運用ケーススタディ – セカンドライフはインカム収益生活
セカンドライフは投資のインカム収益だけで生活したいと考える人は多い。具体例を通じて、どのくらいの数字感を持っておけば良いのかの参考にしてもらいたい
運用アドバイザーの宮脇健です。本稿では、資産運用におけるケーススタディ(具体例)をお話していきたいと思います。今回のお題は「セカンドライフはインカム収益生活」です。
シチュエーションを確認
現在、日系企業で海外駐在員として働く40歳のMさん。42歳の妻との二人暮らし。お子さんはなし。セカンドライフは投資からのインカム収益で生活をしたいと考えています。
夫Mさんが懸念していること
Mさんは、海外駐在期間の給与は十分あるものの、海外駐在期間が長く、出世の道は遠のいたと感じています。いつかは日本に帰る予定ですが、日本の年金は当てにならないという印象を最近のニュースで抱いています。老後に向けた蓄えをすることには前向きですが、何をしたらいいのかは分かりません。海外生活も慣れているので、仮に日本で暮らしていくのに資産が足りなければ、物価の安い新興国に二人で移住することも心の片隅で想定しています。妻はどちらかといえば夫Mさんにどこまでもついていくというタイプです。
夫Mさんの取ったアクション
Mさんは数少ない友人に飲み会で相談をしたところ、独立系フィナンシャルアドバイザー(IFA)を通じて海外積立を実践しているという話を聞かされました。利回りもまぁまぁいいらしく、ご友人は満足している様子でした。Mさんは金融のことがあまり詳しくなかったので、家に帰ってネットでとりあえず検索してみたところ、海外積立、オフショア投資などなど、随分と日本語の記事がたくさん出てくることに気づきました。ただ、色んなサイトを見て、何となくは分かったものの、商品レビューはいい面も悪い面もあるのが当然なので、ちゃんとしたアドバイザーにまずは話を聞いてみるのが一番だと考えました。他のブログではあまり紹介されていないのを不思議に思いつつも、相談フォームから私宛てに問い合わせをいただきました。
運用の目的、期間、金額を決めていく
最初は商品を売り込まれるのではと警戒していたMさんですが、何度かメールでやりとりをした後、やはり直接話をしてみるのが一番だ、とお考えになったようで、Mさんには忙しい合間を縫っていただき、とりあえずWeb会議を設定することになりました。面談では資産運用の目的設定と目標額、運用期間、そして目標金額を伺いました。簡単にまとめると以下のようになります。
【目的】セカンドライフ資金(ご夫婦の老後のため)
【期間】20〜25年間(一般的に退職時期とされている60〜65歳を想定)
【金額】年間400〜500万円くらいをインカム収益から受け取りたい
ちなみに、その他にMさんが呟いていたことは
①本当のことをいうともう少し老後の収入はあった方がいいが、調べた感じだと、年間利回り5%くらいが関の山じゃないかと感じます。御社ならできますかね?
②利回り5%くらいで年間500万円だったら元本は1億円くらいですよね?いやぁちょっと頑張っていけるくらいなんでしょうか。夢の見過ぎですか?
③支払いや受け取りは香港の銀行口座あった方がいいんですよね?
