富裕層が注目する永久債の特徴、そして投資のリスクやメリットを考える

しばしばプライベートバンクから提案され、また富裕層だからこそ注目する永久債の特徴、そして投資のリスクやメリットをまとめてみる。ハイリスク・ハイリターンといっても個々に見ていく必要がある。

以前のブログで、香港までわざわざ買いに来る債券3選というのをまとめていますが、今回はその中でも、しばしばプライベートバンクでよく提案され、また富裕層だからこそ注目する「永久債(Perpetual Bond)」にテーマを絞って、その投資のリスク、そしてメリットを考えてみたいと思います。

関連ブログ:日本の投資家がわざわざ香港に来て買う債券3選

永久債の特徴を一言でまとめる

さて、「永久債」という言葉を聞きなれない方もこのブログを読んでいると思いますので、どんな債券なのか、その特徴をまとめてみます。

永久債(えいきゅうさい)とは、国や企業などが資金調達を行うために発行する、元本の満期償還の規定がない債券である。永久債は発行体が存続する限り永久に利子を支払うかわりに、買い戻す必要は無い。投資家は償還を要求できないが、発行体は一定期間後に償還オプションを有することが多い。

つまり、一言で言うならば「満期のない債券」です。

債券というのは保有期間中に利息が定期的に支払われ、満期に元本分がまとめて返ってくるものだ、という基本的な理解は間違っていません。でも、そうでない債券も世の中には例外的に存在するということです。ただし、投資初心者の方にこういった債券を勧めることはありませんので、プライベートバンクを利用したことがある方、投資にこなれてきた方でなければ、満期のない債券にそもそも出会うこともないはずなので、その点の心配は無用です。

永久債への投資に伴う3つのリスク

投資を考えるときにはまずリスクから。ということで永久債そのもののリスクを3つほど考えます。

リスク1 出口戦略

満期がないとはすなわち、放っておいても償還はされない(元本が自動では返ってこない)という意味です。したがって、「満期保有」という投資手法が成立しません。債券に投資した資金を回収するには「売却」という方法を選ぶしかありません。では、永久債の市場価格は一般にどのように計算されるかというと、以下になります。

債券価格 = 債券利息 / 市場金利

すごく簡単にいうと、市場の金利が高いと安くなり、市場の金利が低いと高くなるという、もっとも基本的な動きをするということです。そう、現在価値という発想の根本であって、普通は市場価格がどんなに安くなっても満期まで待てば元本割れはしない、と考える人が債券を保有していますが、永久債の場合は市場価格の影響をもろに受ける、ということになります。

リスク2 デフォルトリスク

債券で常に押さえておくべきデフォルトリスク(発行体が倒産するリスク)は永久債の場合、もっとシビアに見ることをおすすめします。なぜなら、通常、どんなにデフォルトリスクが高まっても、実際にデフォルトしなければ額面の100が丸々返ってきますが、リスク1に示した通り、手放す手段が売却しかないので、デフォルトリスクが高まって市場価格が下がるということは起こるからです。特に、銀行債ではなく、ソフトバンクやアップルなどの事業会社が永久債を発行する場合、事業が永遠に継続するのか、という問いかけにも繋がります。もちろん銀行も潰れることはありますが、社会インフラ化した企業だからこそ事業が肥大化しないことを見守ることも大事です。

また、永久債の場合、そもそもデフォルトしたときの返済の優先度、すなわち弁済順位が低く設定されている傾向があります。たとえ格付けが投資適格級(BBB-以上)であっても、弁済順位の低さはデフォルトの確率を高める、ということに注意が必要です。一般には以下の順序で弁済がなされます。

銀行借入金 → 普通社債 → 劣後債 → ジュニア劣後債 → 優先株式 → 普通株式

すなわちデフォルトしてしまうと、会社に残余財産がない場合は債券であっても償還はありません。よく「債券だから安全だ」というのは株式と比較して、ということであって債券だから元本が保証されるわけではないことを知っておきましょう。

