コロナショック、弊社のクライアントはどう考え、行動したか
荒れ狂うマーケットを静観する、去る、立ち向かう
今回のコロナショックで、普段より多くのお問い合わせを頂いている。本稿では、大きくわけて3つのタイプ「様子見」「現金化」「投資開始」のクライアントのお考えを紹介していきたい。
クライアントA – 様子見
プロフィール
女性(53歳)。都内で2つの大学の講師を兼任。数年前に離婚し財産分与で数億円のキャッシュを得て運用。
ポートフォリオ
ポートフォリオは債券現物7割、株式ETF3割。ピーク時の時価総額から11%下落
ご本人のお考え
そりゃ心配に決まっています。もともとポートフォリオは保守的に組んでいたとはいえ、連日テレビの報道をみると「人類はウイルスに滅ぼされてしまうのではないか」という恐怖さえ出てきます。一応大学の先生をやっているので数字などのファクト、科学的知見に基づいて判断するよう訓練はされているのですが、コロナ自体の伝染より買い占め行動など人々の恐怖の伝染が怖いです。集団心理はこうも間違った方向に向くのかと。大きい米国市場ですらあの動き方ですから、もはや金融市場は需給を調整し資本をよりよく再分配するという本来の機能を喪失していると思います。
とはいえ、この状態には既視感があります。そう、リーマンショック。あのときもリーマンが倒産するというニュースが駆け巡ったときに売りが押し寄せてパニックになってましたよね。地獄の釜の蓋が開いたように思えましたし、全世界が「金融市場のメルトダウン!」なんて騒いでおりましたが、結局は市場は数年で元いた場所まで戻りました。その後金融緩和も功を奏してリーマンショック前の水準を大幅に超えていきました。
そういう意味で今回の危機もかつて幾つもあった危機の1つに過ぎません。何ヶ月か、あるいは何年かかかって回復していくのでしょう。いま豪奢な生活をしているわけではないので生活にかかるおカネはコロナがあろうがなかろうが変わりません。仕事も安定していますし。
知人は日経平均が18,000を下回ったところで保有していた日本株をすべて売ってしまったそうです。ちょうど21,000くらいの水準で証券会社に勧められたものをあれやこれや購入していたんです。日経平均が連日大幅に下げていくのを見るのが恐怖で私にアドバイスを求められて「待てるならそのまま塩漬けしておけば?」と言ったのですが、結局その知人は恐怖に打ち勝てなかった。金融資産なんてもともとただの紙切れなわけですから、そこに自分の人生を乗っけるには心もとないものなんですよ。人生を乗っけちゃうから恐怖が出てくる。恐怖が出てくるから待てずに損失が確定してしまうのでしょう。資産運用なんてものは、ほどほどの距離感をもってやらないと。
ですので私は今回の危機も何も買わず何も売らずに数カ月後なのか数年後なのかになる回復をじっと待ってようと思います。
クライアントB – 今すぐ現金
プロフィール
男性(41歳)。不動産業。
ポートフォリオ
株式10割、ETFと現物。ピーク時の時価総額から27%下落
ご本人のお考え
いやぁ、不況の匂いがしてきましたよ。美味しそうないい匂いが。
過去2-3年、都内でそこそこマシな利回り物件なんてほとんどなかったでしょ? 私のビジネスはマンション一棟のブツ上げでここまで来たのですが、最近ホント売り物がなくて。これでも三方良しの商売を心がけていますから、貧乏サラリーマンにワンルーム・マンションなんかを高値で押し付けるような商売のやり方は絶対イヤなんですよ。
でも、最近ようやくまたこの商売で一儲けできる予感がしてきました。地方からですが、いい物件がちょこちょこ上がってくるようになったんです。不動産業をかれこれ20年近くやっているので分かる。良い物件は都内の中心地から売れていき、放射線状に広がって最後に地方の物件がアホみたいな高値で取引されます。ここまで来るとさすがに少しマーケットのことを知っている人間はバブルだなと分かるわけですが。モノの価値を分からない個人投資家がこの最後の上げ相場でなけなしの自己資金を全額投入して数年後ポシャるわけですよ。
そしてまたバブルがはじける過程で物件が出てくるのが地方から中央へ逆戻り、なんですよね。ですので地方からいい物件が出てきたということは、不動産バブルが終わりつつあり、次の底に向かうサインなわけです。不動産の場合は常に相対取引で、株式のようなオークション市場があるわけではないですから価格が落ち込むときでも多少時間がかかります。時間稼ぎできる余地がまだある。
