IFA査定マニュアル – 3/3【面談編】IFAに出会ってから

IFAを上手に使うためのマニュアル。IFAに実際に会ったとき、そして提案を受けたときに確認すべきことをまとめてみた

前稿では、IFAに出会うまでに自分自身でできる心構えと調査について述べた。

ブログ:IFA査定マニュアル – 2/3 【調査編】IFAに出会うまで

今回は、事前の調査が済んだ人が、”IFAに出会う”とき、そして”IFAに出会った後”の話をしようと思う。まずは”IFAに出会う”ときから。

【面談】IFAに出会うときに確認すべきこと

確認すべき情報は以下だ。

  • キャリア
  • 報酬体系
  • バックアップ体制
  • 平均的な顧客像
  • その他気になったことすべて

簡単な下調べが終わったら、面談へと進む。最近ではオンライン面談も増えてきたため、IFAとの心理的距離はますます近くなっている。この面接がIFAとの心理的立ち位置を決定するポイントとなるので厳しいと思われるようなことでもしっかりと聞いていこう。

あなたの現在までのキャリアを教えてください

1つ目はそのIFAのキャリア。キャリアが長ければ長いほどよいものではないが、長いキャリアはそれなりにIFAとしての信用を保証する。IFAになることよりも、IFAを続けることのほうが格段に難しいし、もし投資家からの大きなクレームがあって監督官庁から懲罰を受けでもしていたらそのIFAはもはや業界からいなくなっているからだ。キャリアが長いということは、それなりに客をつかまえ、監督官庁からの懲罰もなかった、仮にあったとしても単純な手続き的瑕疵のようなものだったことを意味する。

ただ、キャリアが長くなればなるほど既存の投資家のお世話で手一杯になり新しい投資家への対応がおざなりになっている場合も散見される。これは面談後の提案の真剣さである程度分かるだろう。

どんな種類の報酬を得ているのか説明してください

次に報酬体系。弊社AMGの場合は資産運用の場合は預かり総額に対して1%の手数料を得、保険商品においては販売手数料(コミッション)を頂戴している。

IFAの報酬体系には様々なものがあり、その解説だけで1つの記事になってしまうのでまた稿を改めたいが、報酬体系を知っていればそのIFAがどういうモチベーションで金融商品をオススメしてくるのかが透けてみえる。どういった報酬体系がOKでNGかという基準はない。投資家にとって腹落ちしさえすればよい。

万が一あなたと連絡が取れなくなったら、誰に連絡すればいいですか

バックアップ体制。投資家はIFA個人とつながることとなる。そのIFAが病気になったり、事故で死んでしまったりした場合にどういったバックアップ体制があるのかを知っておくと、万が一担当IFAと連絡が取れなくなってもうろたえなくて済む。

ちなみに「IFAと連絡が取れなくなった」というのが弊社への口座移管の理由のナンバーワンだ。

平均的な顧客像を教えてください

IFAにはそれぞれ「得意分野」がある。たとえば私は 40-50代の自営業者が平均的な顧客像となる。資産運用についてはもちろんだが、経営の悩みを聞いたり人を紹介することで私にクライアントに対してIFAとしてのバリューを出せるのが強みだと思っている。

また弊社の他IFAは地主系に強いものもいる。土地持ちは深刻な相続問題を抱えていたりするので、そこを糸口として相続プランを提案するのだ。類は友を呼ぶ、という言葉があるが私は逆にそういった土地持ちの資産家からはなかなかお声がかからず、商売してらっしゃる方からの相談が多い。

平均的な投資家像から自分が離れていることが即NGというわけではないが、平均的な顧客像が分かればどのような顧客層に対するサービスに強みがあるのかは大体分かる。

正月の雑煮に餅を入れる派ですか

その他、気になったことがあれば面談中に疑問を解消してみよう。IFAのプライベートなことでも構わない。私が面談時に聞かれて一番印象に残っているのは「正月の雑煮に餅を入れる派ですか?」だ。

ここで「業務とは直接関係のないことなので答えたくありません」などと返答しようものなら「付き合いづらいIFAだ」「知りたいことを気さくに教えてくれないかもしれない」と思われていたかもしれない… お餅を入れるのが正解かどうかではなく、どんな質問にも答える態度を示せるかを試す目的だったのだろう。

【提案】IFAと出会った後に確認すべきこと

IFAとの面談が終われば、数日でIFAからの最初の提案を受けることになる。商品をひととおり紹介するだけのごく簡単な提案もあれば、内容を仔細に解説するものもある。どういった提案であれ最終的には何らかの金融商品購入につながるので、この部分でも投資家はしっかりと知識入れをしていかねばならない。面談でIFAの人となりが気にいったから全部おまかせ、というのは耳障りは良いが危険だ。

この段階では面と向かって会う必要はないが、LINEやSkypeなんかのビデオ通話をオススメする。メールだとラリーが何往復も続いてしまうからだ。IFAが書いたことを証拠に残すつもりでメールでの会話を希望する方もいらっしゃるが、もし裁判になったとしても最終的に書類にサインをしたことがメールよりも優先される場合がほとんどなのでメールで証拠を残すというのはあまり意味あることに思われない。言葉のニュアンスも文面では分かりづらいので、結果的には話した方が早いという結論に落ち着くことも多い。どうしても証拠を残したいのであれば、話した内容の議事録を自分で作る、あるいはIFAに議事録をメールで送ってもらうようお願いするのも一つの手だろう。

