運用ケーススタディ – 海外事業の縮小

運用資金ができるのは意図せざるときも多い。海外事業の縮小により、残余資金ができた場合もIFAは役に立つ存在になるようだ

アドバイザーの宮脇健です。本稿では、資産運用におけるケーススタディ(具体例)をお話していきたいと思います。今回のお題は「海外事業の縮小」です。

シチュエーション

現在、52歳のTさんは複数の国をまたいでアパレル事業を展開する3代目社長。結婚して妻と息子と3人で暮らしています。自身の代では、中国本土に縫製工場を保有し、一時は経済成長も追い風に事業拡大しましたが、事業の先行きのことを考え、工場の閉鎖に向けて大きく方向転換することに決めました。従業員の解雇や退職金の支払いなど、諸々を済ませつつも、工場をたたんだ後の海外での残余資金は、これまでのキャリアで縁のあった香港で運用してはどうかと考えます。

Tさんが懸念していること

Tさんは、これまで家族経営会社の社長として、地に足のついた経営を目指してきました。今回の中国事業の縮小は積極的撤退であって、また事業チャンスを見つけて出ていきたいとは考えています。ただし、自身の年齢からすると、もう一旗挙げる機会がすぐに来るかどうかは分かりませんし、息子さんには必ずしも継いで欲しいと思っていないので、無理な拡大をして、今の会社を押し付けることになることは避けたいと思っています。当面は目の届く事業範囲に絞って精一杯仕事をしつつ、余剰資金の運用もできないものかというのが課題です。

Tさんの取ったアクション

Tさんは今回の事業縮小について、何人かの友人に相談をしていました。その中で、事業撤退の手伝いをお願いした、ファイナンシャルアドバイザーがおり、海外法人をどうすべきか、また撤退時の残余資金をどう扱うべきかについても相談をしました。既に何度も事業計画について話はしていましたのでよく知った間柄ですし、Tさんは資産運用について自分なりの意見もかなりありますので、適度な距離感で資産運用ができると期待しています。Tさん自身、家族との時間を少し増やしたいとも思っていますし、現地での資金の運用マネージャーはいて欲しいという思いもあったようです。

運用の目的、期間、金額を決めていく

今回は初めましてからのケースではありませんが、念のため、改まって面談を一度設け、資産運用の目的設定と、運用期間、そして運用金額を伺いました。簡単にまとめると以下のようになります。

【目的】海外資金の運用

【期間】最低10年程度 

【金額】およそ2億円

ちなみに、その他にTさんが呟いていたことは

①海外資産の相続はどのような処理になるのだろうか?

②どういう資産に投資するかはお任せはしようと思うが、興味自体はあるので会ったときに話はしてもらえるだろうか?

③いざとなれば引き出せる資金ということでお願いできないだろうか?

でした。メモメモ。

運用プランの例

今回の依頼は余剰資金の運用ということでしたので、投資リンク型保険(ILAS)による運用プランをご提案いたしました。

米ドル建てで一括運用をしたケース (1ドル=108円を想定、運用利回りは6%程度)

一括投資 200万ドル(2.16億円)

65歳での解約金 389万ドル(4.20億円)

82歳での解約金 1,034万ドル(11.17億円)

今回のケースでは、絶対値としていくらまで運用で増えて欲しいという要望はありませんでした。逆にしっかりと資金を残した上で、利益が出るのであればそれで良いという発想ですね。ただただ複利で運用すれば上記のようなカーブが描かれますが、恐らくTさんの中にはこのイメージはありません。プライベートバンクですと、ベースの運用委託費用などが高いケースもあり、いわば”慎ましい”運用をしたいというニーズには答えづらいところもあるようです。

上図の例は結果的に毎年運用利回りが6%程度台だった場合の数字になりますから、現実には運用期間中のブレはあります。ここではあくまで数字の確認が目的です。

また、今は歴史的にも金利が低いので6%を目指すから保守的だ、ということにはなりません。市場環境によってはより高いリターンが見込めるかもしれませんし、その逆もまた然りです。そのため、市場環境によって運用スタイルを変化させることは一括運用の場合は必要なことがあります。

まとめると、投資リンク型保険(ILAS)では以下のような特徴に着目していただきたいです。

◇ 税金の繰延効果 – 運用中に出た利益はその場では課税されず、再投資が可能

◇ オーダーメイドな運用プラン – 契約途中で運用スタイルを変更することも可能

◇ 早めの相続対策 – 生命保険の特徴を利用して、相続をご自身の意思通りに実現

最後にTさんの呟きのフォローを

①海外資産の相続についてですが、いわゆるコモンローと呼ばれる英米法圏内の場合、プロベート(検認裁判)というのが行われます。このプロセスは一般に半年以上かかるとされていますので、やむを得ない場合以外はやはり避けたいところです。プロベートは遺言書を書いたからといって避けられるものではありませんが、生命保険の形態で運用を行い、受益者を指定しておく、あるいは信託を設定しておくことによって回避することが可能になります。

②投資の意思決定にどのように関わりたいかは、お客様によって異なります。仮にお任せいただいた場合でも、ご要望に応じて運用報告はさせていただきますし、お客様自身が時間のあるときに、運用に関する知識をつけられることはアドバイザーとしても嬉しいことですのでお手伝いさせていただきます。

関連ブログ:投資の意思決定は自分でするのか、アドバイザーに任せるのか

③投資してすぐやめられるもの、というのを前提に資産ポートフォリオを組むのは簡単ではありませんし、その分リターンは望めません。ただし、大きめの一部解約を予定されている場合はそれを織り込んだ上で運用を行いますので、ご安心ください。

今回のお客様のように、海外にそのまま資金を留めておきたいというニーズはそれなりにございます。日本人の場合、日本との距離を意識して、金庫番が香港にいるというのは、いざとなれば会いに来れるという安心感があるようです。外資系プライベートバンクのように、担当者が変わるリスクも少ないのでそういう意味でIFAは使い勝手が良いのかもしれません。

アドバイザーとしても、資金をお預かりした後、あまりに疎遠になるとご本人や家族の状態がなかなか分かりませんので、少なくとも年1回はどのような形にしてもお話しする機会をいただくようお願いしております。相続人への分配の仕方に関しても気が変わるかもしれませんからね。必要な場合は、信託等のサービスを合わせてご案内させていただいております。

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