何がなんでもHSBC香港で口座開設したい方のための【ハードモード】マニュアル

厳しい山道をガツガツ登っちゃうあなたのための、HSBC香港口座開設【ハードモード】マニュアル

本稿は先日

– 伊藤克也さん(仮名) 37才 男性

に「香港に縁もゆかりもないし、英語ができないのですがHSBC香港に何がなんでも口座を開きたいのです。一人じゃ無理なので、サポート業者にも連絡しようかと思ってます」と相談された際のやりとりをもとに文章化したものです。

私は問う。なぜ香港で口座開設をしなければならないのですか?

仕事でしょっちゅう香港に来ている、香港の大学に留学が決まった、など香港と明確な関わりのある方が香港で口座開設をする必要があるのはわかります。しかし香港になんの縁もゆかりもない方が「香港で銀行口座開設をしたい」とおっしゃり実際口座開設をしていくのをこれまで幾度となく見てきました。「なんとなく」「海外の口座を持ちたいから」「かっこいい」「友人の勧めで」といったふんわりした理由で口座開設したい人がいっぱいいるのです。特に口座が必要でないのに。

私は問う。なぜHSBCで口座開設をしなければなならないのですか?

百歩譲って、ふんわりとした理由で香港で銀行口座を持ちたいとしましょう。そこから先が問題です。なぜHSBC香港でなければならないのでしょう。

香港で地場の銀行は多くあります。弊社オフィスの下にある地場銀行なら簡単に口座開設ができるというのに、HSBCにこだわる。私たち現地に住んでいる人間には(おそらくHSBCがある他の国の方にとっても)HSBCはただの銀行です。給料を入金し、ATMで日々の出費のやりくりをし、時々誰かに送金するということさえできれば十分。

逆に銀行としての必要な決済/送金機能さえであればHSBCでなくて全然構わないと思いませんか。しかしHSBC香港の口座開設にチャレンジする方はそこが違います。とにかくHSBC。絶対HSBC。何が何でもHSBC。それ以外嫌。おそらくHSBCにはその方にしか分からないブランド価値があるのでしょう。車でいうところの、「移動できればいいじゃないか」とヴィッツに乗る方と、「ステータス欲を満たしたい」とメルセデスに乗る方との違いでしょうか。もっとも香港に住んでいる私たちからするとそれがヴィッツとメルセデスほどの差はなくヴィッツとカローラくらいの差ですが。

私は問う。なぜ怪しげな業者に何十万円も払うのか

ここで、HSBC香港の口座開設はここに大きな需給ギャップが生まれます。

伊藤さん(仮名)のような日本人はHSBCで口座開設することに並々ならぬ情熱を抱いている。その需要を満たすべく手助けする専門の業者(らしき人)が現れるのです。当然ですがその業者はHSBC香港の銀行員ではなく、「銀行口座開設サポート」という公的な資格があるわけでもありません。とはいえその存在が違法なわけでもありません。銀行口座開設に特化した通訳だから、です。

そして驚くべきことに、「なんとなくHSBC香港で口座開設したい」というふんわりした欲望のために、なんと何十万円も口座開設業者に支払う方がいるのです。私が聞いた最高額は30万円。これは成功報酬ではなく、仮に口座開設ができなかったとしてもキッチリ30万円(渡航費別)。ジャッキー・チェンと握手できる権利でも含まれているのでしょうか。いくら口座開設したいからといっても、モノゴトには限度というものがございましょう。

私は問う。「大枚はたいて口座開設したのはいいけれど、その後サポート業者と連絡が取れなくなってしまいました。口座の管理で困ってますので相談に乗ってください」… ってそれ、虫が良すぎやしませんか?

口座を開くことだけを目的にしている方は少ないでしょう。腐らせると分かってスーパーで卵パックを買う人がいないように。口座開設は、開設後に維持管理していくことが必要なのです。

そしてこの「連絡取れなくなる」問題。口座開設後に連絡が取れなくなるというのはよく考えれば当然でしょう。なぜならサポート業者はあくまで口座開設時のみのサポートでありその後の維持管理のサポートまでしてくれるわけではないからです。では、その後の維持管理サポートまでしてくれる業者にお願いすれば良かったのか?

