債券市場概観 – 2018年11月

先月の債券市場をざっくり概観

香港不動産市場もパニック、コスト以下で売る

香港の不動産の高騰は世界的に悪名高いです。以前小椋が書いたブログにもありますとおり、世界一不動産が高い街となっております。

香港がこの不動産の活況を単純に喜べないのは、ひとえに香港人の所得が不動産の伸びにおいついていないからです。たとえば香港人の所得が10%上昇し、それにあわせて不動産価格が10%上昇したのなら名目上不動産価格は上昇したとしても実質的には負担は変わりません。むしろ所得が10%も上昇したことを喜ぶべきでしょう。

しかし実情はそうではありません。所得が上がらずに不動産価格が高騰しております。これは香港だけでなく世界的に同じような状況です。金融緩和によってリスク資産が跳ね上がるのはどこも一緒なのです。香港は中国人不動産バイヤーの流入、不動産デベロッパーによる売り渋り、米ドルとの通貨ペッグで香港独自に金融政策の幅が限定されていることもあってひたすらに上昇を続けてきたのでした。

香港は失業率も過去最低ですし、2017年度はGDP成長率3.8%。経済は絶好調に見えるわけですね。数ヶ月前までは香港不動産市況の悪化なんて香港人であればほとんど誰も想定していなかったでしょう。典型的なバブルの末期ですね。金融資産や不動産を保有しておけばお金持ちになれるという幻想にとらわれていてはなかなか現実を見れなくなってしまうのです。

投資家が浮かれているときに、不況を知らせるカナリアはどこかで鳴いているものですが個人的な香港不動産市場におけるカナリアはこちらでした。

不動産デベロッパーのカントリーガーデン、馬鞍山の新築不動産をコスト以下で販売開始

SCMPが報じたところによりますと、中国系不動産デベロッパーのカントリーガーデンが土地取得価格も含め建設コストを下回る価格で売りに出したそうです。今までの不動産デベロッパーのやり方は、コストに粗利2-3割を乗せて販売するのが普通でした。粗利を乗せなければ、すなわちコスト以下で売るのであれば次の不動産の建設予定地を取得することもできませんし、そもそも経営が成り立ちません。

カントリーガーデンはマレーシアに10兆円かけて中国人70万人移住させる計画がマハティール首相の「ビザ発給禁止令」によって頓挫しかかっています。そういった事情もあって手元になるべく多くのキャッシュを確保しておきたいと考えているのでしょう。得れば売るほど損をしたとしてもいい。100万円かけて作ったものを売りたいが、明日の120万円より今日の90万円がほしいという状態なのです。

もちろんすべてのデベロッパーはそうではありません。むしろ多くの香港系のでデベロッパーは手元現金も潤沢で無謀な安売りをしなければならない差し迫った理由はありません。しかし一社が安売りを始めてしまうと、それに追随する必要も出てくるでしょう。またそれが買い手心理に与える影響も大きく、「今後ますます安くなりそうだから買い控えよう」となるのが自然です。

すなわち香港不動産市場はマイナスのスパイラルに突入してしまう瀬戸際にいるのです。

イールドスプレッドがますます狭く

まずは用語の説明を。

イールドスプレッドとは、2つの債券のイールド(金利)の乖離のこと。債券Aが4%で債券Bが3%であれば、イールドスプレッドは1%。

よく基準にされるのが米債券10年。この米債券10年のイールドに対して他の債券がどれくらいの乖離があるかでリスクを図り、割安割高を判断します。また同じ発行体の債券同士を比べることもよくあります。イールド自体はBloombergなどネットで拾えますから、イールドスプレッドは特殊な端末や計算機がなくとも計算することは可能です。弊社のお客様の中にも、月1回ご自身の債券ポートフォリオを値洗いしてイールドスプレッドを記録されている方がいらっしゃいます。

このイールドスプレッドですが、満期が違えば当然イールド差が開きます。たとえば米国債2年と米国債10年であれば、10年のほうが不確実性が高いわけですから2年のものよりもイールドが高くなるのがふつうです。

とはいえセオリー通りにはいかないのが金融市場。スプレッドイールドが正の値(たとえば10年イールドから2年イールドを引いて1%など)と通常はなっているものが、スプレッドイールドが負の値(たとえばマイナス1%)となるときがあります。それは不景気に入る6-12ヶ月前。

セントルイス連邦準備銀行の統計によりますと、過去3回の不景気(1990年、2001年、2008年)の直前において米国債10年と米国債2年のスプレッドイールドが負の値となっていることが確認できます。投資家心理でいうと、

“直近の景気は不安視しているが(短期債券のイールドが高くなりがち)、長期的には楽観している(長期債券のイールドが低くなりがち)ことになります。この米国債の10/2年のスプレッドイールドは”景気後退指標”として知られています。スプレッドイールドが負の値となれば、それは数四半期で不景気が来ることを暗示している、というのです。たしかに米連銀は長期債券を買い入れておりました。これはすなわち人為的に長期国債のイールドを下げることにつながりますから、10年/2年米国債のスプレッドイールドがマイナスとなるのはあながち不思議ではありません。

とはいえ現在は金融政策が正常化していく過程です。グラフを見る限り、10/2年米国債のスプレッドイールドはわずか0.25%。現在ブエノス・アイレスで行われているG20の米中会談のゆくえによっては、投資家の短期見通しが悪化しスプレッドイールドがマイナスになる場面が出てくるかもしれません。そうすると、景気後退まで短ければあと数ヶ月だと思っていたほうがいいかもしれません。

