IFAの「分かりにくさ」に終止符を打つ!
IFAの分かりにくさを、お金の流れ、役割分担、3つの地域レイヤーから解説。ただの金融に詳しい人、香港に詳しい人とは歴然たる差があることをまずは認識
先日、弊社と7年来のお付き合いのあるクライアントから
「小椋さんはIFAだったんですねぇ、初めて知りました」
と言われて衝撃を受けた。そのクライアントとはこれまで100通以上のメールをやりとりし、年に1,2度は食事をするような関係だったのだが。「今まで僕をナニ屋だと思ってたんですか笑」と聞くとさらに衝撃的な答えが返ってきた。
「ん~ 金融とか香港に詳しい人?」
IFAの何がわかりにくいのか
確かに自分は金融とか香港に詳しいとは思うものの、単に詳しい人とIFAはライセンスのあるなしで一線を画す。またライセンスがあると法的責任が発生するため詳しいがライセンスのない人の放言とは自分とは背負っているものが違う。とはいえこれは十分にクライアントには伝わっていない。7年もお付き合いのあるクライアントでこんな調子だから、初めて私どもにご相談してくださるクライアントのIFAに対する理解はさらに薄いのかもしれない。いかにネット上で情報が氾濫していても、自分で調べなければ何も得られないのは仕方がない。
このクライアントのように、「知らない」ことが顕在化すればまだ僕たちにも「IFAとはですね…」と説明するチャンスはあるが、「知らない」ことが顕在化しない場合も多々ある。そもそもIFAは「医者」とか「先生」みたいに何を仕事とするかがイメージとして頭にすぐ出てくる存在ではないため、クライアントご自身がまず学習するというプロセスが必要となる。
しかもIFAは使い方によっては1年に1度その存在を思い出すかどうか… という状態にもなりえるため「そういえば運用を始める前に一通りIFAとか運用について知識入れしたけど、結局IFAって何だったっけな? …困っていることもないしまぁいっか」となり知識はますます風化していく。
上記クライアント以外にも、私どものことをIFAだと認識していないがために起こった珍事がある。Bさん(仮名)は弊社をIFAとして金融機関Xの金融商品を買い付けた。買い付け後数年してBさんから以下のようなメールが届いた。
金融機関Xに住所変更のメール連絡したら「住所変更の通知は私どもXではなくあなたのIFAに連絡してください」ってメールが返ってきました。香港の事情をよく知らないので、そのIFAっていう名前の会社を紹介してくださいますか?
Bさんは弊社をIFAだと認識しておらず、さらにIFAが一般名称であることを知らずIFAという社名の会社(住所変更など事務処理専門)が存在すると思ってらしたようだ。トヨタの車で高速道路を走ってたら事故ったけど電話するのはトヨタじゃなくてJAF(事故処理専門)、みたいな感覚で。これ、どこから説明しよう… と逡巡したものである。IBMやらMBAやらJAFやらUSBやらIFAやら、とにかく英字3文字が世の中に氾濫しているのでクライアントにIFAのことを覚えていただくのは大変だ。
自分たちはこの業界で働いているのでIFAが何者でどういう仕事をしているのかは当然分かっているが、投資家からみて分かりにくいことも多々あるだろう。
しかし常々感じていることだが、投資の成功で一番必要なのは心の平安である。心の平安を得るためには知識は少ないよりも多いほうがいい。それは単にマーケットや経済に対する知識だけでなく、仕組みやそれにまつわる法律だったりする。
たとえば「IFAはクライアントの投資金に触れない、触れられない」という仕組みが分かっているだけでも「起こりうること(たとえばマーケットが期待したようにいかない)」と起こり得ないこと(たとえばIFAがクライアントの投資金を使い込んでしまう)を区別できるだろう。また投資金は常に分別管理されその金融会社の事業資金とは別に保管されなければならないという法律を知っておけば、証券会社で分別管理されているのにもかかわらず「そういえば預金保護法はいくらだっけな」みたいな必要のない悩みを持たなくて済む。
どんなリスクを取っているのか、取っていないのかに自覚的でいることは結果的に余計な心配をせずにすみ、結果として資産運用の成功につながる。
IFAの仕組みを知っておくことについても同じことがいえる。特に香港のIFAは世界中の商品を扱うため話が少し複雑かもしれない。
そこで「IFAとはなんぞや」という問いにピリオドを打つべく3つの視点からIFA業を説明したい。その3つとは
- お金の流れ
- 役割分担
- 3つの地域のレイヤー
である。
1. お金の流れ – IFAはお金に触れない、触れられない
IFAはそもそも”Independent Financial Advisor”の頭文字をとったものだ。Independentは独立という意味だから、独立ファイナンシャル・アドバイザーである。何から独立しているかというと、特定の証券会社、保険会社、ファンド会社から独立している。それらの証券会社、保険会社、ファンド会社は自社金融商品を作っていると同時に自社で営業マンをかかえてその自社商品を販売させている。たとえば野村證券なら野村の取引口座やファンドを野村の営業マンが販売する、といった具合だ。しかし野村の営業マンは大和証券の証券取引口座を販売したりはしない。野村の社員は野村證券から独立していないからだ。
