたいと思うものが価格上昇して、みんなが売りたいと思うものが価格下落すると思っていることは概ね正しいですから、あなた自身が株を売りたいと思っていて、あなたは売るかもしれませんが、それでもなぜか株価が下がらないのは、買うという意思決定をしている人の方がその分いるから、に他なりません。投資に心理はつきものです。大衆心理とご自身の心理の両方と向き合いましょう。

一方、短期的に大きな利益を生むと、どうしても「投資をした気」になりますが、資産運用は長期に渡る、「ちりつも」もまた大事です。ウサギとカメはどちらが勝つか、に例えるつもりもありませんが、結局は何十年と経ったときにようやっと数字の答えが出てくるものだということになります。

投資にリスクはつきものですから、心理や数字と向き合いながら、リスク量をしっかりコントロールしていくことが大事です。

色々書きましたが、ご利用なさるような方々はそもそもきっとこういう悩みから解放されたいという思いでいらっしゃる人もあるのではと推察します。にも関わらず最後まで読んでくださっているのであればアドバイザーとしては大変嬉しいことですね。

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