2018年の市場展望2/3 – 具体的なリスク

2018年の市場展望2/3 – 現在は景気拡大の最終局面にあります。とはいえ個別具体的なリスクにいちいちめくじら立てずおおらかな資産運用をすることが肝心。

2018年の市場展望1/3 – まずはざっくり

からの続きです。

現在、景気拡大局面の終盤

具体的なリスクの説明に入る前に、現在の景気がどの局面にあるのかを説明しておきたい。この景気の局面の理解を横軸とし、具体的なリスクを縦軸とすることで個別のリスクにおっかなびっくりする必要がなくなる。資産運用でやってしまいがちなミスの一つとして、個別のリスク事象をあたかも経済全体の事象であるかのように捉えて漠然とした不安感から完全にリスクオフしてしまうことだ。経済は様々な事象が複雑に絡み合っており、地球の裏側の羽音がこちらに到着するころには轟音になっていることもある。ただ平時にはそれはまれで、大きな経済の流れがあって個別のリスクはそれに吸収されてしまうことが多い。

なのでまずは大きな経済の流れを確認し、その後に個別のリスクを確認するという流れとする。

まずはその大きな経済の流れから。景気にはサイクルが存在する。この景気サイクルは一般的に4つの局面(回復、拡大、後退、不況)があるとされている。順番に見ていきたい。

回復

景気の底。直近の例でいうと、リーマンショックが終わってから数ヶ月間。この時期にはインフレ率、賃金、新規設備投資が落ち中央銀行では利下げが終わっていることが多い。先の景気回復局面では利下げだけでは足らず中央銀行がリスク資産を買いまくった(量的緩和)。消費者の景況感もこの時期最悪だが、経済の先行指数である株式指数はこの時期にすでに底を打って上向いていることが多い。

拡大

拡大局面。景況感でも底打ち感が広まり、消費者信頼指数なども上昇し始める。拡大局面の最初のステージでは需要不足、供給過剰のギャップを解消するために国が様々な政策(公共事業、個人の減税、手厚い福祉)を行うことが多い。利下げにより企業も個人も借り入れを行いやすくなっており新規での借り入れが増加する。カネが回り始め、中央銀行は公定歩合を上昇させ引き締めに入る。2018年はまだこの局面だと考えられる。

様々な長さの満期をX軸、債券の実質利回りであるイールドをY軸にとったものをイールドカーブ(イールドカーブについては以下の説明動画をご覧頂きたい)というが、イールドカーブがフラット化している現象は拡大局面の終わりのほうで見られる現象だ。イールドカーブがフラットになる理由はいくつかあるが、市場は金利が上昇しマクロ経済にネガティブな影響を与えるのではないかと心配している可能性がある。債券ファンドのキングと言われるBill Grossも同様の発言をしている。(公平のために付け加えておくと、直近で連銀が利上げすると言っている以上短期金利が上昇するのは当然。またこれほど長くインフレ率が低い状態が続けば長期金利もあがってこない。短期金利が上昇し長期金利が上がらなければイールドカーブは必然的にフラットになる。著名ファンドマネージャーがイールドカーブがフラット化していると警鐘を鳴らしているからといってリスク資産を引き上げるのはアホらしい)。

とはいえ、来週来月にこの景気拡大局面が終わりを告げるわけではない。企業の投資姿勢は明らかに前向きになってきているし、特に目立った大規模なクレジット事象(たとえば中国で金融機関が連鎖倒産しているとか、ヨーロッパ債務危機が再燃しているとか、アメリカのローンの不良債権化が進んでいるなど)はこれといって見当たらない。

しかしアメリカ株式は割高で投資家が狙っているヨーロッパ、日本株もすぐにアメリカにキャッチアップするだろう。P/B倍率はアメリカ株ですでに過去15年で最高だがヨーロッパ、日本はちょうど過去平均程度でまだまだ伸びる余地がある。投資家にとっては望ましい状態ではあるが、この状態があと1年なのか3年なのか、どれくらい続くかわからない。「現在の景気拡大局面は最終段階だ」というのはその程度の意味である。

