貯蓄型外貨保険、契約書にサインする前に確認して欲しい3つのこと
貯蓄型外貨保険を検討される方に、是非契約書にサインする前に確認してもらいたいことを挙げてみます。認識ギャップや先入観を持っていないか、そしてどんなIFAと契約をしようとしているか。後悔して中途解約しなくていいように。
カスタマーリレーション担当の白井です。今回は、色んなお客様の契約を見てきたなかで、アドバイザーとしての経験も踏まえ、しばしば苦悩するポイントを少しお話ししたいと思います。貯蓄型の外貨保険は人気ですので、まずはこのタイプの商品にありがちな問題そしてそれを避けるための確認についてお話したいと思います。
確認1. 言ったつもり、分かったつもりになっていないか
数多くのお客様とお話をして、よく感じるのはアドバイザーとお客様の「認識ギャップ」であり「先入観」です。アドバイザーはお客様のニーズを汲み取って(そう、”聞いて”ではなく”汲み取って”が正解なのですが)、かつ必要事項をしっかり説明する義務があります。ただ、現実にはお客様の金融知識、そして金融への興味が千差万別なので、お客様の発する言葉を額面通り受け取ってはいけない場面のほうが多く、常に悩まねばなりません。
「認識ギャップ」や「先入観」の例
- 例1 アドバイザーは「過去5年間は利回り10%くらいできましたが、将来の利回りは保証できない」と伝えましたが、お客様は(心の中で)「ふむ、(今年も)利回りは10%くらいで運用してくれるんだ」とご自身で脳内変換しニコニコしている、というケース。アドバイザーはお客様の顔色を見て、「あ、しまった」と思うのですが、あとのまつりです。アドバイザーはこの経験を踏まえて、次に来られたお客様には(利回りの数字は出さずに)「将来の利回りは分かりませんが」と正直に説明しますが、お客様はやはりこう聞きます、「どれくらいの利回りを期待していればいいでしょうか」と。そして「過去5年間は利回り10%くらいできましたが…」のループです。
- 例2 アドバイザーは「貯蓄型外貨保険の月々払いのプラン」を案内しましたが、始めから「海外積立定期預金」をするつもりで聞きに来たお客様は、「保険」という言葉は頭には残らず、積立方式の外貨定期預金か何かを案内してくれたと信じて疑わない、というケース。アドバイザーは頑張って、”保険”ですよ、と案内し続けますが、お客様はそもそもいつ解約しても良い積立と思っているので、やめたくなったらやめられることをアドバイザーの口からなんとか聞き出そうとします。事実として、保険であってもやめられるにはやめられますので、「本当にやめたくなったらやめられます」とアドバイザーは言います。でも、”保険”である以上、最初に設定した契約期間を満了することが多くの場合ベストであり、途中でやめるということは契約違反に近いので基本的にいい事はありません。シンプルに言えば、それまで積み立てた金額が返ってくることはあまりないからです。
- 例3 金融への興味の程度という点では、ある人は「株は必ず持つものだ」と無意識に思っており、かたや、ある人は「株なんてギャンブルだからやめた方がいい」という思い込みがあったりするのです。片方は他方に対して、「え? どういうこと?」ということに必ずなります。金融に興味があれば「株は儲かるものだ」と思っているかもしれませんし、金融に興味がないと「株は危ないものだ」と思っているかもしれないのです。こういう話は本来、友人同士で話をするだけでも面白いかもしれないですね。それくらい人が持つ知識と興味には違いがあること、そして自分はどういう考え方をしているのかを客観的に知ることも大事です。大事なのは、どういう考え方をしていても間違いというものはないのです。ただ、どういう考え方なのかを知らずに投資をしてしまうと、「思っていたのと違う」といつか気づくことになります。ちなみに、アドバイザーとしてはこの「株式を保有するか否か問題」についてはニュートラルです。資産運用において株式保有は有利に働くこともありますが、結局はクライアントがどのような運用を求めているかどうかによって保有するべきかどうかは違ってきます。たとえば3ヶ月だけ運用するのであれば株式よりも定期預金のほうが良いですね。
言ったつもり、分かったつもりを避けるためにも、アドバイザーから聞いたことはメモを取るなりしてご自身の記憶が勝手に良い方向に解釈しないようにすることが大事です。
確認2. 商品の特徴。特に解約手数料について
一つの発想の転換として、貯蓄型外貨保険というのは住宅ローンを組んで家を買う行為に近いと思っていただければ、少しイメージしやすくなるかもしれません。何が申し上げたいかというと、①大きな買い物をするという意識を持つこと。次に、②その分割払いをしているんだという意識を持つこと、が大事だということです。
途中で家を売り払って住宅ローンを返すことはできるでしょうが、そのときに残債が残る可能性(つまり損をしている可能性)はあるのはご理解いただけますでしょうか。ただ、貯蓄型外貨保険が唯一住宅ローンと異なるのは、原資が借りたお金ではないという点です。借りたお金だったら、その後必死で返さないといけないでしょう。
とはいえ、大きな買い物だからといって、もっと年をとって生活が楽になってから始めようと、決断を先延ばしにすることがいいわけではありません。早く始めるからこそ、後になって楽になるということはあります。だってそれがコツコツと積立をする意味なのですから。
商品設計上、途中で積立をやめられるのは事実です。しかし期間のごく一部で積立をやめてしまう場合についてのシュミレーションをしっかりとアドバイザーと相談しておかれたほうが良いでしょう。
日本人の方の場合あまり意識にはあがらないかもしれませんがそもそも国民年金も厚生年金も、年金”保険”であるから、本来同じような仕組みです。途中から払わないという選択肢は積極的には与えてもらっていないはずです。ちなみに日本のiDeCoでもそうなっています。だから、(日本の年金に比べると)「海外積立はフレキシブルだ」という印象は持たない方がいいかとは思います。年金を納めるのと同じように、しっかり満額払うつもりで始めること、これが一番のポイントです。だから契約するときに無理な設計をしてはいけません。
万が一、当初の計画と違って未来が不本意な方向にいった場合、たとえば2年後解約すればどうなるか、5年後解約すればどうなるかというようなことを知っておくことが大事です。人間は最悪の場合に備えることができれば正しいリスクテイクをするものです。したがって商品の概要、特に解約手数料がどれくらいになるのかはきちんと確認しておきましょう。
確認3. どんな方が商品の話をしているのか、どんなアドバイザー(IFA)と契約するのか?