リスク3 償還リスク

投資家にとって資金の回収方法は売却以外にないと話しましたが、債券発行者側には投資家に資金を返すかどうかについていくつかのオプションが用意されているのが一般的です。

一番メジャーなのはコーラブルオプション(Callable Option)です。

コーラブルオプションとは、予め決められたタイミングで、債券発行者は額面100で債券を償還させて投資家に資金を返すかどうかを決められるというものです。このオプションが行使されると、投資家が損をする可能性があり、また気づかない間に債券が償還されていて、実は資金が運用されていない状態になっていた、ということが起こり得ます。このため、コール日の管理が必要です。永久債に満期日はないと言いましたが、コール日を満期日と想定して利回り計算をするのも一つの手にはなります。もちろんコール日に必ず元金が戻ってくるという誤解はしてはいけません。

コール日に差し掛かるにあたっては、一般には市場価格が100を上回っているかがポイントにはなります。市場で購入すれば110のものを債券発行者は100で買い戻せる、と考えればメリットがありそうですよね。難しいのはこれはあくまでオプションなので義務ではありません。たとえ行使した方が有利であっても、行使しないという選択肢が残されています。改めて債券を発行する手間を考えたり、あるいは改めて新規募集に踏み切ったときは前の保有者とは違う債権者となって、安く資金を調達できない可能性があるからです。もちろんオプションが行使されなければその後も持ち続けられるので投資家は「嬉しい」となる人もいるかもしれませんが、市場の反応は実は逆です。有利な条件のオプションを行使しなかったのには、今すぐお金が返せない理由があるとか、借り換えをするのに何か懸念があるのではないか、といった背景があるのではと勘繰りますので、オプションの非行使はしばしばニュースでも取り上げられます。実際、今年に入って永久債の発行を拡大した中国でも、一方でコールの見送りが話題になっています。

また、債券発行者が金融機関である場合は特に、偶発転換社債(CoCo債)であるケースが多いので、どういう条件がついているかについても注意が必要です。これについては以前まとめたことがありますので、CoCo債券についてもっと良く知りたいという方は是非読んでみてください。

関連ブログ:プライベートバンクからCoCo債券(偶発転換社債)を勧められたら立ち止まって考えるべきリスク

永久債への投資に関する2つのメリット

リスクをざっと見てきたところで、次に、投資のメリットについて2つほどまとめてみます。

メリット1 利回りが比較的高め

永久債はいわゆる株式と債券の中間の性質を持つ「ハイブリッド証券」ですから、通常債券で期待できる利回り(1〜3%)よりも少し高い(4〜6%)のが特徴です。

ただし、ここでも確認すべきポイントがいくつかあります。

利息は変動なのか固定なのか

リスク1で市場価格の影響をもろにうけるのが永久債だと話しましたが、その影響を少し抑えて安定的に投資家に購入してもらうために、変動金利を採用する永久債もあります。例えば市場金利+4%といった水準ですね。価格のブレは抑えられたかもしれませんが、投資のリターンがブレることにもなりますので、良し悪しがあります。安心して利息を受け取りたい人には固定金利の方が向いているかもしれません。

利息は四半期払いなのか、半期払いなのか、年払いなのか

あくまで受け取りのタイミングの問題なので、中長期で運用をされる場合には総額として差はほとんど出ません。ただし、資金を出し入れなさる場合などは気にしておくのは良いかと思います。債券の利息の頻度でメジャーなのは半期払いや年払いですので、四半期払いに固執すると、選択肢を狭めてしまうかもしれません。

メリット2 原資回収後はほぼ確実なリターンを生む資産へ

投資においては「投資回収期間」を意識される方も多いと思いますが、例えば1億円の投資家をして、利回り10%で10年経過したとします。累積リターンは100%ですから、原資である1億円は既に回収済みです。その後続けて利回り10%を生むとしたらあとは多少リスクがあっても心理的な負担は軽くなりそうです。

