債券市場概観 – 2018年8月

先月の債券市場をざっくり概観

香港では船に住んでいる人がいます。

一見するとラグジュアリーなヨットなのですが沖に出ることはありません。浄水も下水もドッグとつながれています。香港の異常に高い陸上の不動産と比較してヨットはお値打ち。別に海は好きではないけれど、仕方なく船に住んでいるという人もけっこういるようです。そんな船上住まいな人たちが政府によって追い出されるかもしれない、というニュースがありました。表向きは「再開発」ということですが、追い出されるほうにとってみればたまったものではありません。寝床を政府は確保してくれるわけではありませんからね。これもまた、香港の格差問題ではあります。

毎月1度の債券市場アップデート。 さて今月も頑張っていきましょう。

クローズド・アカウント内限定の債券に特化

初めての方へ。

弊社には有価証券、ファンドは事実上なんでも買える”オープンアカウント”と買えるものがある程度限定されている”クローズドアカウント”の2種類をご用意してございます。このシリーズではクローズド・アカウント内で購入可能な債券を対象としており、債券市場全体を対象としているわけではありません。もしお探しの現物債券がリストになくともオープンアカウント内で購入できる可能性がありますので、お問い合わせ頂ければと思います。

債券市場一言コメント

アルゼンチン

ずいぶん昔、日本がアルゼンチンタンゴを踊る日という本を書店で見た時「恥ずかしがりやの日本人も情熱的なタンゴを踊る日が来るのかぁ、日本人がラテン系のノリになったらさぞかし日本も明るくなるだろうなぁ」と馬鹿なことを考えたものです。この本の内容は日本の構造改革が遅れてアルゼンチンのようにデフォルトを起こす日がくる… という明るいどころか暗いトーンでしたが、日本国のデフォルトは起こらず、現在アルゼンチンが過去9回目のタンゴもといデフォルトを起こそうとしている最中です。 市場経済を推し進めた大統領の何が施策的に間違っていたのか、IMFがどのように介入するのか、など興味のある経済テーマではあります。

それにしても、アルゼンチンはどういうつもりで1年前に100年国債を発行したのでしょうか。また投資家はどういうつもりでその100年国債を購入したのでしょうか。発行時、その瞬間ではクーポン7.125%で需給バランスが取れたのでしょうが。格付け会社は発行時”シングルB + 安定的”という評価を下しておりましたが、これはギリシャやボスニア・ヘルツェゴビナと同じ格付けです。しかも超長期債券ですから感覚的にはクーポン9%以上もらわないと検討の余地すらないと思うのは私だけでしょうか。

リーマンショックの際にサブプライムローンモーゲージ債券に高格付けをつけた格付け会社が叩かれてましたが、今回のアルゼンチンの件をみてると結局ふつうに格付けしたとしてもマーケットが良ければ高くなるし、不景気でマーケットが悪くなれば安くなる、ってことだけですね。投資されている方には失礼な物言いですが、マネーは行き場を失うとバカになっちゃう、いい例でした。

HNA起死回生?

このニュース。中国格安航空会社大手のHNAグループの借金総額が2005年以来初めて減少した、と。先月も取り上げたHNA、社長がフランスで怪死して「共産党の口封じか」なんて言われてましたし、社長の後任指名で一悶着ありましたがやればできる。ドイツ銀行株からニューヨークの高層ビルまで、かつての日本がバブルで沸いたときのようにトロフィーアセットを買いまくったツケを払っています。公的資金注入の一歩手前で踏みとどまっていますが、ここから自力再建できればすごいことですよね。しかし危機的状況には変わりなく、HNAの債券に買い注文が殺到している事実はありません。

貿易戦争と債券市場

米中貿易戦争は長期化の様相を呈していますが、まだこのダメージはマーケットが十分に織り込んでいるとはいえないのではないでしょうか。今後

  1. 悪い決算
  2. 株価下落
  3. 市場センチメント悪化

という流れも視野に入れなければいけませんね。

債券投資を始めたいけど勉強する時間がない

とはいえ、「決算とか市場とか、そんな細々したの見てるヒマない」。そんな意見を代表するようなメールを頂戴しました。

いつもブログ楽しく拝見させていただいております。債券投資を始めようと思っていますが、普段仕事で忙しくて債券投資について勉強する時間もなければマーケットを見る時間もありません。理解のできないものには投資をするな、という格言もあります。なので債券投資はあきらめたほうがいいでしょうか?