後退

不況とは2四半期連続で経済が縮小することをいうが、不況であるとはっきりと分かるまでには統計的時差がある。景気の山から不況という谷に向かうこのプロセスでは公定歩合が最高に達しながらも企業の設備投資は減退し消費者の景気信頼感も同じく減退する。

不況

中央銀行は利下げを開始する。この時期には資産価格はスパイラルで落ちていく。売り手は買い手が見つからず、さらに価格を下げねばならない。買い手は売り手の苦境を見越して買い待ちする。「売りが売りを呼ぶ」という状態がこの時期だ。企業のリストラみ加速し失業率は上昇する。先行きの不透明感さが最高潮に達する。

以上、4つのサイクルのうち現在は”拡大”局面にあり、その拡大局面の中での終わりのあたりにいるのではないかというのが私どもの見立てだ。

リスクを具体的に

景気サイクルが拡大局面の終盤である、とはいえ来週来月に景気後退が始まるわけではない、少なくとも1年以上先だという認識を持ちつつ、2018年の大きなリスクについて考えていきたい。大きくわけて金融リスクと地政学リスクとに分けて考えたい。

金融リスク1 – 連銀の動向

現在の資産バブルを根底で支えているのは紛れもなく米日欧の中央銀行が大規模な金融緩和を行ってきたからだ。金利を0%に下げるだけにとどまらず市中のリスク資産、株式や債券を買いまくった。もちろん中央銀行は資産運用には興味がない。すべては量的緩和で資産価格を押し上げて景況感を上向かせ、個人には消費意欲を前向きにさせ法人には仕事を増やすためである。これがQE=量的緩和(量とは、市中マネーの量)であった。

ゼロ金利のなかでデフレの恐怖と戦うためには必要な政策だった、とされている。これが今年から逆流する。米連銀では購入資産から売却資産を引いた額がマイナスとなることが予想されている。すなわちバランスシートが縮小していく。

そして利上げ。連銀の利上げ予想を集約したドットプロットによると2018年は2-2.25%、2019年3%前後となっている。現在は徐々に金利をあげていくさなかにる。この金利上昇が実体経済にどれくらいインパクトを及ぼすかはまだ未知数である。景気サイクルの拡大局面をどれだけ長持ちさせるかは連銀の手腕に大きく依存する。

こちらのドットプロットチャートは9月チャートと12月チャートの比較だが、連銀の理事たちは9月時点よりも12月時点のほうがタカ派的(利上げに積極的)となっている。

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もしインフレが予想を超えるペースで進行すれば連銀はインフレを押さえ込むため利上げのペースを速めざるを得ない。ドルが全体的に弱含みしていること、中国の輸出物物価指数が上昇していること、資源価格が落ち着きを取り戻していることを考えるとインフレがこのまま低い状態でいつづけてくれるとは限らない。

2018年は年3度の利上げを見込むが、足元の実体経済が脆弱なまま利上げをしなければならない状況に追い込まれれば投資家には好ましくない方向に動く。逆に低インフレなままであれば連銀は利上げをしない言い訳ができる。株式市場は予想より多い4回の利上げより予想より少ない2回の利上げを歓迎する可能性が高い。

金融リスク2 – 米国の高すぎる株価からの反転

アメリカ株式市場の株価収益率(PER)は歴史的水準が16倍である。現在が22倍を突破しているので、過去の株価収益率からみると高値圏でいることは間違いない。

また、株価純資産倍率(PBR)もITバブルが崩壊してから過去最高の水準を記録しようとしている。市場は純資産が今後3倍になると期待していることになる。ちなみに、日欧の株式市場は株価収益率、株価純資産倍率とも米国のような高値圏にはなっていない。

“米国株が高値圏にある”という認識は誰もが持っている。もし米国株がこの高値圏から反転する場合、ここまで世界中の市場がシンクロしている状況では他の株式市場も同時に下落するだろう。ただし、これは投資家の群れ本能に基づくもので直接信用不安をトリガーするものではない。株価が割高だからそろそろ売っておこうという心理が市場に反映されたもので、リーマン・ショック時のような信用毀損が連鎖的に起こるわけではない。したがって下落幅はそこまで大きくなく、5-15%程度のものになるだろう。