不動産で当初レバレッジをかける(借り入れをして運用する)人はこういう発想が顕著ですが、不動産の場合は築年数が経つと建物が劣化するなどで利回りが落ちるリスクもありますが、社債の場合はこれがありませんし、不動産と違って管理の手間も増えたりはしません。永久債の「満期がない」という性質はこの観点から見ると実はプラスに捉えられる方もいらっしゃるように思います。

永久債を具体的に考察してみる

最後に、これまでまとめたリスクとメリットを踏まえ、練習素材として具体例を2つほど考察してみましょう。なお、各具体例はAMGとしての買い推奨ではないことをお断りしておきます。

具体例1 ノルウェーの銀行

発行体名称 DNB BANK ASA

セクター Banking

発行国 ノルウェー

発行通貨 USD

利息 6.5%(年払い、変動)

満期 Perpetual(満期なし)

次回コール日 2022年3月26日@100

債券タイプ ハイブリッド、CoCo(偶発転換社債)Trigger 5.125%

債券格付け BBB(S&P)

弁済順位 Jr Subordinated(ジュニア劣後)

最低投資額 200,000.00

〜考察〜

ノルウェーにおける最大手の銀行であるDNBが発行した債券です。ヨーロッパ、特に北欧はマイナス金利、と思っている人もいますが、ノルウェーはもともと石油産業で潤っていますので、景気も比較的良く、また石油を扱う関係で米ドルを扱うことも一般的です。そのため財務状態も良好で、Tier-1資本比率も20.30%(2019年6月末時点)と、CoCoのトリガー5.125%に対して十分なバッファーを持っています。直近は$105くらいで取引されていますから、コール日まで2年以上あるので、コールされても元本割れするということはなさそうです。ただし、金利は年払い、かつ変動金利です。弁済順位はジュニア劣後とやや低めですが、格付けでいうとS&Pから投資適格級の判定をもらっています。最低投資額は$200,000なので大体2,000万円くらいからです。

具体例2 グローバルな生命保険会社

発行体名称 Prudential Plc

セクター Life Insurance

発行国 英国

発行通貨 USD

利息 5.25%(四半期払い、固定)

満期 Perpetual(満期なし)

次回コール日 2019年12月19日@100

債券タイプ ハイブリッド

債券格付け BBB+(S&P)

弁済順位 Subordinated(劣後)

最低投資額 200,000.00

〜考察〜

有名なプルデンシャル生命保険の親会社が発行した債券です。親会社は英国ですが、世界的な企業ですから米ドル建てで発行することに違和感はないですよね。生命保険会社は生命保険料で運営しているんじゃないの?だったら債券をなぜ発行するの?と思う方もいるかもしれませんが、債券は事業の運転資金や様々な金融規制要件を満たすために発行されます。この債券は利息が四半期払いなので、5.25%のうち4分の1ずつが四半期毎に入ってきます。固定金利なので市場の金利が上がっても下がってもずーっと5.25%のままです。次回のコール日が非常に近いこともあり直近は$100をわずかに切るくらいで取引がされています。ずっと保有される見通しの人は手間も避けるため、コール日が過ぎてから改めて価格をみながら購入を検討するというのも一つの手です。もちろん、コールされないと腹をくくって安いうちに買っておくというのもありかもしれません。弁済順位は劣後なので、ジュニア劣後よりは高いですが、依然として低めであることに変わりはありません。格付けはS&PでBBB+と、投資適格級の中でもまだ格上げの余裕がある位置です。こちらも最低投資額は$200,000なので大体2,000万円くらいからです。

まとめ

以上、永久債の特徴、投資のリスクやメリットでした。このように一口に永久債といっても色々な特徴があるので、パッと見て債券だと思って安心するのは良くないですし、個々にどのような条件がついているのかを知っておく、あるいは担当者に確認しておくことが重要です。金利が再び低下基調にある今、債券発行の期間も長期化しやすく、また投資家が利回りを求めてより満期の長い債券へシフトを起こしやすい環境であると思います。今まで以上にリスクとリターンのトレードオフを考えながら投資したいものです。

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