どうしてもテンバガーを狙いたいあなたへ

テンバガーを狙いにいく方がどういう準備をすればいいか。残念ながらテンバガー銘柄は書いてません。

テンバガーとは

テンバガー(ten-bagger)とは、大化けする株式のことを言う。10(ten)倍になる株式、急騰する株式のことだ。もともとは野球で一試合10塁打ぶんを打つ強打者のことを指す言葉が転じたそうだ。

もちろんその銘柄がこれから急騰するテンバガー銘柄かどうかは買う前から分からない。なので、投資家はテンバガーを狙って株式市場を物色するわけである。

たいていテンバガーは流動性の低い小型株ばかり。だからこそ10倍も急騰する余地があるわけで、急騰・急落を繰り返すジェットコースターのような投資環境となる(そしてそういう投資環境が好きという投資家の方も少なからずいらっしゃる)。

弊社のアドバイザーにもテンバガー銘柄を聞いてくる方はポツポツいらっしゃるのだが、弊社のアドバイザーはテンバガー銘柄を知っているわけではないし、クライアントの資産でそれを狙いにいくようなこともしない。万が一知っていたとしても、テンバガー銘柄は流動性が低いため先に買いを入れられてしまうと負けなので、絶対に教えはしないだろう。もし教えることがあるとすれば、それはアドバイザーがすでにその株式を仕込んだ状態であり、そういった行為は業法違反となり資格が剥奪されてしまうのでやれないしやらない。

とはいっても、投資をするなら、一度は手にしてみたいテンバガー。しかしお察しの通りそれは宝くじを当てにいくようなものである。テンバガーでなくとも、ツーバガー・スリーバガーでも難しい。事実、アメリカの株式市場の成長は3500銘柄のうちわずか140銘柄しか寄与していない(すなわち残りの銘柄は株式市場の成長に寄与せず、むしろ市場全体の株価の伸びを引っ張っている)ことを考えると、テンバガー狙いがいかにいばらの道か。

しかし私はテンバガー狙いを否定しない。テンバガー狙いもポジティブな側面もあるからだ。どういう条件が揃えばテンバガー狙いも悪くないと言えるのか。

その1. 資産運用のための資金とテンバガー資金を分ける

テンバガー狙いは、資産運用ではない。テンバガー狙いと資産運用は、株式市場にリスクマネーを投入するという点では同じ。しかし資産運用が中長期的に市場平均程度の資産増長を目指すのに対し、テンバガー狙いは短期的に数倍を狙うものだ。

一方、王道の資産運用は大勝ちはしないが大負けもしない。集中より分散、個別銘柄よりインデックスやETF、短期よりも長期という性格をもつ。大きく勝つことがないので、投資家にとってはつまらなく感じる。たとえば株式6割、債券4割のポートフォリオではこの10年、途中の上下がありながらも平均5-6%くらいは達成できただろう。数年のまとまりで見たら「あぁ、たしかに上昇してるな」くらいの感慨はあるかもしれないが毎日の頻度でそんなことは起こらない。

5-6%を少ないと思うかは人それぞれだが、王道の資産運用は残念ながら短期に10倍になったりはしない。資産運用には少なくとも目標がある。将来より豊かになることで、何を達成したいのか。老後に困らない生活なのか、相続税の支払い原資なのか、マイホームなのか美術館建設なのか。少なくとも博打を打てる性質のおカネではないだろう。

テンバガー狙いはチップを片手にジャックポットを回しているのとたいして変わらない。一発逆転を狙った投資で身を持ち崩してしまう方をこれまで何人も見てきたが、たいてい思い込みが激しく資産運用資金を全額こういった小型株に突っ込んでしまう。そしてタイミングのわるいところで売却してしまい、運用資金がますます細っていくという悪循環に陥る。

生活資金資産運用テンバガー
ゼロになってもいいかダメダメ仕方ない
途中の騰落に耐えられるか耐えられない耐えられる耐えられる
ゴール・目的はあるかもしもの時の
おカネ
将来の目的の
ためのおカネ
ギャンブル
そのもの

