IFA査定マニュアル – 2/3【調査編】IFAに出会うまで
IFAを上手に使うためのマニュアル。IFAに実際に会うまでにお客様自身ができる心構えと調査についてにまとめてみた
前回の記事ではなぜIFA査定マニュアルが必要なのかという背景について書いた。
既に読んでいただいた方のためにざっと内容をまとめるとこうだ。
- 金融商品の購入経路にIFAが加わった
- 特定の金融会社(たとえば銀行や証券会社)に所属していないIFAを通じて金融商品を購入するのは、金融会社所属の営業マンの商品販売よりはIFAはいくぶんマシな側面がある
- 一方で投資家にとっては金融商品を選択する前に「IFAを選択する」という手間が増えた
- IFAに関する定量的情報が少ないため、投資家はいきおいIFAを「いい人そうだ」「いろいろ教えてくれそうだ」というような主観的な判断の仕方をせざるをえない状況となっている
IFA選びに少しの手間をかけることでIFAから引き出せるものは飛躍的に多くなるし、IFAのほうも緊張感をもって投資家に対峙することとなる。私たちIFAからするとこの査定マニュアルに書かれているような準備をしてくる方々は手強いクライアントとなるが、手強いクライアントが私たちを育ててくれていることを考えると投資家がどんどん手強くなっていくことはむしろ歓迎するべきだろう。
前置きが長くなったが、本稿ではIFAの査定にあたって、”IFAに出会うまで”の話をしたい。
《心構えその一》投資家=社長、IFA=従業員
IFAその人を知るキッカケは様々だろう。たとえばセミナーに行った、広告で見た、人に紹介してもらった、ネットで見た、など。
しかしどの場合でも共通していることがある。自分で思い通りの資産運用ができるならIFAに相談しようなどとは考えないので、IFAに相談する場合というのは①今まで資産運用の経験がないか、②あったとしてもまだ誰かに相談したいかのどちらかだろう。
こういった状況でIFAに会うと「自分の知らないことを教えてくれるIFA」「自分の資産運用をうまく導いてくれる人」というポジティブなイメージができてしまう。このイメージがIFAに厳しいことを言いにくい心理状態を作る。
しかしよく考えてほしい。IFAは金融市場をコントロールできるわけじゃないし、その結果に責任は負わない。にもかかわらずアドバイザリー・フィーなど手数料を投資家から頂戴して生計を立てている。そういう意味でIFAが提供しているのは結果ではなく「うまくいきそうな雰囲気」に過ぎない。そして投資家はその雰囲気に手数料を払っていることになる。
投資家はまずこのことを強く認識する必要がある。私たちIFAを使うことで投資家の生活は向上するのか。おカネに対する悩み事は減るのか。それらはIFAに手数料を支払ってでも達成したい価値なのか。
こう考えると、投資家はIFAに手数料という名の給料を支払う社長であり、IFAは頂いた給料以上のバリューが出せるかどうかがIFAとしての腕の見せ所ということになる。
この最初の心理的立ち位置がIFAをうまく使えるかどうかの分水嶺といっても過言ではない。ちなみにプライベートバンカーに対しても同じことがいえる。プライベートバンクに口座を持つだけで舞い上がっている投資家を何人も見てきたが、そういった投資家がその後プライベートバンカーから最良のものを引き出せるとは思えない。これは口座を持つこと自体がゴール化してしまっているからだ。プライベートバンカーも不必要なレバレッジをかけたり手数料の高いデリバティブを売り込んだりしているのにも関わらずだ。
私のクライアントの中にも私のことを「小椋先生」と呼ぶ方がいるのだが、その都度「立場が逆です、そもそもIFAをとはですね… 」とクドクド説明している。
が、なかなか伝わらない。おそらくこれも、最初に固定された心理的な立ち位置が影響を及ぼしているからだろう。繰り返すが、IFAは金融市場の動向に責任を負わない。IFAはあなたの資産を増やすかもしれないが、減らすかもしれない存在なのだ。だからこそできるだけ冷徹な目で観察する必要がある。社長が「いい人そうだ」という理由だけで従業員を採用することがないように、投資家も「いい人そうだ」という理由でIFAを採用することがあってはいけない。
