100兆円超え? のタンス預金
タンス預金はなぜ生まれるのか。 そしてタンス預金をしてしまう方へのアドバイス。
“タンス預金増え、個人保有の現金初の100兆円突破” こんな記事が今年3月の新聞が掲載され「ああ、やはり皆同じことを考えているんだなぁ」と思った人は多いはず。私個人も多くのお客様とお話している中でそういった事は最近よく耳にする。「もし万が一」に備えておきたいと…
日本政府の借金
ちょっと前までいろいろな理論が出ていて、”危険水域だ”や”いや、自国発行可能通貨であれば問題ない”といったようなどちらとも判断が付かないような論争があったことは記憶に新しい。どちらが正しいのかは私自身にも分からないが、しかし頭の良い人たちのように難しく考えずに単純に「無尽蔵、無節操な借金」が決して正しくない、という方向は正しいような気がしている。”いくら借金をしても大丈夫”というのはたとえ子供たちに対してでも説明に行き詰ってしまうだろう。日本は対外資産がたくさんあるから大丈夫、というのも相手が存在するものでもあるのでこれもちょっと心許無い。また財務省が公表している諸外国との比較でも日本が対GDPに対して突出して高いのもかなり気掛かり。
借金には当然のごとく“金利がもれなく”付いてくる。最近の報道で知っている方も多いかと思うがアメリカの金利も少し怪しい動きをしている。日本だけが今までもいつまでもずっと同じ、というのは全世界が経済関係でつながっている今、それは難しいであろう。もし仮に金利が上がるような局面が来たときは政府の借金も“返さなければいけないおカネ”が増えるのは当然だ。
どれだけ立派な理論であろうが結果は後になってみないと決して誰にも分からないものであるが、国として稼げる金額に対して他の先進国と比較してこれだけ多くの借金を抱えてもさらに “大丈夫だよ、きっと… 明るい未来がきっとこれからやって来る!” と考えるのはちょっと頭の中にお花畑の感覚であろう、というのがこのタンス預金の増加という国民の行動の結果につながっているのではないだろうか。
タンス預金のメリット
では次に増加傾向と言われているタンス預金のメリットについて考えてみたいと思う。
- 手元にあるのでいつでも自由に使える
- 万が一の事(銀行破綻や災害によるATM使用不可)に備えて
- 銀行と共倒れにならない
- 国に監視されない(個人情報の保護?)
- 金庫に入れて置けばおカネは減らない
思いつくところおおよそこんなところかと思う。もちろんもっと人には言えないような“ご事情”を含んだおカネもあるかもしれないが。
タンス預金のデメリット
反対にデメリットについては以下の通り。
- 盗難にあう可能性
- 火災や自然災害などで消失してしまう可能性
- 大きな金額を動かすのが大変
- インフレに弱い
- 紙幣デザイン変更など政府の政策に左右される
こうして考えてみた時にデメリットの方が多く簡単に思いついた。実はもっとたくさんのデメリットが思い付いたのだが。
タンス預金をしている方へのアドバイス
私はどちらが正しいのかこの場では判断したくないのだがファイナンシャルアドバイザーの資格を持っている以上、あまりお勧めしていない“タンス預金”のデメリットについていくつか私見を述べてみたいと思う。①②③は簡単で④⑤を厚めに考察していきたい。
1. 盗難にあう可能性
これは考えるまでもないが常に金庫を監視していなければならず、家庭事情によっては家族であっても心配という人も少なくないのかもしれない。さらに盗難対策としてホームセキュリティーを導入しているかもしれない。この心理的負担や経費負担を考慮すると…
2. 火災や自然災害などで消失してしまう可能性
これは全く予見が不能であるが過去の経験から自然災害は全く安心!っていう人は皆無であろう。どれほど大きく頑丈な金庫を用意していても自然災害後の火災で焼け野原になってしまった後に”金庫ごと”誰かに持ち去られてしまったらお終いだ。これは金の延べ棒でも同じことだ。
3. 大きな金額を動かすのが大変
これはおカネを持っていればいる人ほど悩む問題であろう。クレジットカードを決済するにも銀行口座からの引落しであったり、家を買うにも“現金払い”で持ち込んでもまともな不動産会社であれば銀行振込を要求してくるであろう。また常に現金を手持ちしていなければならず、その緊張感を保ったままであれば楽しい事も100%楽しめないかもしれない。過去に香港へ相当多額の現金を手持ちで持ち込まれたお客様がおられたが(もちろん課税済みのカネ)飛行機内でも空港に着いてからも自分の手から現金が離れるまで全く楽しめなかったとのこと。その後の解放感は相当だったらしく美味しいお酒を全身の血液がお酒に変わるほどご馳走していただきました。この場で改めて御礼を申し上げます!
4. インフレに弱い
“インフレに弱い” 実はこれを知っていない、もしくは実感できない、という人が想像以上に多く存在するような気がする。インフレとは簡単に言えば“物価の上昇” 日本はここ数十年ずっと物価が上がらずに“デフレ”の状態であったが故にインフレを実感するのが難しいことが原因だと思う。また学校教育でもインフレに関連して将来価値や現在価値といったような生活や将来の資産形成に必要な大切なことをあまり重点的に教えていない事も原因のひとつかもしれない。
例えば金庫に100万円入れておいて20年間そのままにしておくとする。20年後、金庫を開ければ盗難に遭わない限り100万円はしっかりと残っているはず。しかしその100万円が20年前と同じ価値で同じ物価で同じ物が買えるだろうか?それは恐らくきっと不可能だ。身近なところで考えてみればとても簡単。例えばJRの初乗り料金や缶ジュース。私の小さい頃の国鉄(JRの前身)の初乗り料金は大人で100円か110円だった記憶がある。それから考えただけでも約40%近くの値上げ。たばこやお酒などは税金が大きく関係してくる物はその時々の政治の状況により影響されてくるので単純比較は難しいがそれでもかなりの値上がりである。もし仮に物価の上昇率を年間1%ずつ平均的に上昇したと想定すると20年後には100万円の物は約122万円になる。すなわち20年後に同じ物を買うには122万円が必要となる。言い換えれば、“金庫からおカネが減っている”という事と同等の意味になる。これが実は“誰もが投資をしなければいけない”という理由はこのインフレ対策にあることを学校では教えてくれない…
弊社の相当な資産家のお客様のオーダーはいつも決まっていて、「インフレに負けないように」この一言。決して「がっつり儲けてください!」という言葉を聞いた経験がない。
5. 紙幣デザイン変更など政府の政策に左右される
新しい紙幣デザインへの変更。2024年に予定されているものとは意味が異なる(はず)のだが、脇道に逸れて歴史を振り返えって新円切替。これは過去の日本の政策であったのだが、戦後の混乱期に行われた。この当時は古い紙幣は無効とされ、強制的に新しい紙幣に交換をされた。その後に強烈な大増税が行われた”過去の事実”は各自で調べて欲しい。
本題に戻すとこの新しい紙幣デザイン(切替)により古い紙幣が使用できなくなる可能性を含んでいる事もリスクとしては覚えておいても損はない。もちろん日本国内では古い紙幣を銀行へ持っていけば等価値で交換をしてくれるであろうがルールはいつ変更になるのかは普通の人には分からない。しかしもし海外の銀行などの古い紙幣を持ち込んだ場合、海外では認識ができず受け入れを拒否される可能性も考えておく必要はあるだろう。これはもしかしたら海外へ資金の流出を食い止めたい目的のひとつなのかもしれないが(笑)