2019年の金融市場を振り返る

2019年は米中通商交渉を始め、先行き懸念が燻ったにも関わらず、年間を通してはリスク資産のリターンは良好となった。ざっくりと金融市場を振り返ってみたい

2019年が終わりました。昨年日本は令和の時代に突入し、気持ちを新たにした人も多かったのではないでしょうか。皆さんの昨年の投資成果はいかがだったでしょう。いつ頃投資を始めたのか、また積立なのか一括なのかによっても個々人の投資成果は違ってきますが、ここではざっくりと2019年の金融市場がどのようなものであったのかを振り返ってみたいと思います。

各リスク資産の通年リターン

まずはそもそも株や債券など、諸々の市場資産がどのような通年リターンだったのかをみてみます。

既にある程度振り返った方もいらっしゃるかもしれませんが、結果としては、

2019年はあらゆる資産が値上がりをした

と考えて良いかと思います。そこで思うこと・・・もちろんリターンの大小の違いはありますが、株価が上がれば債券価格は下がる、というようないわゆる逆相関が薄れている??? 少し投資の勉強をされた方であれば、こんな印象を持つかもしれません。そして次に考えることは、あらゆる資産が値上がりする年があるのであれば、あらゆる資産が値下がりする年がくることもあるのでは・・・可能性はゼロではありませんし、金融市場もまた景気のように波がきます。大事なのは繰り返し申し上げているとおり、「資産運用は長期的に考える」ということです。とはいえ足元の金融市場がどのような状態なのかを知ることは大事なことではありますから、昨年の主要なポイントを押さえておきましょう。

各リスク資産における主要なポイント

株式市場

S&P 500は順調に最高値を更新。2019年は米中通商交渉の先行きを懸念して、株価が調整する場面がありましたが、年末には第一段階の合意が見えてきたことで、リスクオンとなり、一年を通してみると、「米国株式市場は右肩上がり」が継続したことになります。その他の主要国の株式も同様で、株式市場全般がパフォーマンスが良かったと見ることもできるでしょう。

債券市場

米10年国債利回りは行って来い。2019年の初めにおいて、年内に利下げが行われることをどれだけの人が予測していたでしょう。昨年は年3回、それぞれ25bpの利下げが実施されました。緩やかな利上げを行ってきた米連邦準備銀行(FRB)でしたが、年央に向けては一転、米中通商交渉の影響などを考慮して、「予防的利下げ」という言い方で昨年を乗り切りました。債券市場全般からすれば、こうした柔軟な対応により、極端なボラティリティの上昇は避けられ、したがって「債券も高値圏」が継続したことになります。日本の場合、こうした世界情勢の影響もあり、日本銀行の掲げる長期金利の目標レンジ(▲20bp〜+20bp)のうち、下限を下回る局面があったことはもはや頭の隅にもないかもしれませんね。また、欧州の方では、大規模な金融緩和パッケージが発表され、世界的な金融緩和環境の継続を印象付けることとなりました。

資源、コモディティ市場

金価格の上昇

普段はあまり注目をされませんし、実際に価格が安定しているから良いとされる金の価格ですが、昨年は大きく上昇しました。一つには金利が低下したからもともと金利のない金の相対価値が上昇した、また一つには米国のリセッションのシグナルを受けて安全資産への逃避が加速した、などが挙げられるかと思います。興味深かったのは諸々のイベントを経ても金価格は元の水準には戻っていないことです。金価格の一時的な上昇はリスクオフにより起こされますが、リスクオフが解消された後も下がらないとなれば別要因があります。需給面でいえば、各国の中央銀行が金保有を増やしていたり、あるいは富裕層の純金保有が増えていたり、あるいは金ETFが普及したことにより、世の中での金需要が増えたと考えるのが自然かもしれません。