金融リスク3 – 中国の債務バブル破裂

“理財商品”、”シャドーバンキング”という言葉が2013年ごろからバズワードとなったが現在騒がれなくなって久しい。しかしニュースでバズワードでなくなっただけで理財商品・シャドーバンキングがなくなったからではない。理財商品は現在555行で85,800本を抱えているとされる。そしtえこの数はいまだに増え続けている。

理財商品については、昨年に中国政府の通達で銀行など販売元金融機関が元本保証をうたうのを禁じた。また原資産の価格に応じて時価総額を表示することも必要となった。すなわち投資家が無リスクで高いリターンを得られるという幻想が終わることとなった。また理財商品を通じて地元のジョイント・ベンチャーや石炭会社などにファイナンスしていた経路が断たれることになる。市井の理財商品への投資家は「最終的には国が保証してくれる」と信じているが、徐々にそれが裏切られることになるだろう。

人民銀行は去年の暮れに地方政府のデフォルトを認める提案もした。シャドーバンキングを通じてひたすら膨張するのを許さないという姿勢だろう。デトロイト市破綻、カリフォルニア州破綻、北海道夕張市破綻のような地方公共団体のデフォルト現象が中国でも繰り返されるかもしれない。今まで膨張してきた債務を景気がいいうちにソフトランディングさせたいというのが中国当局の目論見だが、もし何らかの事情でうまくいかなかったときのインパクトは中国国内にとどまらずグローバルに波及する。

中国の家計、企業、公共の債務レベルはGDPの250%を超えている現在、成長を犠牲にしないとこの債務問題は解決できそうにもない。

商品価格も上昇した今、最終消費財に価格の上乗せがされるのも時間の問題

PMI、特に中国がインフレを世界に輸出することになる。インフレを抑えるために利上げの回数を増やすか、利上げ幅を大きくするしかない

地政学的リスク1 – 北朝鮮情勢

地政学的リスクについて。私たちアドバイザーがよく見聞きするのは、一般の投資家の方は地政学的リスクを重く見積もり(すなわち過剰に資産を売ってしまってリスクを取ろうとせず)、先ほどいくつかあげたような金融リスクについては甘く見積もる(ほとんど無視)ことが多いということだ。

北朝鮮がミサイルを発射する、というのは明確に「いまそこにある危機」であることには間違いない。そして、考えたくもないことだが昨年再稼働した日本の高浜原発あたりに着弾しチェルノブイリのように周囲数十キロは放射能で汚染され日本中が大混乱に陥る… というシナリオは頭に思い浮かびやすい。そして人間はリターンよりもリスクをより重く評価することは様々な研究で明らかになっている(ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?  ダニエル・カーネマン)。

北朝鮮のミサイル発射はリアルに情景が浮かぶ。しかし中国の債務問題についてはリアルに情景が浮かばない。天文学的な数字が書かれた帳簿を思い浮かべたところでピンとこない。しかし市場では北朝鮮問題のような地政学的リスクが勃発したときの傷は浅く短く、中国の債務問題のような金融リスク(信用リスク)が勃発したときの傷は深く長くなる。北朝鮮問題は確かに世界の平和について大きな影響を及ぼすものではあるが、それが必ずしも市場にご自身が考えているほどのインパクトを及ぼすものではないことを改めて指摘しておきたい。コトの成り行きについてはまた、私たちは外交問題については門外漢なので、現状をなぞる程度にとどめておく。

その上で北朝鮮情勢。

現在、トランプ政権が水面下で北朝鮮と何らかの交渉をスタートしたらしいことが報道で明らかになりつつある。昨年末のような「どちらが勇敢か」というチキンレース状態ではなくなってきている。もちろん今後この交渉が決裂するかもしれないし、交渉過程で金正恩が何らかの理由でキレてミサイルをぶっ放すこともなくはない。ミサイルが米国に向けて発射されれば、当然米国と北朝鮮は交戦することになる。