いえ、問題の本質はそこではありません。そもそも英語もおぼつかず、さして明確な目的意識もなく口座開設にチャレンジし成功してしまったことが問題なのです。香港の公用語は英語、普通語、そして広東語です。このいずれかを使いこなさなければ銀行員との会話もネットバンキングもできません。

ここまでの説明を聞いた方はふつうは心折れます。「HSBC香港に口座を開設し、維持していくのは大変そうだな」と。しかし「そこに山があるから」というような理由でHSBCの口座開設にチャレンジする猛者が一定数いらっしゃる。私たちがいくら口をすっぱくして「面倒が増えるだけですよ」と言っても聞く耳もっちゃくれない。

そこで厳しい山道をガツガツ登っちゃうあなた、あるいは伊藤さん(仮名)のための、HSBC香港口座開設マニュアルです。とはいえこのマニュアルを実践したからといって口座開設が100%できるようにはなりません。逆に何十万円かけるのも、このマニュアルを実践するのも、口座開設の可能性としてはほとんど一緒でしょう。なぜならHSBCでの口座開設の成否は運任せなのですから。

香港の銀行はHSBCに限らず、支店レベルでは対応はまちまちですし行員レベルでも対応がまちまちです。優しい行員に当たればスッと口座が開けることもあるし厳しい行員に当たれば開けないこともある、ということです。

そもそも口座開設が難しくなった背景

運任せとはいいながら、大きな流れとしてはやはり口座開設は難しくなっています。ここで、10年前は猫も杓子も口座開設できていたのに厳しくなった背景をおさらいしておきましょう。キーワードは

性善説から性悪説へ

です。まずは一般的な理由から。

罰金がこわい

脱税幇助を含むマネーロンダリングにより、監督官庁から刺されるリスクがとんでもないものになりつつあります。リスクを取るかどうかの判断は最終的にはおカネで換算されますが、昨今税金逃れやマネーロンダリングでの罰金が半端ありません。たとえば2012年の12月に報道されたケースでは2,000億円以上の罰金を支払わされています。

HSBC to pay $1.9 billion U.S. fine in money-laundering case

マネーロンダリングは巧妙でわかりにくく、果たしてその取引がマネーロンダリングに引っかかるかどうかの見極めが困難です。ただでさえ様々な規則にがんじがらめになっている銀行にとって、新規の(=信用のない)顧客を受けいれるほどの度量はありません。

そしてOECDの枠組みの中で始まったCRS, 共通報告基準によりHSBCも香港外居住者の銀行口座情報は当局に報告する必要があり、銀行のマネロン対策・脱税対策コストはますます重たいものとなっているのです。うっかり変な取引を認めてマネロンとみなされ巨額の罰金を食らうくらいならば、そもそも口座は開かない… という考え方です。

運用先に困っているので、預金はいらない

低金利はもはや日本だけの現象ではありません。ここ香港でも低金利が続いています。執筆現在、香港ドル建て1年定期が0.4%-0.5%となっています。日本円の定期預金が0.1%-0.3%程度ですから低金利っぷりはどんぐりの背比べです。

銀行本来のビジネスは利ざやを稼ぐことです。預金者から預かったおカネを事業に融資したり運用して預金者に戻します。しかし融資先が少なくなり運用利潤も低下、かつてのような高い運用益が見込めない昨今、預金者に利ざやを戻すことがだんだんと難しくなっています。

しかもリーマン・ショック後バーゼル3で金融機関に資産の質を高めることが求められているため、運用効率を高めようとするとますます預金者のカネはいらないという状態です。昔の日本では銀行マンは頭を下げて預金を集めていました。預金の大きさイコール収益の大きさとなっていた時代です。香港でも15年前くらいまでそうでした。しかし今ではすっかり逆転し預金の大きさイコール収益圧迫となる構図があるのです。

以上が一般的な理由です。そして次は日本人固有の理由です。

英語の下手な日本人はクロスセルできない

日本人は英語が下手です。口座開設後、銀行はその預金を目当てにあの手この手で金融商品を売りつけてきます。しかし仮に「新しい投資信託の販売開始です。いかがですか?」と営業の電話がかかってきたとしても、電話の主がHSBCかどうかを判別できるくらいの英語力がある方はどれだけいるでしょう。「迷惑電話だ」とぶちっと切ってしまうかもしれません。

また営業メールを英語で出しても開封した瞬間ゴミ箱行きにされるのであれば銀行としてはコストがかかるばかりで商売になりません。

加えて、日本人は預金額が少ない

HSBC香港の口座を「なんとなく」で開設した方、おそらく預金額が数十万円多くても数百万円でしょう。当然ですよね。何の目的もなく「なんとなく」で口座開設したわけですから。一方、中国大陸の金持ちたちは数億円、数十億円という単位で預金してきます。どちらもHSBC香港から見れば外国のお客様です。チンケな金額で優遇されると考えるほうが間違っています。

15年前は預金をしてくれる人は神様でしたでしょう。預金額の拡大が銀行の利益拡大に直結していたいい時代でした。しかし今では新規預金者は銀行の事業を邪魔する悪魔です。疑わしきは罰する、とでもいうような性悪説にたって彼らが仕事をしているのです。