IFAからの提案を受けた後に確認すべきことはこうだ。

  • 提案の過程や根拠
  • それにまつわる手数料
  • 分からない用語
  • ストレス・テスト
  • 仲裁機関

数ある金融商品の中からその商品を選択するに至った根拠を教えてください

IFAは金融商品から独立しているため、原則として特定の金融商品メーカーに縛られることはない。複数の金融商品から選択しているはずなので、その商品を選択した根拠を聞く。たとえば

「AとBの2つ商品があったがAはこの点が優れ、Bは違う点で優れていたがAとBでは投資家のニーズにより合致するのはAだからAを提案する」

といった具合だ。比較対象となった商品についてはメモしておき、違うIFAを使って裏とりをしたりする。余力があるなら投資家自身が商品のことを調べるのがもちろん一番で、特に手数料体系については商品パンフレットに明確に記載されているのでIFAの言っていることと齟齬がないかは投資家自身でも確かめられる。

この提案を実行するとして、かかる費用を教えてください

面談段階でもIFAの報酬を確認しているが、一般的な報酬のお話と個別具体的な提案における報酬の話とは異なる。改めて提案内容にかかる手数料を聞く。見落としがちなのは解約手数料だ。提案されるときは解約を前提として話をしていないので、運用が続く前提での手数料ばかりに気を取られるが解約時にどういった手数料が必要かは聞いておくとよい。「たとえば手数料差し引き後で年間3%の利回りが取れたとして、最悪3年目で解約したとしても元本以上は戻ってくる」といったようなシュミレーションは確認しておいても損はない。

用語が分からないので、説明してください

資産運用には専門用語がつきものだ。またそういった用語を使ったほうが話がスムーズに進むこともある。しかしIFAが投資家の理解度を確認しないまま一方的に専門用語を使っていると感じるなら、それは要注意だ。専門用語で煙に巻いて、投資家に対してマウントをとろうとしているかもしれない。投資家が社長でIFAは従業員に過ぎないことを思い出していただきたい。

仮にリーマンショック級の出来事があったとして、この運用はどのような影響を受けますか

ストレステストという言葉はリーマンショック以来頻繁に登場するようになった。本来的には金利が急上昇したり、景気が急に悪くなったりという「ストレス」にどこまで耐えられるかというシュミレーションのことをストレステストというが、これを自分の資産運用にも当てはめる。

考えうる様々な金融ストレスはあるものの、分かりやすいリーマンショックがストレスとしてはいいかもしれない。リーマンショック以外にも、投資家自身が考えるストレスをぶつけてみると良い。とあるクライアントはオイル価格の乱高下を「ストレス」にあげた。

この質問でIFAの金融市場に対する造詣も推し量ることができる。

もしあなたの説明に重大な誤りがあったり、事実誤認を誘発するような説明があった場合にどういった仲裁機関がありますか

金融商品販売の利益の源泉は、投資家とIFAの知識格差から生じる。これはIFAに限らず、コンサルなどすべての知識労働にいえる。顧客がすべてを知っていれば、知識労働者を雇用する必要はない。

この格差を利用して良い部分だけを誇張し都合の悪いことを故意に隠すことで成約まで持っていく営業マンが少なからずいる。こういった営業マンに説明責任をきちんと果たさせるための質問だ。

香港に限らず、世界各国で金融商品セールスの説明責任は年々厳しくなっており、投資家がサインする書類も年々増えている。法律的にはサインをすれば投資家が責任を引き受けることにはなるのだが、サインをしたとしてもIFAの説明責任がきちんと果たされなかったと投資家が考えた場合にはその報告をし、場合によっては仲裁する窓口があったりする。実際トラブルになってどこに駆け込めばいいのか悩む人も多いので、投資家自身もこの情報は知っておくべきだ。

また、金融商品の監督官庁によって窓口は変わってくるものの、この質問をすることによってIFAにとっては背筋が伸び気持ちがピリッとしまる。コンプライアンス遵守はどの金融機関にとっても至上命題であり、IFAの頭の片隅には常に監督官庁の影がチラついているからだ。もしずさんな営業をしていたらコンプライアンス違反ということで最悪の場合ライセンスが剥奪されるかもしれない。

この質問の回答を引き出すことによって、IFAは説明に誤りがないよう一層気を配るだろう。

最後に:IFAを上手に使うために

IFAはたいてい供給過剰であり、投資家はIFAを選べる立場にいる。だからこそ、適切な手順を踏んでいけばご自身にとって良いIFAが見つかるだろう。

IFAに厳しい質問をするのも、IFAを敵視しろと言っているわけではない。長期的により良い関係を築いていくには最初のボタンの掛け違いはできるだけ少ないほうがよく、そのための少しの努力を惜しまなければIFAは投資家の強力な味方になってくれるはずだ。

関連ブログ:資産運用業界の見取り図そしてIFAの役割

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