われわれのような不動産販売業者は売り先のお客様はすでにたくさん抱えているので良い物件を仕入れられるかどうかがポイントです。そして良い物件を仕入れられるタイミングは好況時ではなく不況時なんです。まぁ、言い方悪いですけど買い叩くわけですから。好況時は買い叩けないですからね。
個人居住のマンションはたしかに値崩れしにくいという特性はある。株式のように1日で10%も下がることはない。しかし本業の収入が途絶えたりしてローンが払えなくなったりするとやっぱり物件を売りに出して手元現金を確保しなきゃいけない。でも今のように誰も出歩かなくなってしまうと売り在庫が溜まっていくわけです。ここ最近、新築マンションの成約数も下がってきているし、販売時にいきなり値引きするケースも増えてきた。
そこに私は不況の足音を感じるわけですね。良い物件が仕入れられれば、手元に現金があれば売り主にさらなる値引きを交渉できます。それを顧客に転売することで転売益はさらに厚いものとなります。ですので可能な限り手元に現金をおいておきたい。不動産業者としてこれから2-3年がまさに勝負どきです。
ということで、AMGに預けている資金は口座を維持できるくらいの資金を残して残りは引き出します。
クライアントC – 投資開始、底狙い
プロフィール
男性(55歳)。日系大手証券会社を退職後15年前からベンチャーファンド運営。
ポートフォリオ
まだ弊社では資産運用を開始していない。
ご本人のお考え
今までが高すぎたんです。株式も債券も。じゃ今は安いかって? いえ、適正価格に戻ったくらいじゃないですか。安いとは言えない。しかし投資妙味は出てきたと思います。
先日のように一時的には株価は持ち直すでしょうし、各国が連携してとんでもない財政支援をするわけですから短期的に人々の痛みは和らぐのかもしれません。とはいえ、たとえば2兆ドルの米国の支援策でも2月の株価ピークから米国株式市場から8兆ドルが失われているわけですから、支援金額2兆ドルすべてが株式購入に向いたとしても株価は戻らないわけですよ。それに、たかが1,200米ドルの一時金で当面の生活がしのげるわけありません。
これから悲惨なニュースがいっぱい出てくるでしょう。失業者もあふれかえるでしょう。また経済が停滞することで銀行は貸し渋り・貸し剥がしが起こったりすることで信用収縮につながるかもしれません。リーマンショックの際は派遣切りにあった人たちが年越し派遣村を作っていましたが、今回は正社員ですらも危うい。派遣村、アルバイト村そして正社員村といろいろ出てくるかもしれません。さすがに中央銀行は素早く資産の買い入れを実施し市場の安定を早期に実現していますが、SNSで際限なく拡散されるネガティブなニュースに人々の恐怖がますます増幅されていくような気がします。すなわちこれでパニック売りは終わらず二番底三番底があるイメージです。
経済アナリストなんかは「リーマンショックのときとは違う。リーマンは金融システムが傷ついたがコロナは実体経済が傷ついている」なんてしたり顔で言うのがいますが、あの手合いは商売したことないんだろうなと思います。今実体経済が傷ついたせいで投資家の投資意欲は大きく減退しています。たしかに以前よりは金融機関にレバレッジがかかっていないでしょう。リーマンショックは実体経済が悪くなる前にいきなり金融システムに直撃し、そこから実体経済が悪くなっていったという流れですが今回は実経済が金融機関の経営を不安定にするという意味での金融システム不全が起こらないとも限りません。そしてまたその不全は実体経済に波及していく。
金融システムも実体経済も持ちつ持たれつなので、どちらかが健全でどちらかが不健全ということはありえない。悪くなったときはお互い侵食するんです。世界中が金利を下げても、中央銀行が市中から証券を買っても実体経済で大きな需要が失われいてるわけですから。日本が過去ずっとやってきてインフレターゲットに成功していないのと一緒で、大きな需要が失われているなかでの金融政策って限界がある。アメリカ政府が1,200米ドルを配っても一時的に需要が喚起されるでしょうか。大半の人は次のショックを恐れて貯金するでしょう。
まだまだ金融市場における焼け野原は見えてない。今回は政府も中央銀行もすごいスピードで動いている。金融市場を焼け野原にしまいという強い意志を感じます。ですのでこの状態は投資を始める適正水準に近づいてきただけ。これから投資を始める立場としては、ここからさらに20-30%の下落を見たいのですが。そうなれば、適正水準から下に乖離し10年に1度の買い場が来たといえるでしょうから。
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