長期間の契約をする以上、「どこのアドバイザー(IFA)から買うか」は非常に重要です。商品としては同じものを扱っているケースが多々ありますから、この点に関して「どこでもいいや」と思ってしまうことが考えられますが、後々悔やまれる結果になり得ます。あなたが契約しようとしている商品を説明しているのは、アドバイザー本人ですか? それともアドバイザーから営業を委託されている方ですか? 後者の場合、残念ながらかなりの確率で悲しい結末を迎えてらっしゃいます。
- 利回りが保証されているはずなのに、5年経過しても増えていない(弊社の見解: そちらの商品は利回りは保証されていないタイプのものです)
- 商品を紹介してくれた方と連絡が取れない(弊社の見解: こちらで監督官庁のウェブサイトで確認したところその方は金融免許のあるアドバイザーではなかったようです)
- よく分からない年会費5万円を取られている(弊社の見解: それは商品独自の手数料ではありません)
このように、雑な商品説明を聞いているせいで運用に対する期待値が異常に高く(お客様の見解: 毎年10%は儲けさせてくれると聞きましたよ?)、商品に対する理解も浅い(お客様の見解: リスクのない安全な商品ですよね?)。事実を説明すると「では、解約します」となり莫大な解約手数料が取られて元本が割れたままの悲しい結末。
私どもも可能な限りお手伝いさせていただきたくは思いますが、最初の認識があまりにも掛け違っておりますとそれを是正することもなかなか難しく、結局は「今回はご縁がなかったようです」とお断りするケースも少なくありません。
ですので私どもがアドバイスできるチャンスはご契約をされる前しかありません。そこで、お客様から見てアドバイザーを選ぶときには以下の点に留意されるのが良いでしょう。
① 契約満了まで面倒をみてくれそうか
② 問い合わせには迅速に答えてくれそうか
③ 自分が理解するまでとことん付き合ってくれたか
あたりがきっと大事になってくるのでしょう。①②については金融ライセンスを保有しているかどうかが大きく関わってくるでしょう。ライセンスがあるとアドバイザーとしての責務を全うしなければならないからです。逆にライセンスがなければトンズラしても法的責任を負いません。
過去に他社で契約された方が保険会社との契約を解除しないかたちでの証券移管、資産移管という形で持ち込んで来られるケースは結構な数にのぼります。その都度、①〜③はクリアできているのかと自分自身に問いかけています。また、お客様はサービスを選ぶ立場ですから契約前も契約後も弊社AMGだけではなく他の会社のアドバイザーにもご相談されるとより良い選択ができるでしょう。
資産形成という長い長い階段は誰もが登るべき階段であり、そして誰もが途中で登るのを諦めたくなる階段でもあるのですから、無理にない範囲で、精一杯後押しをさせていただきたいですね。
一にも二にも確認。分かることを諦めないことが大切
今回の投稿を見て、「何だか分かったような分からなかったような」という感覚を持った人もいるでしょう。①多分私の言いたいことが分かったような分からなかったようなと思ってくださった人は結果的にはきっと問題ないのです。なぜなら、分からなかった部分は直接話を聞いて理解しようとする方だからです。
問題は、② (分かってないのに)分かったとおっしゃる方と、③そもそも分かることを途中で諦めてしまった方(おそらくこのタイプの方は途中で投稿を読むのをやめてしまっているのでこの文までたどり着いていないでしょうけれど)です。認識ギャップが大きいまま資産運用を始めるので、のちのちそのギャップが上記のような問題となって顕在化してきます。
ちなみに弊社のお客様で、チームヘッドの小椋が2007年から7年間ほぼ毎日書いていた800字から2000字の短めのブログおよそ2,300本を一つ残らず読んできたという方が数名いらっしゃいます(こちらは現在非公開ですが時期を見てアーカイブとして公開する予定です)。短いとは言うものの流し読みするだけでも数日かかるボリュームですから、アドバイザーに命の次に大事な資産を預ける前にご自身がどれほどアドバイザーのことを理解しようと努力されたのかが分かります。そして事前に理解し準備された方ほど認識ギャップが少ないので資産運用が上手くいっています。
資産運用がしんどい部分はまさにこの点。ご自身が知らないことを知ろうとすることなのです。皆さん資産運用というと株だ投信だチャートだとテクニカルなことばかりに目が行くようですが、ご自身のリスク感度や資産運用業界における事業者の立ち位置、またアドバイザーを使う場合はそのアドバイザーが何を考えているのかを知ることのほうがよほど大切。逆にそれができれば、資産運用に成功したのも同然でしょう。
アドバイザーとしてお客様との理解ギャップをどう埋めるかは永遠の悩みですが、きっとどなたも将来に備えるため、明るい未来を見るためにわざわざ弊社を訪ねてくださるのですから、頑張ってお力になれるように頑張りたいと思っています。
今回のお話はご契約前の確認事項でしたが、ご契約を終えた方で手続きの観点から確認すべきことは以下の投稿にありますので、こちらもあわせてご覧ください。