もしこの方が今後も債券投資について勉強しないおつもりであれば、債券投資は諦めたほうがいいですね。しかしどれくらい勉強したら「わかった」という気分になるのでしょうか。または弊社のアドバイザーはクライアントにどれくらい「分かっている」ことを期待しているのでしょうか。この件について弊社のアドバイザーと話していましたところ

「金融知識ゼロからであれば6時間くらいの知識入れが必要」

との結論に達しました。ざっくり最初の2時間は中学校の社会科の復習、次の2時間は債券の仕組み、最後の2時間は個別債券のリスク、といったところです。この「金融知識ゼロ」という状態はブルームバーグはもちろん新聞も読まず、中央銀行が何をするところか知らず、数字アレルギーで桁を1つ間違えるような方を想定しています。

ちなみに資産運用のための勉強が難しく感じてしまうのは多くの方が

  • 運用基礎知識
  • 市場動向

この2つを一緒に考えようとするからなんですね。債券投資の基礎といっても基本はカネ貸し。ちなみに株式市場は事業投資です。なので資産運用と言っても「事業に投資をする」のか「カネを貸す」のかの2種類しかありません。そしてのこの仕組み自体は過去300年間変化がありません。あとはどういう構造で投資をするか、ファンドなのか現物なのか、アクティブなのかパッシブなのかいう技術的なことだけです。事業なのかカネ貸しなのか、現物なのかファンドなのか、手数料はいくら取られるのか。こういったことはクライアント自身に理解してもらう必要があります。

逆に不要なのは市場動向。

投資対象は市場の動向に影響をうけます。その市場動向は拾うべきニュースが無限にあるので「資産運用は難しい」と感じちゃうのです。「資産運用の勉強をしよう」と始めたはいいものの挫折してしまった方は、おそらく市場動向を追っかけて疲れちゃうのではないでしょうか。アドバイザーたちもすべてのニュースに目を通せるはずもありません。せいぜい一日10本、多くて20本くらいじゃないでしょうか。ただ、アドバイザーはそのニュースにより多くの文脈を見つけます。過去の知識を総動員するので、1本のニュースからより多くの意味を読み取ることができるのですね。しかしこの技術はふつうの投資家には不要ですし、もし投資家がこの技術を身に着けてしまったら私たちは商売上がったりですし…

このように私たちの会社では

  • 基礎はクライントご自身に理解してもらう
  • 市場動向は興味がある程度にご自身で、興味がなければ追わなくてOK

といったスタンスでおります。ですので先ほどのメールを下さった方ですとやはり基礎はご自身で押さえて頂くことになります。実際、弊社のクライアントでもニュースを追っかけない方のほうが資産運用がうまくいっている気がします。気になっちゃうと売買したくなりますもんね。

ところで6時間の債券投資の速習コース… いずれ弊社のアドバイザーたちに作ってもらいたいものです。メールを下さった方、担当アドバイザーにプッシュしてください。

クローズド・アカウントで購入可能な債券本数

先月から3本増えて現在

573

本がクローズド・アカウントにて購入可能です。購入可能な債券リストはこちら(Google Spredsheetに飛びます)。

ランキング

1. 値動きトップ 2. 値動きワースト 3. ハイイールド の3つのカテゴリーでのランキングです。ランキングの母体は上述のリストからです。同じ会社で複数債券を発行している場合は、その中でもっとも良い(悪い)ものを1つだけ選んでいます(数字は8月31日時点のものです)。値動きの計測期間は過去1ヶ月です。オファープライスはお取引価格(債券価格と未確定クーポンを足したもの)、格付けは特に断りがない限り発行体に付与されたものではなく債券に付与された、S&Pのものを使います。