2. ルールをもつ

自分なりのルールをもつ

たとえば

  • PBRが1倍未満
  • 浮動株が一定未満・取引ボリュームが少ない
  • ここ半年、メディアへの露出がない

などまずは自分で考えた条件でやってみる。ちなみにこの条件は私が今思いついたものを羅列しただけなので参考にしてはいけない。というか、誰の意見も鵜呑みにしてはいけない。雑誌に書いてあるから、ネットで読んだから、投資の世界で有名な人だから… もし私たちが具体的な銘柄をあげて「これ儲かりますよ!」といい、その後こっそり仕込んでおいたものを売却するとなるとフロントランニングといって違法行為に該当する。

ただ、メディアでそれをやっている人たちはそういったそもそもライセンスがないので業法違反とはならず、一番最初に大きな声で「この株が儲かるぞ~!!」と言った者勝ちだ。声が大きければ大きいほどその投資アイデアに乗っかる人が多く、結果的に自己成就してしまいますますそのフロントランニングが強化されるということになる。

要するに誰かの投資アイデアに乗っかるということはその時点でカモ確定なのだ。意見を参考にする程度ならまだ良いが、妄信的に信じてしまってはいけない。規律ある投資アイデアを自分で考えなくてはいけないし、ルールに則ったうえで経験を積まなければならない。孤独な作業だ。多くの人は「儲かる」という抗いがたい響きとともに「自分の頭で考える」という孤独に耐えられず資金をリスクに晒してしまう。

自分なりのルールに沿ってやる。誰かに聞いたルールはすべて疑ってかかる。それだけで成功する確率は少しは上がる。

マネー強者である場合、期限を定める

個人的な感想だが、テンバガー狙いの方は創業社長が多い気がする。成功している創業社長のようなマネー強者がテンバガーを狙いにいっている。ご自身の力で成り上がった方は、マネーに対する嗅覚が研ぎ澄まされているものだ。それに「自分ならできる」「自分は人よりラッキーだ」というポジティブマインドが事業での成功を引き寄せたともいえる。

しかし、僕の知っているある方はテンバガー狙いにのめり込みすぎて本業がおろそかになってしまい、数年ハマったのち結局スッパリ投資(投機)をやめてしまった。

ご自身でマネー強者であると自覚してらっしゃる方はおそらく今までの成功体験から「自分なら天賦の才能でテンバガーを見分けられる」と思い込んでらっしゃる。ただ自分である程度の方向を決められる事業と違って、金融市場は特殊な世界。思うままにはならない。自信家の方ほどうまくいかない原因を追求するのに躍起になってしまうので、ますます深みにはまり込んでいくという循環になる。

ご自身が楽観的なマネー強者だと思うなら、テンバガー狙いは期限を決めたほうがいいだろう。

3. 楽しむ

王道の資産運用は楽しくはない。ちょっとしたアップサイドを繰り返すだけで、基本的にはのっぺりとした道が続くだけだ。もちろんリーマン・ショックのようなこともあるが、それとて10年に1度の頻度だ。それに対して、テンバガー狙いの投資は刺激的だ。規律ある投資、楽観との戦い。ある種の知的総合格闘技のようなもの。それは宝くじを買って当たるかどうかを気にするより、よほど能動的な関わり方ができるので楽しい。

テンバガー狙いにポジティブな側面があるとすれば、これだ。

資産運用としてではなく「負け覚悟の知的格闘」と定義してしまうことで、燃える。誰もがまだ見つけていないマーケットの歪みを見つける、またご自身の考えが金融市場で果たして通用するのかにチャレンジすることは、ファンドやETFを積み上げただけの「資産運用タイプの」ポートフォリオを時々眺めるだけよりも格段に面白い。

株式市場は世の中の鏡なので、数字を通して様々な側面が見えてくる。テンバガー投資では負けても、その経験が本業に生きてくることも少なくない。数字以外で報われることがある。いわゆる「勉強代」というやつだ。

まとめ

テンバガー狙いを否定はしない。「資産運用資金とは分ける」「規律ある投資」「楽しむ」の3つができそうならテンバガー狙いも悪くない。

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