オンラインポートフォリオ診療 – 症例①資産アロケーション

ポートフォリオのオンライン診療でリクエストのあった事例をご紹介。2020年はリアロケーション計画を綿密に練る必要がありそう

先週から期間限定で始めたオンラインポートフォリオ診療に既にリクエストがいくつかいただいています。私たちも手探り状態ではありますが、おそらく質問する方も何をどう相談すれば分からない方も多いはず。そこで、実際にあった相談例を相談者の承諾を得て紹介させていただきたいと思います。

相談者(Nさん)の概要

  • 年齢:30代半ば
  • 職業:経営者(高校中退以降一貫して商売人の道を進む。現在は中国やカンボジア、日本で事業を展開中。数年前に香港に居住した経験)
  • 資産総額:約10億円

(保有資産内訳)

  • IG(投資適格級)社債ファンド 2億円
  • ユニバーサル保険 1億円
  • 株式ファンド 1億円
  • 現金他 6億円

Nさんからの質問とそれに対する回答

「Q1:ヘリコプターマネーが直近では株式に向かっているように見られます。一方コロナが実体経済を痛めているのは事実で、特に内国型ではない企業は、二次拡大を防ぐ目的で海外往来禁止が長期となった場合に、倒産さえも懸念されます。債券は発行体の信用にダイレクトに結びつくので、今回のようなケース(金融緩和と経営悪化の両建て)において、企業の業績悪化は、株価よりも債券下落に発露しやすいのでしょうか。その場合、債券のポジションのリアロケーションも検討すべきでしょうか。」

小椋:もともと投資適格級社債というのはデフォルト率が低い債券なので、一時的な価格下落はあれ、長期保有前提で良いと思います。また、投資家に対する返済の順序としては、債券→株式なので、業績悪化がある場合、株価の下落から起こるのが自然でしょうか。

Nさん:金融市場の節目として、11月の米大統領選挙を想定しています。それにヘリコプターマネーの巻き戻しがもし同時に重なるとしたら債券相場にとっては良いとは思えないのですが、いかがでしょうか。確実に負ける取引はしたくありません。ユニバーサル保険は確定利回りもあったことで今回のコロナショックを免れたのは良かったと思っています。

宮脇:投資適格級社債の価格に関していえば、3月に起こったような下落は異例といえば異例です。通常、金利上昇とクレジットスプレッドの上昇に対して、債券価格は下落という形で現れます。足元は金利が下がっているのでクレジットスプレッドがまだ少し高い状態にあるということが、債券価格が最高値まで戻りきっていない理由かと思います。FRBのジャンク債購入などで市場が今以上に落ち着く局面があるとして、11月以降はご自身の相場観として悲観的だということであれば、持ち値(購入時価格)まで上昇したときに売るというのも一つの選択肢ではあると思います。ただ、今回は現物社債ではなく、ファンド投資ということなので、そこまで細かく考えたとしてもファンドマネージャーが上手く運用するかもしれません。

「Q2:ETFで、米S&P、香港トラッカーファンドにそれぞれエントリーをして行きたいと思っています。セオリー通り、ドルコスト平均法で買っていく予定ですが、時期としてはいつ頃が適切でしょうか?」

小椋:エントリーのタイミングは個人の好みの部分が大きいので、ご自身の納得のいくタイミングが良いだろうと思います。ドルコスト平均法であれば、決めるべきことは投入する投資金額をどれくらいに分るのか、たとえば一億円を1,000万ずつなのか2,000万ずつなのかという問題と、分けた金額を1ヶ月毎の購入なのか3ヶ月毎の購入なのかといったことのような気がします。

Nさん:一つの投資テーマは5Gだろうという感触がありますが、アメリカと香港だったら、税金的な観点で香港のETFを保有しておいた方が良いかと思ったりしますが、どうでしょうか。

宮脇:全く同じ投資をできるETFがあるとしてアメリカのETFか香港のETFかという比較は投資家の居住国等によっても課される税金が異なるので考慮することは非常に重要です。ただ、ETFにとっては流動性(ファンドの資金規模)が重要であることもあり、税金面だけを考えてしまうと、ビッドオファーのスプレッドなどで実は損していることもあるかもしれません。また、アメリカの5Gがいいのか中国の5Gがいいのかという視点なのであれば、今後は同じ5Gといっても経済圏が違ってくると思われるので、単純比較はできない可能性があります。