以下出てくるような値動きが激しいものは、とくに流動性がない(売買が成立しづらい)ものですから投資するには担当アドバイザーとよく相談してください。

値動きトップ3本

この1ヶ月で債券価格が上昇したもの上位3本です。

上昇幅+6.67%, NOBLSP 6.750% 29Jan2020 Corp (USD)

香港の資源商社。もはや常連です。。

オファープライス USD50,080.73
格付け D
満期までのイールド(実質利回り) 80.38 %
表面利回り 6.750%
償還期限 2020年1月29日

上昇幅 +6.45%, AUSGSP 7.450% 20Oct2018 Corp (SGD)

更新をサボってるわけではありません。たまたま先月と同順位。オーストラリアのマイニング会社。値動きの激しい常連さんです。こういう壮絶な会社の社長と10分でもお話する機会があれば、自分の会社への愚痴とか減りそうです。

オファープライス SGD 139,024.28
格付け N/A(格付けなし)
満期までのイールド(実質利回り) 82.36%
表面利回り 7.450%
償還期限 2018年10月20日

上昇幅+3.78%, SDCOKI 7.250% 26Oct2020 Corp (USD)

新登場、Zhongrong International Resources Co., Ltdです。石油、石炭、天然ガスの採掘の会社。コモディティ系は今後景気後退局面があれば相当つらいでしょうね…

オファープライス USD149,059.22
格付け B
満期までのイールド(実質利回り) 26.37%
表面利回り 7.250%
償還期限 2020年10月26日

値動きワースト3本

この1ヶ月で債券価格が下落したもの上位3本です。

下落幅-15.77%, HSINCG 8.500% 22Jan2019 Corp (USD)

先月も登場、香港の不動産会社、Hsin Chong Group。香港の地下鉄事業でトラブっております。

オファープライス USD71,189.04
格付け BB
満期までのイールド(実質利回り) 192.88%
表面利回り 8.500%
償還期限 2019年1月22日

下落幅-6.24%, LIFUNG 5.250% Perpetual Corp (USD)

こちらも香港ベースのグローバルサプライチェーン。上半期業績が10%下落、最近S&Pに格付けされ泣きっ面に蜂。創業1939年の老舗企業は今後どうやって生き残るのでしょうか。あと1ノッチ下がればジャンク債成りです。そうなるとますます調達が難しい。頑張れ財務担当者!

オファープライス USD156,616
格付け BBB-
満期までのイールド(実質利回り) 6.862%
表面利回り 5.250%
償還期限 永久債

下落幅-5%, MDLNIJ 6.950% 13Apr2024 Corp (USD)

中国・北京の不動産会社、 Modernland Overseas Pte. Ltd.(発行体はシンガポールベースです)。中国の不動産会社は怖くて手が出にくいですよね。

オファープライス USD177,204
格付け B
満期までのイールド(実質利回り) 10.432%
表面利回り 6.950%
償還期限 2024年4月13日

ハイイールド上位3本

ハイイールド(High Yield)とは、もともとクーポンが高かったり債券価格が大きく下がって満期を迎えたときにより大きなリターンを手にすることができる債券のことです。

192.88%, HSINCG 8.500% 22Jan2019 Corp(USD)

香港不動産デベロッパーですね。もし無事償還を迎えられれば3倍近くになります。もはやギャンブル。

オファープライス USD71,189.04
格付け なし
満期までのイールド(実質利回り) 192.88%
表面利回り 8.500%
償還期限 2019年1月22日

82.36%, AUSGSP 7.450% 20Oct2018 Corp (SGD)

オーストラリアの採掘会社、Ausgroup Ltd。今月は残念ながら一位を明け渡しました。来月償還を迎えてしまいます。クローズドアカウントにはもうこの会社の債券はこの一本だけしか残っていません。この会社に言及するのも今月で最後かも…

オファープライス SGD139,024
格付け なし
満期までのイールド(実質利回り) 82.36%
表面利回り 7.45%
償還期限 2018年10月20日

78.4%, NOBLSP 6.750% 29Jan2020 Corp (USD)

値上げ幅1位に登場した香港のコモディティ商社。

オファープライス USD47,744
格付け D
満期までのイールド(実質利回り) 78.4%
表面利回り 6.75%
償還期限 2020年1月29日

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