でした。メモメモ。
ご案内した運用プランの例
今回の依頼はセカンドライフの資金ということでしたが、目標の部分は数字がしっかりと登場しましたので、まずはそもそも実現可能なものなのか、あるいは諦めるところからスタートしてもらうべきなのか、というところを検証してみましょう。月々のお支払いやあるいはこれまでの貯蓄の部分も多少は余裕があるようでしたので、両方の余資を活用しながらプランを考えてみます。
【原資の内訳】 貯蓄1,500万円 + 月額20万円
米ドル建てで積立運用をしたケース (1ドル=108円を想定、運用利回りは3%台後半)
初期投資額 10万ドル(1,080万円)
積立額 年間2万ドル(216万円)×23年(41〜64歳)=46万ドル(4,968万円)
→ 投資合計 56万ドル(6,048万円)
65歳での解約金 1,020,092ドル(1億1,017万円)
貯蓄を全て投資に回すと不安でしょうから、初期投資分はおよそ3分の2と考え、1千万円強としました。仮に65歳に1億円が貯まっている状態にしたいとすると、年間積立額は2万ドル、すなわち月額にすると18万円が必要な計算になります。
さて、あとはこの投資がご本人にとってどれくらいの負担なのかとの兼ね合いになってきます。Mさんの場合、持家でもなく家賃も会社負担ということもあり、収入面でも余裕は見られます。まだ40歳ですので、少なくとも諦めるところからスタートする必要はなさそうです。ただし、決して少ない負担ではないので、余裕のあるうちに並行して貯蓄を維持することは心がけつつ投資を開始することにしました。
65歳での返戻率は【182%】ですので、上図で確認できるとおり、何も対策を打たなかった場合に比べおよそ【5千万円】ほどの差が生まれたことになります。
例はあくまで、バランスのとれた運用を行って、運用利回りが3%台後半だった場合の数字になりますから、もう少し積極的に運用して上手くいけば、原資はもう少し少なくて済むかもしれません。また、今は歴史的にも金利が低いので3%台後半を想定していますが、もう少し金利が高くなれば自ずと運用利回りも良くなる可能性があります。もちろん逆に運用利回りが想定通りにいかないこともあるという点はご理解いただきましたので、経過観測をしつつ、少なくとも65歳に近づいたときに、プランを替える必要があるかどうか、また相談しましょう、ということになりました。
まとめると、外貨建て運用では以下のような特徴に着目するので上記の差が生まれます。
◇ 金利の違いによる複利効果の差 − 同じ複利でも金利が高い方が有利
◇ 時間をかけたバランスの良い投資 − 老後は保守的な運用に切り替えも可
◇ 長期継続運用 − しっかりと目標金額まで貯め、運用により加速させる
最後にMさんの呟きのフォローを
①まずはありきたりな回答になってしまいますが、投資にはリスクが伴いますので、5%という非常に正確なリターンに着地させることは簡単なことではありません。ただし、過去の実績からすれば過度にリスクを取り過ぎず、バランスのとれた運用を行った上で、決して高すぎる目標ということはないと思います。
②単純な計算ですから、おっしゃる通りです。ここから、Mさんはしっかり元本を残した上での運用をお考えだということが伺えます。1億円を作った上で、取り崩しながら老後の生活をすることも想定されている方もいらっしゃいます。”年金”プランにこだわり過ぎないことも重要です。一方で、1億円で足りるのか、年間500万円で足りるのかというところは少し具体的なイメージを持っていただくようにお話ししました。
③シンプルに答えますと、必ずしも銀行口座は必要ではありません。むしろ手数料ばかりかかったり、口座にロックがかかったりして面倒なときすらあります。資産運用をする場合、原則銀行口座で運用をすることはありません。仮に某有名香港金融機関で運用商品を買うにしても、銀行口座ではなく、それは証券口座になります。お客様の中で、世界中のどこにも銀行口座をお持ちでない方というのはほぼゼロと言えますので、よく使うメジャーな銀行口座をご用意いただけていれば問題はありません。ただし、お支払いの方法などによっては香港の銀行口座を継続して持っておいた方がいいケースもありますので、そこはご案内させていただきます。
今回のお客様のように、数字の具体的なイメージをお持ちの方はたまにいらっしゃいます。それはそれで話がスムーズにいく可能性がありますが、一方で、なぜその数字を意識されているのか、またその数字が達成できないリスクをどのくらい想定できているのか、はアドバイザーと話してみることは有意義です。
残念ながらアドバイザーは言ったとおりに数字を実現するマジシャンではないのですが、お客様がアドバイザーという第三者にお願いしたことによって心理的な不安が解消するのであれば、それはとても大事なことのように思います。お客様自身は「貯める」という部分を頑張る、アドバイザーは「増やす」という部分を頑張るという役割分担です。素敵なセカンドライフが送れるようにお手伝いさせていただきます。
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