「Q3:カンボジア事業については軌道に乗ってきたところですが、同時に香港への移住を考えていました。この際カンボジア事業も他の事業も、所有している事業の法人株式を一気に香港に集めて管理するのはどうかと考えています。ただ、コロナの影響で日本にいる時間も少し伸びており、また、ビザの停止などの超法規措置が各国で取られたことが気になっています。税金面でのリスクは何かあるのでしょうか?」

小椋:詳しいことは税理士とも相談すべきだと思いますが、そういった事情の方は多いと思います。香港にいらしたときに法人株式をどのように保有すべきかは今後のことを伺いながら改めてお話しできればと思います。たとえば地域統括会社を香港で作る、タックスヘイブン対策税制における経済活動基準を満たすように香港にオフィスを持つ、また個人資産を信託(トラスト)しておくなどのアイデアが考えられます。何がフィットするのかはゆっくりお決めになればいいかと思います。

Nさんは数年前に一度香港に居住されていることから香港の居住ビザをお持ちですが少なくとも香港政府にはビザの更新停止はなく、むしろ外出できずに役所に赴くこともできずビザを更新できない方たちに対して超法規的にビザの延長を認めています。行政ルールは緩和的に動いているので、ビザの更新や停止がすぐさま税務リスクに直結するとは考えにくいのではないでしょうか。

「Q4:香港に外国人として居住した場合、QOL(Quality of Life, 生活の質)の低さをどのようにしてカバーされていますか?意思伝達性の低さ、サービス品質の低さといったハード・ソフト面ともに課題は多い国だと思います。香港はトレードオフで拝金主義者にとっては優れた制度もあり、そちらは私も大好きなのですが。」

小椋:QOLが低い、というのは人によりますね。私は特にQOLの低さが気になったことはありません。楽しみ方は色々あると思います。日本人にとって広東語はハードルが高いのですが、広東語を話せるかどうかがQOL向上の1つのキーであることは確かでしょう。広東語を話せるだけで香港人は仕事上の信頼感、仕事の速さなども実は大きく影響するので、言語的な壁を取り払うことができればいいかもしれませんね。僕も広東語は上手ではないですが、広東語を話すだけで香港人の身内意識が強烈に高まるらしく、交渉も英語でやるよりは断然スムーズです。移住された際にはぜひ広東語の習得にチャレンジされてはいかがでしょうか。

Nさん:言語は10学んで2くらいしか使わないことも多い(単語帳のすべての単語を会話で使うことはない)ので、効率性の観点からするとあまり前向きにはなれないのはありますが、仕事がスムーズになるという目的があるのであればポジティブです。中心街から離れたビーチのようなところで過ごすというのも一つ考えたいところです。

「Q5:ゴールドはポートフォリオに加えるべきでしょうか?」

宮脇:これまでの株式や債券の話に比べるとやや唐突な感じもありましたが、ゴールドを今回検討されている背景はどのようなものでしょうか。

Nさん:アンカリング効果(直近上昇が継続しているので、今後も上昇するという期待)です。

宮脇:なるほど。今の金価格が高い水準なのか、を判別するのは金価格の場合は難しい面がありますね。東京金価格は最高値更新をしていますが、ニューヨーク金はリーマンショックを経て過去に記録した最高値水準から考えるとまだ上昇余力があります。”余力”というのは目線の問題なので、それを超えて上昇しないとも言えませんし、実際超えてしまえば青天井といえば青天井です。足元上昇してきた理由には色々ありますが、一つは金利低下だと思われます。また、金をトレーディングの対象としてみる以外の視点もあります。資産全体を拝見すると、全体としてインフレに強い資産が少ない印象を受けます。金の場合はインカムになるわけではありませんから、安く買って高く売るというよりは、資産のうち例えば25%を金にしておく、といった考え方の方が一般的かもしれません。金の魅力は紙切れにはならないことであって、インフレ(=貨幣価値の下落)にも強いことが挙げられます。ドルコスト平均法で徐々に保有割合を増やすといったことは考えてもいいかもしれません。それがETFなのか金地金なのかは個人の好みにもよります。”インフレ”は、もろに体感できるようなハイパーインフレが来れば対策する意味を感じやすいですが、先進国だとなかなかそういう機会もなく、何年、何十年とかけてじんわりくるものですから、資産を形成するためというよりは既にある資産を保全することに重きを置いた考え方でしょうかね。

総括

今回の相談者様は非常に明快に論点を展開してくださいましたので、三者面談を通じ、様々な視点からお話しできた良例と感じました。資産運用に限らない話でも私たちは歓迎です。お役に立てれば幸いです。

QRコード https://amgwm.jp/3aQz2TL

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