地政学的リスク2 – ヨーロッパ

私たちは2つのことに注目している。一つはイギリスのEU離脱のプロセス。2016年6月のイギリスがEU離脱を問う国民投票があってから離脱のプロセス、コストについて当局者の話し合いが進んでいる。特に金融センターとしてロンドンはEU内において大きな役割を担ってきたが、EUを離脱することによってロンドンのグローバル金融センターとしての立場は失われるかもしれない。また、離脱のプロセスに伴って物価の不安定化や不動産価格の下落、失業など実体経済に影響を及ぼすことも考えられる(不動産価格以外では今のところ目立った悪影響はない)。

次にスペイン・カタルーニャ州の独立問題。ら昨年末の州議会選挙で独立派が過半数をとったことから、再びスペイン内での独立騒動が持ち上がる可能性がある。カタルーニャ州が独立するということは、スペインがその独立コストを負担しなければならない可能性がある。スペインはせっかく欧州債務危機から立ち直りつつあるのに、カタルーニャ州の独立問題が再燃するとスペインの財政状況が悪化しかねない。

(個人的にはカタルーニャ州独立は民族自決、グローバル化に抵抗という点で応援しています)

これら地政学的な問題以外にももちろん大小政治イベントは無数にある。繰り返しになるが、地政学的リスクは人類の平和にとって大変重要な問題であることに間違いはないが資産運用という点でこのタイプのリスクに過敏に反応するのは得策ではない。同様に、オリンピックとかワールドカップなどの大きなスポーツイベントで景況感を判断しがちである。すなわち「オリンピックまでは株価、不動産価格は大丈夫だろう」のような発想だ。

2012年の北京オリンピックでは中国の株価はすでに低調だったし、2016年のリオデジャネイロオリンピックでもブラジル株式指数はリーマン・ショック後の最低を記録した。株式や不動産などのリスク資産はイベント前/後で都合のいい動き方はしない。「東京オリンピックまではもつだろう」みたいな言い方をする方に時々あうが、その相場観に支払う代償は大きくなるだろう。

今年度の主要な経済イベント

最後に簡単に、2018年度の主要な経済イベントについておさらいしておく。景気拡大局面の最後のほうにいるとすれば、中銀が今後どう金融政策を引き締めていくかにほとんどの投資家は神経を尖らせるだろう。特に米連銀は今後の世界経済を占う試金石となる。先ほど「連銀の利上げの回数が予想より少ないことを株式市場は喜ぶ」と書いたが、投資家が連銀に景況感判断を頼っている現在は逆に、「連銀が利上げをしたら利上げに耐えられるくらい経済は良くなっている」と投資家が判断しさらなる買いが入るかもしれない(その逆に、利上げを渋ったら世界経済にブレーキがかかるかもしれないと判断される可能性もある)。とかく連銀の行動はそれ自体がニュースの一大カテゴリーになるほどだ。

1月

22-23日 – 日銀金融政策決定会合

23-26日 – 世界経済フォーラム

2月

3日 – 連銀議長ジャネット・イエレン退任

3月

8日 – ECB会合

18日 – ロシア大統領選

20-21日 – 連銀公定歩合会合

4月

8日 – 日銀黒田総裁任期切れ

26-27日 – 日銀金融政策決定会合

5月

20日まで – イタリア総選挙

31日 ECB副議長退任

6月

8-9日 – G7サミット

12-13日 – 連銀公定歩合会合

14日 – ECB会合

7月

1日 – メキシコ総選挙

11-12日 – NATOサミット

30-31日 – 日銀金融政策決定会合

8月

下旬 – 米ジャクソンホールにて経済政策シンポジウム

9月

9日 – スウェーデン総選挙

13日 –  ECB会合

25-26日 – 連銀公定歩合会合

10月

7-28日 – ブラジル総選挙

12-14日 – IMFと世銀の年次会合

30-31日 – 日銀金融政策決定会合

11月

6日 – 米中間選挙

12月

13日 – ECB会合

18-19日 – 連銀公定歩合会合

QRコード http://amgwm.jp/2CW4bVZ

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