クローズド・アカウントで購入可能な債券本数

先月から5本増えて現在

584

本がクローズド・アカウントにて購入可能です。購入可能な債券リストはこちら(Google Spredsheetに飛びます)。

ランキング

1. 値動きトップ 2. 値動きワースト 3. ハイイールド の3つのカテゴリーでのランキングです。ランキングの母体は上述のリストからです。同じ会社で複数債券を発行している場合は、その中でもっとも良い(悪い)ものを1つだけ選んでいます(数字は11月30日時点のものです)。値動きの計測期間は過去1ヶ月。オファープライスはお取引価格(債券価格と未確定クーポンを足したもの)、格付けは特に断りがない限り発行体に付与されたものではなく債券に付与された、S&Pのものを使います。 以下出てくるような値動きが激しいものは、売買が成立しづらい(流動性がない)ものですから投資するには担当アドバイザーとよく相談してください。

このランキングは購入できる債券が限られた「クローズドアカウント」内のものです。債券市場はこれよりもずっと広大ですから、リストにない債券を購入される方はアドバイザーとよく相談してください。

値動きトップ3本

この1ヶ月で債券価格が上昇したもの上位3本です。

上昇幅+5.47%, EVERRE 7.500% 28Jun2023 Corp (USD)

中国の不動産会社、China Evergrande Group(恒大集団)の債券です。2020年満期の11%クーポン、総額10億ドルの債券募集がこの前発表されましたね。現在630億米ドルの債券発行総額ですから、もはやこの規模になると”Too big to fall(大きすぎて潰せない)”なのかもしれません。

オファープライス USD177,804
格付け B
満期までのイールド(実質利回り) 11.99%
表面利回り 7.500%
償還期限 2023年6月28日

上昇幅+5.28%, FANHAI 7.750% 27Jul2020 Corp (USD)

不動産を中心としたコングロマリット、Oceanwide Holdings Internationalの発行。中国のデベロッパーに対しては債券発行基準が一気に厳しくなりました。視点は全く違いますが、日本のバブル崩壊を招いた総量規制と、信用抑制という面では共通するところがあります。

オファープライス USD180,271
格付け CCC
満期までのイールド(実質利回り) 17.578%
表面利回り 7.750%
償還期限 202年7月20日

上昇幅+4.31%, EVERRE 8.750% 28Jun2025 Corp (USD)

1位と同じくChina Evergrande Groupの満期が長いものです。

オファープライス USD 173,399
格付け B
満期までのイールド(実質利回り) 13.06%
表面利回り 8.750%
償還期限 2025年6月28日

値動きワースト3本

この1ヶ月で債券価格が下落したもの上位3本です。

下落幅-22.01%, UNILIC 3.000% 19Sep2021 Corp (USD)

中国の保険会社、合眾人壽保險股份有限公司です。総額USD500Mと小さく、取引も活発には行われていないようです。ビッドオファースプレッドに注意する必要がありますね。

オファープライス USD131,914.19
格付け N.R
満期までのイールド(実質利回り) 20.73%
表面利回り 3.000%
償還期限 2021年9月19日

下落幅-14.91%, SDCOKI 7.250% 26Oct2020 Corp (USD)

天然資源商社を中心とした中融国际控股有限公司が発行する債券です。エネルギー系は石油の下落もあってどこも苦戦してますね。

オファープライス USD115,628.77
格付け B
満期までのイールド(実質利回り) 47%
表面利回り 7.250%
償還期限 2020年10月26日

下落幅-7.25%, GDPOLY 8.250% 25Jan2020 Corp (USD)

クリーンエネルギーを掲げて太陽光やバイオマスなど取り扱う会社、Panda Green Energy Group Limitedです。

オファープライス USD153,223
格付け B-
満期までのイールド(実質利回り) 42.89%
表面利回り 8.250%
償還期限 2020年1月25日

ハイイールド トップ3本

満期までのイールド116.49%, HSINCG 8.500% 22Jan2019 Corp (USD)

先月に引き続き一位死守。香港の不動産会社、Hsin Chong Groupです。5月時点で別の債券でデフォルトを起こしております。ふつう債券は満期が近づくとマーケットプライスは額面に近づく傾向がありますが、この債券の場合はまったくそんな気配はありません。しかし先月より若干価格は上昇しました。

オファープライス USD92,380
格付け N.R
満期までのイールド(実質利回り) 116.49%
表面利回り 8.500%
償還期限 2019年1月22日

満期までのイールド75.06%, CSSXF 7.950% 15Feb2019 Corp (USD)

こちらもハイイールド部門前回第三位だったのが順位を一つあげました… 中国のソーラー会社です。ハイイールド部門で勝利するということは、信用状況が悪化するということなので素直には喜べませんが。

オファープライス USD50,834.79
格付け N.R
満期までのイールド(実質利回り) 75.06%
表面利回り 7.950%
償還期限 2019年2月15日

満期までのイールド63.99%, EHICAR 7.500% 08Dec2018 Corp (USD)

新人です! 中国のカーレンタルサービス、eHi Car Services Ltd。しかし満期があと1週間後ということで、来月にはこの債券はなくなっております。こういった債券は業界関係者である程度

オファープライス USD114,177.50
格付け N.R
満期までのイールド(実質利回り) 63.99%
表面利回り 7.500%
償還期限 2018年12月8日

これら現物債券の購入アドバイスや手数料についてのご相談はこちらからどうぞ。

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