しかしIFAはそれら金融会社から独立しているので野村の口座も大和の口座も取り扱うことができる。これが「独立」の意味である。仮にIFAがA証券会社の取引口座を紹介したとすると、クライアントはA証券口座に口座を開設する。IFAとA証券は互いに他社同士なのでクライアントはIFAを経由せずA証券口座に直接入金することとなる。すなわちIFAはクライアントの資金に触れることができない。
入金するときだけではなく出金するときも同様で、IFAはクライアントの資金に触れない。出金する先の口座の名義人はクライアント自身である必要があるからだ。クライアント以外の名義への出金を認めると資金の性質によってはマネーロンダリングにつながるため、認められない。
お金の流れを誤解しているご質問
知り合って間もないAMGさんに入金するのはちょっと…
もっとも多い誤解はこの質問。AMGはIFA会社なので、投資金はAMGに入金することはない。入金いただくのは世界でも有名な金融会社である。私どもではない。そして私は単に「金融とか香港に詳しい人」個人ではなくAMG Wealth Managementという会社に所属し活動をしている。
AMGのアンタは直接知ってるから信用できるけど、アンタの紹介する金融会社の人間には会ったこともない。だからAMGのアンタにカネを預けたい。
逆にこういう豪気なクライアントがたまにいらっしゃる。資金の入金先はIFAか金融会社かと選択できるものではなく、金融会社にしか送金できない。また弊社がIFAとしておカネを預かって代理で金融会社に入金することもない。クライアントが金融会社に直接入金していただくことが必要となる。
2. 役割分担
IFAと金融会社には明確な役割分担がある。IFAには「商品の説明、購入(口座開設)のお手伝い、その後のアフターフォロー全般」であり金融会社は「証券保管、運用レポートの作成、取引履歴レターの発送」などだ。すなわちIFAはクライアントと金融商品の間に位置し、クライアントの質問をすべて受け付ける存在となる。逆に金融会社は金融商品の開発、資金の受け入れと管理、レターの発行など裏方に徹する。
お困りごとがあればまずIFAに聞くとおぼえておけば良い。
役割分担を誤解している質問例
住所変更をしたいので、金融会社の連絡先を知りたい
私どもはあなたのIFAなので、私どもが一切の事務手続きを代行する。金融会社に直接連絡していただいても構わないが、金融会社から「AMGに連絡してください」と突き返されるのがオチである。もし金融会社と直接やり取りしたいという特殊な事情があれば(たとえばIFAからの返答が全くないなど)、その特殊な事情を申し添えておけばIFAを介さないやり取りは可能だろう。
3. 3つの地域レイヤー
次に、地域の問題である。私どもIFAは香港を拠点にしていることもあって「香港の有価証券しか買えない」と考えてらっしゃる方がいまだに多い。しかし現実には世界中の有価証券が買える。
図で順番を追って説明していこう。
サービス地は香港
私たちは香港で金融ライセンスを取得しているため、原則として香港内でしか活動できない。すなわちIFAとしてのアドバイスやご契約後のメンテナンスなどの提供地は香港ということになる。
金融商品は香港かその他オフショア地域
香港は香港外で組成された金融商品についても販売することができる。香港が金融都市といわれる理由の一つは「世界の金融商品見本市」的なところがあるからだ。私どもはIFAとして数十種類の証券口座、金融商品を取り扱うが、香港籍の商品もあればマン島籍の口座、ケイマン諸島のファンド、バミューダの生命保険などオフショア地域のものもある。クライアントのニーズにあわせて商品を選択するが、商品が組成されているのは香港外ということも多い。
投資先は全世界
仮にオフショア地域で証券運用をするとしよう。その口座を利用してドイツの債券を買い、イギリスの株式を買い、アメリカのETFを買う。オフショアであることのメリットを最大限利用して、税効果を高めるためだ。
このようにサービス、金融商品、投資先はそれぞれ違うレイヤー、地域で行われているためどのレイヤーの話なのかを知っておくことが必要だ。
レイヤーを混同している場合の質問例
AMGは香港の会社なので、香港の商品しか扱えないのですね?
金融商品は香港あるいはオフショアのものを用意しており、そこからさらに全世界の株式や債券など有価証券に投資ができる。香港の商品しか扱えないわけではないし、香港市場で取引されているものだけしか投資できないわけではない。
香港のデモが心配なので、投資金を回収したい
そもそもご投資金は香港に存在していないかもしれない。仮にその香港の金融会社がデモの影響で倒産したとしても、分別管理されている投資家の資産は保護される。
カストディ(証券保管)も世界中に散らばるのでしょうか
あえて複数の取引口座を開かないかぎり、一箇所で管理されることになる。その場所は商品籍が存在する場所となる。すなわち香港や他のオフショア地域だろう。
様々な金融商品や取引形態を知る努力を
先週のポッドキャストでは「クライアントの理解がより早く効率的に進むように私たちも積極的に情報提供していかないとね」みたいな話をしていた。IFAが提供しているサービスも数ある金融サービスの一つに過ぎない。ご自身がよりよい選択をしているのかは、比較してみないと分からない。
IFAをご検討中の方 → まずは問い合わせから