石油価格の波乱

オイルのマーケットほどウォッチしづらいものはないと個人的には思っていますが、中東の産油国情勢は緊迫が続いています。地政学リスクとして中東はここ数年ずっと認識されていますし、一般に、石油価格の変化は消費者物価指数(CPI)への影響も(一時的ではありますが)大きいので、情勢が安定しているに越したことはありません。昨年はサウジアラビアにある世界最大の石油加工施設にドローン攻撃がありましたね。2020年に入ってすぐにはイランのソレイマ二司令官が米国により殺害され、一時は緊迫化しましたが、その後は安定に向かいました。

オルタナティブ市場

不動産はREITが良好

米国の不動産市場の話はそこまで見ている人がいないかもしれませんが、こちらも昨年は良好でした。というのも、前述したとおり、株式も債券も高値という状況が続いていますから、どちらかといえばインカムリターン狙い、あるいはインフレヘッジとして不動産は選好されやすい状況です。日本もそれは同じです。低金利環境が続く限り不動産市況には追い風ですし、一方でバブルの兆候が常に監視されているので、大幅なキャピタルゲインは見込みづらいですが、その分安定したリターンが望めます。REITと呼ばれる不動産投資信託により、個人投資家の参入がしやすい仕組みに資金流入していることもあります。

ヘッジファンドは低迷、パフォーマンスは千差万別

昨年もヘッジファンド業界にとっては厳しい年だったようです。一つには業界そのものの高コスト体質がありますが、投資家からすれば株式市場で十分なリターンが得られているなかでヘッジファンドを選好しづらいというのもあるかもしれません。もちろんヘッジファンドはピンからキリまでの世界ですから、いいファンドマネージャーに出会っていればいいリターンを得ることはできたことでしょう。

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プライベートエクイティは順調だが、ドライパウダーも多い

地銀や年金基金がオルタナティブ投資への投資アロケーションを拡大する、というニュースはここ数年よく聞かれます。実際、株式や債券と相関の低いオルタナティブ投資は相対的な魅力感があり、また利回りの最後の拠り所でもあります。プライベートエクイティ分野は未上場株式を扱うため、比較的流動性が低く、一般投資家がアクセスすることは多くはないのですが、「金余りの時代」のなかで資金流入が継続しており、「投資枠さえ手に入れば魅力的なリターンが得られる」ような市場でもなくなってきています。特に、企業価値は非常に高く算定されているため、企業を安く買って高く売りたい人たちにとって、買うものがない状態が継続しています。投資枠はあるものの投資が未実行のこうした枠のことを業界用語ではドライパウダーといい、これが今増加傾向にあります。また、投資実行部分についても、未上場とはいえ株式なので、上場株式市場が落ち込むときには、(程度は軽いにせよ)落ち込むことは想定されます。

PE投資、最盛期は終わりか – カルパースなど年金基金にも懸念広がる – Bloomberg

2019年の金融市場総括

緩和的な市場環境、米中通商交渉の進展を好感し、2019年のリスク資産は全般的にパフォーマンスは良好な結果となりました。年央リセッションの懸念が叫ばれてはいましたが、過度なリスク回避に走らなかった投資家が結果的に良い結果になったと言えます。皆さんの投資判断はいかがなものだったでしょうか。

2019年で大損をした人は相対的に少ないのではと思いますが、実は世界経済は予想以上に成長減速をしてしまいました。例えば世界銀行の経済予測を見ればそれが如実に現れています。

世界経済見通し – 世界銀行

12月の債券市場概観はお休みします。また、2020年の金融市場展望については別稿で書かせていただきましたので良かったら読んでみてください。また、本稿の内容は、普段から弊社AMGのアドバイザーとコミュニケーションいただいているお客様にとっては少し物足りないものだったかもしれません。もう少し詳しくアドバイスが欲しい方、今年に入って具体的なアクションをお悩みの方がいらっしゃれば、直接のご連絡でも、当ページの問い合わせフォーム経由でも構いませんので、是非担当のアドバイザーに聞いてみていただけたらと思います。

関連ブログ:2020年の金融市場を展望する

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