《心構えその二》複数のIFAから提案を受けるべき
比較しないと良し悪しは分からない。だからIFAを使って金融商品を買おうとするなら、複数のIFAから提案を受けると良い。よく「忙しいから一社だけでいい」という方がいらっしゃる。もちろん、一発で納得のいくIFAに出会う可能性をゼロだと言って否定することまではしない。しかし、複数のIFAから提案を受けないとそのIFAに何が秀でていて何が劣っているのか知ることができない。
また、比較したからこそ、A社のIFA(人)を気に入ったがB社のあの提案も捨てがたい、というときにA社にB社の提案を見せることで結果的にA社からハイブリッドな提案を受けられることにも繋がる。
まずは複数のIFAから提案を受ける、という心構えが必要だ。それができたならIFAの調査へ進もう。
【調査】IFAに会う前に確認すべきこと
調査する内容は以下の情報だ。
- IFAのライセンス
- IFAファームのウェブサイト
- IFA個人のブログサイトやSNS
まず、IFAのライセンスの確認から入る。香港であればSFCやIAなどの監督官庁のウェブサイトからライセンスの有無を確認することが可能だ。最悪ライセンスは面談時でも確認できるが、そもそもライセンスを保有していない人と会って資産運用の話をしても時間の無駄だ。ライセンスのないブローカーがIFAの顔をして商品紹介をしていることがあるが、彼らはIFAに投資家を紹介をし紹介料を受け取っているだけである。このあたりは過去のブログにも書いたことがある。
ご自身の健康状態をお話するのに「人より医療に詳しい医者もどき」には話をしないのと同じで、IFAもどきに話をしても仕方がない。まずはライセンスのあるなしでふるいにかけてしまおう。ご自身で調べることができなければ、そのIFAにメールを出してライセンスの確認をしても良い。ちゃんとしたところであれば、確認をして嫌がられるということはないはずだ。
次に、IFAファームのウェブサイトなどを確認する。商品のラインナップを知るためもあるが、そのIFAがどれくらいの規模でどういった業態で業を行っているのか知るためでもある。弊社AMGは簡単な旅行保険からプライベートバンクを利用したファイナンスまで幅広く行っているが、よく言えばほとんどの「おカネのニーズ」には対応できるが悪く言えば総花的だ。
逆にIFAファームによっては尖ったサービスだけを強みにしているところもある。たとえば信託を使ったファミリー・オフィス機能を提供しごく少数の顧客だけを受け入れているところもあれば、相続に使うような特殊な生命保険を販売しているところもある。IFAファームのウェブサイトを見ることでどのようなサービスを提供しているかがある程度分かるだろう。
とはいえIFAファームは単にIFAを抱えている事務所であり、実際に付き合うこととなるIFA個人の情報がウェブサイトに豊富に載っていることはない。またIFA個人とIFAファームであればIFA個人を知ることのほうが先だろうから、IFAその人の情報を調べておく必要がある。そこでブログやSNSなどをチェックする。少しザッピングするだけでもそのIFAの人となりが分かるだろう。疑問に思ったことは面談の際の質問リストとしてメモしておくとよい。
IFAのブログやSNSを見て良いIFAかどうかを見分けるのは難しいが、ダメなIFAを見分けるのは簡単だ。
- 語彙力が貧弱
- 金融市場についてほとんど語らない
- 高級車や高級時計などを見せびらかしている
こんな特徴がある。
ライセンスがあり、提供サービスが気に入り、またIFA個人の人となりもある程度理解したら、面談を申し込むこととなる。
本当は2部構成の予定だったが、絞りに絞ってもやはり長くなってしまったので、ここで一旦切って次稿に繋げることにしようと思う。 次稿は【面談編】IFAに出会ってからの話である。