株式投資家と債券投資家を分かつもの
金融市場は誰にでも開かれた市場だが、選択肢に迷うことは多い。自分自身を見つめ直すことで、株式投資家としてあるいは債券投資家としての才覚が発揮できるかも
アドバイザーの宮脇です。様々なお客様と接するなかで、今回は「お客様が金融商品の選択を行う際の傾向」について感じたことをまとめてみます。
長期・分散・積立は資産形成には最適だが、同時に思考停止でもある
まずは「何に投資するか」ではなく「どう投資するか」の話です。しっかりお金を貯めて一気に投資する人も中にはいるかもしれませんが、一般的には資産を積み上げていく過程においては積立投資を行います。このときによく言われるのは「長期・分散・積立」です。つまり、長いスパンで、色んな資産に分けて、そしてコツコツと積み上げていくことは”最も失敗がない資産形成方法”と考えられています。
一方で、この過程において、どういう資産に投資するかを気にする人は実はあまり多くありません。なぜなら、資産価格が上がっても買うし、下がっても買うからです。もちろん、投資資産を細かく組み替えを行いながら、しっかり増やすことを目指すことはできますが、これもやはり単年度で成績について判断ができるものでもありません。つまり、どこかで思考停止し、自動運転に切り替えなければならない面があります。もちろんあまりに考えなさすぎると、積み上げていたはずの資産がいつの間にかなくなっていたり、ということにも繋がるので最低限のアクションは必要なわけですが。
株式投資家と債券投資家はキャラクターが異なると言われる
金融職を探すときには株式運用するのか債券運用をするのかで、性格的な適性を確認されることが多いのですが、投資家にもやはりキャラクター(性格)の違いは現れやすいと思います。特に一括投資をする場合は、ご自身の性格と向き合うことは意外と大事だったりします。
批判を承知で傾向をまとめるならば、
株屋は「大ざっぱ」で、債券屋は「細かい」性格の持ち主が向いている
と言われます。
株屋が大ざっぱな理由
- 投資資金がなくなってしまってもよいと思っている
- 投資リターンはいつ、どれくらい得られるかは不透明でよい
- 資産価値が数倍に増えていてもあまり気にならない
- 気に入った企業かどうかという感情的な投資基準が存在する
債券屋が細かい理由
- 投資元本が戻ってこないことは避けたいと思っている
- 投資リターンは計算して出てくる方がよいし自分で計算もする
- 資産価値が今いくらなのか逐一確認したがる
- 分析して数字的に納得できる投資を行う
性格だけが重要というわけではもちろんない
他にも、資金が少ない人は株屋になりやすく、資金が多い人は債券屋になりやすいという傾向もありそうです。個人投資家の場合、多い/少ないは主観によるところも大きいです。同じ資金であっても例えば年齢を経るにつれ、少ない→多いに変わってくることすらあります。全てに柔軟に対応、というわけにはいかない部分がありますが、これはアドバイザーとしては感じ取らないといけない投資家自身の状況の変化の一つです。お客様自身でもはっきり認知されているケースもあります。
よく、金融機関で運用を始めるときにはリスク許容度診断がありますが、実はこのあたりを実際にスコアリングすることを目的にしています。たまに、「何で自分が”保守的”だと分類されるのか納得がいかない」という方に出会いますが、大事なのはその理由についてしっかりと理解することであり、それは自分自身を見つめ直すことでもあるのです。いや、それでもなぁ…という人はアドバイザーとよく相談しましょう。
金融市場の変化とレイヤーの存在
投資家側の状況の変化に対し、アドバイザーが補完できることは「金融市場の状況」の変化だと私は思っています。例えば、株式を買うのには難しい局面、債券を買うことはできても何のメリットもない局面というのはそれぞれ存在します。あるいは、お客様は長期の海外旅行をエンジョイ中ですが、突如として投資チャンスが生まれたとき、などです。バブル期に働きざかりだった場合は大金を手にしたかもしれませんが、同時期に小学生だったらそんなことはつゆ知らず、ということが起こるように、人生のライフサイクルに対して、金融市場のサイクルはピタッと寄り添ってくれるわけではありません。お客様が株式→債券、債券→株式と変えていくことを決心されたとしても、それに見合う金融市場がそこにあるとは限らないのです。
また、金融市場にはレイヤー(層)が存在します。世界の金融市場の大部分はあらゆる投資家に開かれている、というのは事実としてありますが、開かれているからといってアクセスすれば良いというものでもありません。金融知識に不安があるとき、「誰かの真似をすれば良いのでは」と考える人がいますが、一市民ランナーが、高山トレーニングをしているプロのマラソンランナーの真似をしてはいけないのと同じです。投資のレイヤー(資産種類、投資手法、運用規模等)を変更するときは、それが本当に適切なのか、あるいは変更するにしてももっと良い方法がないのかをしっかり吟味する姿勢が必要です。
時間を見つけて様々な金融市場と向き合った結果、やっぱり株屋は株屋だ、債券屋は債券屋だな、と思うこともあるかもしれませんが、それは悪いことではありません。あるいは、それぞれにメリット・デメリットがあるので、機敏に切り替えながら投資ができる、それもまた大切なことだったりします。いずれにしても、自分自身を見つめ直すことも株式投資家として、あるいは債券投資家としての才覚を発揮するためには必要です。