そのような厳しい状況の中、ちょっぴりハードではありますがHSBCの口座開設をする方へ2つのアドバイス。

ハードモード1. 急場しのぎでいいから英語力を身に着ける

伊藤さんは英語がほとんど話せません。ハロー・グッバイが言える程度。そしてそういった方が本稿をご覧になってくださっているでしょう。そういった方に敢えて申し上げます。業者に頼らず、急場しのぎでも英語を身に着けていただきたい、と。急場しのぎとはいえ日常英会話くらいできるようになっていれば、銀行口座だけでなく今後海外旅行が俄然楽しくなること請け合いです。

とはいえ口座開設で必要になる英語力はじつはさほど高くありません。NHKのラジオ英会話のテキストを1年分本気で覚えれば楽勝です。しかしこれに加えてストーリーが必要です。すなわち、自分は単なる観光客でなく、留学あるいは仕事に今後も頻繁に訪れるというストーリーを事前に作り込んでなくてはいけません。香港と何らの関係もなければ、それはコンプライアンス上のリスクが一気に高まるので口座開設を断られる可能性が俄然高くなるのです。

第一関門: 受付

支店に入りますと、受付の人が

“How can I help you?”
“May I help you?”

などと聞かれますので、堂々と

”I want to open an account”と答えましょう。もちろん”I would like to…”とか上品な会話ができるに越したことはありませんが、HSBCはあなたの英語が伝わりさえすればよく、上品な英語である必要はありません。どんな会話でも、意味さえ伝わればいいから最悪「open account」と答えましょう。ここではとにかくオドオドしないことが肝心です。パスポートと日本の英字の住所証明(国際運転免許証か、日本の銀行の英字のステートメント、支店印入)を提示します。

第二関門: ブース

その後運良くブースに通されますと、受付とは別の行員がブースに案内してくれます。そこでは、

* Which type of account would you like to open?
* What is the purpose of opening account?
* How much would you like to deposit today?
* Why do you need a bank account in Hong Kong?

のような質問が聞かれます。定形の質問、Yes/Noで答えられる質問ではないため、ここがまさに英語力を発揮しなければならないタイミングです。よく分からなければ聞き取れた単語だけでもリピートしましょう。それで時間を稼げるはずです。聞かれてる文章をそっくりそのまま、しかしゆっくりとリピートするだけでも英語が分かるフリができます。それまでに付け焼き刃で身につけた英語力を駆使し、「英語でコミュニケーションできる」という能力を見せます。

そしてここぞとばかりに勉強、あるいは仕事で香港に頻繁に来る、だから口座が必要なんだというフリをしましょう。実際にそうなろうがなるまいが、銀行にとっては知ったことではありません。口座開設の「もっともらしい理由」があればいいのです。

また、HSBC口座の種類をを知っておいたほうがいいでしょう。これを知っておくことで行員の説明の手間を省かせて印象UPを狙えます。

HSBC口座の種類は3つ。1つ目の金額のは口座に置いておく必要がある金額です。2つ目の金額は、口座残高が1つ目の金額を下回った月に取られる口座管理手数料です。

Premier HKD1,000,000 – HKD380
Advance HKD200,000 – Personal Integrated Accountに降格
Personal Integrated Account HKD5,000 – HKD0

(Premierの上にJade(HKD7,800,000)というランクがありますが、JadeになるためにはまずはPremierを3ヶ月以上保有していないとなれないため割愛します)

このうち、PremierとAdvanceの口座開設をすると開設を担当した行員にポイントがつくためPremierかAdvanceで口座開設することをオススメします。HKD1,000,000は日本円にして1,400万円ですが、その日に入金する必要はありません。口座開設後に電信送金をします。すなわち、仮にHKD1,000,000を持っていなくともPremierで口座開設できることを意味します。ただし、3ヶ月以内にHKD1,000,000に達しなければ口座管理手数料を支払う必要があります。

銀行員にとってはPremierとAdvanceの口座開設は点数稼ぎとなるので、ここはどどーんとPremierかAdvanceを選択してください。ちなみに、その後口座をダウングレード(たとえばPremierからAdvance, AdvanceからPersonal Integrated Account)してもそれだけで口座が閉じられることはありません。

行員が書類作成を始めたら、その時点での口座開設確率は99%

誰でも面倒なことは嫌ですね。銀行員もそうです。「どうせ口座開設しちゃいけない人なら早めに追い出しちゃお」と内心思っています。なので口座開設できないパターンの場合、受付で30秒たたないうちに追い返されます。受付を突破し、ある程度行員とコミュニケーションが取れて行員がいそいそとパスポートコピーを取ったりし始めれば、ゴールはすぐそこです。

