インフレ? 本気ですか?

突如インフレが注目されたが。

インフレがにわかに金融市場のトピックとして注目を集めている。ポスト・コロナで緩和に緩和を重ねた金融政策が、高インフレとなって戻ってくるイメージなのだろうか。ニュースでは、ここ最近の株式の下落や債券イールドの上昇はインフレの懸念が高まったからだとしている。

パウエル連銀議長、経済はさらなる連銀のサポート必要 – インフレの懸念強まる

米国債、中期的には価格下落圧力

ヨーロッパ株下落、インフレ懸念で

この「インフレ」とはもちろんアメリカのことで、日本やヨーロッパのことではない。特に日本はインフレ懸念がニュースになれば日銀の緩和政策が成功したということなので宿願が達成されむしろめでたいことではあるのだが。

アメリカはゼロ金利政策が復活しコロナ対策として民間に巨額の資金を注ぎ続けている。おカネの量を急激に増やしているわけだから物価も上昇しそうなものだが、実際のところはどうなのか。下のグラフがアメリカの物価指数だ。

昨年の落ち込みから確かに上昇を続けているものの、それでもわずか1.4%。懸念するほどのことか。では、これから5年後のインフレがどうなっているか、一般人に予想してもらったものだ。たとえば2020年1月の調査なら2025年の物価はどうなっていると予想するか? だ。このグラフをみてみても、5年後に懸念するほどのインフレが来るとは誰も予想していない。いや、誰かは予想していたとしても平均をとるとおよそ2%、連銀のターゲット範囲内である。

この2%前後のインフレ率を予想しているのは市井の人々だけではなくエコノミストの間でもそうである。エコノミストも5年後、市井の人々よりやや高い2.2%のインフレを予想している。

結局、インフレは誰も心配していない

ニュースで報道されるほど、インフレのことは誰も気にしていないことがデータから読み取れる。「懸念されるインフレ」とは5%以上のインフレだろうが、2%前後であってはむしろ一番落ち着きどころの良い数字だ。適度に消費が促進され企業も安心して設備投資できる。

また2%のインフレはそもそも連銀がターゲットにしているインフレであって、しかも2%を超えてきたとしても連銀はそれを認めるだろう。すなわち1.4%程度のインフレは懸念であるどころかウェルカムなのだ。

ただし、金融市場にとってはインフレは必ずしもウェルカムではない。特に債券投資家はインフレによって債券価格が下がる。株式投資はインフレに強いと言われているが、あまりに高いインフレだと株式市場のパフォーマンスは低迷する。これはどこの国のどの金融市場でも一緒だ。

では、今後高いインフレが起こるだろうか。その可能性はゼロではないだろうがかなり低いだろう。世界最高の企業であるアップルですら、何十兆円もの現預金を溜め込んでいる。資金を効率的に使って新しい財やサービスを生み出すことに腐心している。要するに、これだけ低利であっても手元キャッシュがあっても買ってくれる人が限られているため経済を動かすような大企業はカネも借りず使いもしないということだ。こんな状況でインフレが起こりようがない。

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