オーナー社長が考えたい余剰資産の運用方法

会社経営者、中でもオーナー社長が抱きがちな資産運用に関する悩みをまとめてみる。本業が一番儲かる、という人も資産運用の観点は必要

富裕層担当アドバイザーの宮脇健です。今回は、ご相談いただくお客様にも多い、会社経営者、中でもオーナー社長が資産運用に関してどのような悩みをお持ちなのかまとめてみたいと思います。ちなみに、「オーナー社長」というのは以下のような人のことを指します。

社長は会社を経営する人、オーナーは会社を所有する人、つまり、「オーナー社長」は自らの会社に出資しており、絶対的な影響力を行使するとともに、経営においても絶大な手腕を発揮する人物のことです。ある一面ではスピード感のある経営ができ、またある一面ではワンマン経営だと揶揄されることもあるでしょう。

事業で稼いだ余剰資産をどのように使うか

事業への再投資がメイン

オーナー社長は主には一代で会社を築いた人、あるいは家族経営で脈々と歴史を重ねてきた人ですから、事業投資に対しては積極的です。それに本業というのは最もご本人が時間と労力をかけ、かつ熱意も振り向けてきた分野ですから、一日の長があります。その意味でも、「本業が一番儲かる」とお考えになっていらっしゃるケースが多いです。シナジーなどを意識して一時的に買収などに熱心だったとしても、最終的には「餅屋は餅屋」に徹した方ほど盤石な経営をされている印象はあります。

法人口座でも資産運用は可能

本業は儲かるという話と、稼いだ余剰資産をどうするかという話は往々にして異なってきます。せっかく数十億円という資金ができたとしても、そのまま放置しておくだけでは経営効率を低下させますし、かといって常に事業拡大ばかりを目指すことも正解とは言えません。家族経営ならば、すぐに株を手放して現金化することも選択肢には上がってこないでしょう。そこで考えなければならないのは資産運用です。「財テク」という言葉は若干悪いイメージも伴っていますが、要するに資産の有効活用は重要です。特に本業が順調なときほど、余剰資金が不活用になっていることに気づきづらく、逆に本業が不調になったときほど、何とかして利益をあげるため資産運用に意識が向きやすいのには注意が必要です。

債券運用がメインだが、仕組債には警戒

中小企業の法人口座にとって重要なのは安定運用であることが多いです。資産管理法人以外で、資産運用に頼って収益をまかないたいというケースは多くありません。そうすると自然と、資産運用でリスクを取らない方針が取締役会などで決まっていたりします。そこで入り口としてよく出てくるのが債券投資でしょう。債券=安全というイメージは決して間違ってはいませんが、債券の中にも複雑な商品はあり、それゆえにリスクは異なってくることが多いです。特に仕組債という商品は、投資家にとって魅力的に見えるように作っていますが、仕組の多くは「ゼロサムゲーム=得する人がいれば反対側で損する人がいる」ものですから、購入される際にはしっかりとしたファイナンシャルアドバイスが必要です。大事な会社のお金をギャンブルチックな商品に注ぎ込んでしまっては元も子もありません。

不動産投資は手をつけやすく、しかし出口が難しい

実業の世界にいると、金融商品よりは実物資産である不動産に目が行きやすいというのはあるかと思います。それでも、こちらも債券投資同様、キャピタルゲイン狙いよりはインカムゲイン狙いの方が多いでしょう。実際、不動産は様々な用途で利用することができますし、それゆえに投資用に保有したいと考える経営者は少なくありません。ただし、資産運用のことだけを考えるのであれば、不動産はやはり流動性が低い(=売却に際して手数料と時間がかかる)ですから、結果的に出口が難しい投資と言えます。

個人の資産と会社の資産の区別をどうすべきか

オーナー社長の場合、個人の資産と会社の資産はほぼ境目なく認識しているケースが多いです。それ自体は不自然ではありませんが、資産運用のための口座開設では、契約主体が個人なのか法人なのかを選んでいただく必要はありますし、必要とされる口座開設書類も異なってきます。法人の場合、KYC(本人確認)のプロセスにて複数の取締役や株主の個人情報をいただいたりするケースもありますので、書類集めだけでうんざりされる方もいるとは思います。

そういった手間の部分を差し置くと、個人と法人の一番の違いは税金の取り扱いでしょう。税制度は法人の登記国などによっても異なってきますから、予めポイントを整理しておくことをお勧めします。私たち独立系フィナンシャルアドバイザー(IFA)もまた、事前に顧問弁護士や税理士の方々とお話しすることも必要になってくるかもしれません。

事業の承継に向けていつから動くべきか

オーナー社長だからこそ、次の世代にどう繋げていくかを考えるときがいつかはきます。死ぬまで現役と思っていても、後に残される方々のことは気にしてあげたいものです。社長職のみを退いて外部から社長を雇い、自身はオーナーに徹する方法もあれば、持株を信頼できる人物に売却して、別の事業に打ち込む方法もあるでしょう。事業の承継は、資産運用と無関係では?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそうではありません。こうした所有関係の変化が訪れるときは、資金の置き場について再考をするいいチャンスになります。予め自社株を信託しておくことも一つの選択かもしれませんし、また売却後の資金をどのように管理すれば次のステップにおいて効率的に動けるかも考える必要があります。M&Aなども考えなければならない瞬間がくるかもしれません。退職金の準備を始めることもできるかもしれません。こうしたアレンジメントもまた、資産運用の一つの側面と捉えるべきでしょう。

とはいえ、いざ承継となったときにこういう検討をする時間を設けるのは非常に難しいので、前広に相談しておくことをお勧めします。「こういうことはできないだろうか、ああいうことはしたくない」等、社長だからといって一人で悩むのではなく、呟くがごとく聞いてみればクリアになることもたくさんありますから。

私の方で何かお力になれそうなことがあれば、こちらからご相談ください。

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