とにかく3-6ヶ月くらいかけてでも英語を覚える。スクールに通うかSkype英会話などで英語のやり取りをして分からない英単語が出てきても固まってしまわないようにする。業者に何万円もおカネを払うより、自分におカネと時間をかけてスキルアップしちゃいましょう。スキル弱者は永遠に搾取されます。この辺で気合い入れてひっくり返しましょう。

ハードモード2. 香港に行く理由を作って、身軽に行っちゃう

香港に接点を持つのは、口座開設ができなかった場合にまた再チャレンジするため、そして晴れて口座開設できたとしても後に何かしらのトラブルがあった場合に香港の支店に行く必要が出てくるため、です。香港くらい気軽に行く、という心持ちでいれば、口座開設のための心理的障壁は低くなりましょう。一回の渡航で100%の結果が欲しいと思うから業者に頼る→カネが飛ぶ→しかし結果は100%でないため何も得るものがなくなる可能性もある、というループとなります。

たとえばSNSで香港に友人を作ってみる。口座開設だけで香港に行くのはつまらないですが、新しい友人を作るとなれば話は別でしょう。香港人は親日国ですから、日本人とお友達になりたい人たちはいっぱいいます。しかも彼らは英語は当然、日本語が話せたりしますから英会話レッスンまでつけてくれるかもしれません。

お仕事つながりで、香港に行くのもいいですね。香港では多くのトレードショーが開催されています。そこには文字通り世界中から様々なビジネスマンが集まってきます。名刺交換するだけでも世界とつながっている気分になれます。香港だけでなく、外国にヒョイッと行けるくらいの身軽さを身に着けておけば、銀行口座開設を入り口にいろんな可能性が待っているかもしれません。

口座開設後、HSBCからレターが届いてどうしても香港の支店に行かないといけないということになったとき、「じゃ今度の休みにあいつと飲茶するついでに銀行もいくか」なんて言ってたらなんだかカッコいいじゃないですか。

Q&A

本店(セントラル、中環)よりも田舎の支店のほうが口座開設確率は上がるか

いえ、むしろ逆です。HSBCセントラル本店には様々な外国人が口座開設しに来るためむしろセントラル本店のほうがそれ以外の支店よりも口座開設の確率はあがるようです。

それでも業者(通訳)を使えば口座開設確率は上がるのか

業者(通訳)が入っても業者は追い出されるだけで結局は口座開設者一人にさせられます。口座開設確率は上がるどころか、業者だと判断された時点で追い返されるのでむしろ下がるのではないでしょうか。業者の役割はブース内でどのようなやり取りが発生するかを事前に教えてくれたり、ATMカードのアクティベーションやインターネットバンキングの登録の手助けをするだけです。

英語が達者なら確実か

確実ではありません。仮に英語をネイティブ並みに話せたとしてもHSBCの関心はそこにはないからです。HSBCの関心は、あなたの口座開設をすることでコンプライアンスに違反せず、稼げるか? ということだけで、あなたの英語が上手いかどうかではありません。逆にいうと、これらHSBCの関心を満たすことができれば英語が上手でなくとも口座開設できます。

英語が上手な親類をブースに連れていっていいか

だめです。親類であろうと、通訳とみなされます。英語ができないことをおカネで解決するとしようとするからトラブルを抱え込むことになるのです。地道に英語の勉強をしましょう。

それでもサポート業者に頼りたい

どうぞお好きになさってください…

口座開設ポリシーはコロコロ変わる

口座開設の難化は一方的な方向でななく、易化することもありえます。実際、香港は口座開設を厳しくしたことで新規ビジネスが起こりにくくなっていることが統計上明らかとなってきており、経済を圧迫する可能性も出てきました。監督官庁としては経済成長とコンプライアンスのバランスを取ることが求められているため一方的に難化させるわけにはいかなくなってきます。

またテクノロジーの進歩で疑わしい取引を見つけることが容易になり、マネーロンダリング対策として新規口座開設を阻止することの有用性が問われはじめています。そもそも悪いおカネは全く他の金融機関からHSBCに電信送金で振り込まれまるケースがほとんどでしょうから、新規口座開設だけ阻止したところで抜本的なマネー・ロンダリング対策にはならないことは明白です。

ハードモード結論

しっかり英語を勉強し(ハードモード1)、たまに香港に遊びに来て(ハードモード2)、気軽に口座開設にチャレンジしていたら何回目かには出来ちゃうかも… みたいな心持ちで望んでください♪ 開設ついでに、香港の資産運用について聞いてみるか!という方がいらっしゃいましたら、問い合わせフォームより弊社AMGまでご連絡ください。

☆運用をご検討中の方 → まずは問い合わせから

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