そもそもIFAとは
IFAとは、Independent Financial Advisorの頭文字をとったものです。Independentは独立、Financialは金融ですので、IFAとは独立して金融アドバイスをする人、という意味です。
この独立とは「特定の金融会社、またその金融商品からの独立している」という意味です。
たとえばある証券会社Aに所属している営業マンなら証券会社Aの商品しか販売することはできず、証券会社Bの商品を販売することはできません。すなわち金融商品を作っている会社に雇われた営業マンは当然所属先の金融商品しか売れないことになります。これは独立していない状態です。
しかしIFAは商品からもその商品を作っている金融会社からも独立しておりますので、A証券のものもB保険のものもC信託も販売することができます。クライアントの状況にあわせてどの金融商品にするかを幅広い選択肢の中から選ぶことができます。
また通常、銀行や証券会社では数年で違う支店に異動となったりするでしょう。しかしIFAには異動がありません。通常、資産運用を開始するまでのプロセスにはアドバイザーとの濃密な相談が必要です。クライアントは「せっかく時間をかけて自分のことを分かってもらったのに、何年かで異動したら新しい担当者にまたイチから同じことを話さなければならない…」ということが原理的に発生しません。異動がないので、一度信頼したアドバイザーがずっとクライアントに付きます。
「商品からの独立」と「会社組織からの独立」。これがIFAの「独立」における意味です。IFAというと、通常はアドバイザー個人を指し、IFAファームというとその個人が所属している会社を指す事が多いようです。ちなみにAMGウェルスマネジメントはIFAファームです。
クライアント、金融商品、IFAの関係
– IFA、クライアント、金融商品のトライアングル
IFAは金融会社、金融商品から独立しているので、クライアントの資産や保険料を直接お預かりすることはありません。また口座を閉じたり解約して資金を戻す際も、ご資金がIFAを経由することはありません。最初から最後まで、IFAはこのお金の流れに一切関与できない仕組みとなっています。クライアントの心情的には「AMGに資産を預ける」となるようですが、資金の決済や保管はIFAがタッチできないところで行われます。これはIFAビジネスのもっとも基本的な仕組みです。
IFAはクライアントから運用指図などを委託され、金融商品とひも付きます。またIFAが投資金額の増減や住所変更など事務的なことを受け付けます。
IFAの歴史
なぜIFAが誕生したのか、簡単に歴史的な背景を振り返ってみましょう。IFAという言葉が初めて出てきたのは1960年代のイギリスだと言われています。それまでにも業として金融商品のアドバイスをする人たちは存在していたものの、職能集団の一つとしてIFAが認知されはじめたのがその頃です。
それまでは銀行や証券会社、保険会社がセールスマンを自社で雇って営業をしていました。彼らは当然自社商品を販売したいわけですから、利益相反になる場面が出てきます。たとえばあるクライアントにとっては商品Aがふさわしくともセールスマンは自社商品Bを販売するしかない、といったように。
この金融機関とクライアントとの利益相反がIFAを生み出しました。IFAは顧客の立場に立ってアドバイスすることでフィーを得ますから、顧客との間で利益相反となる可能性が少なくなるといえるでしょう。この20-30年の間に金融商品を製造する会社と、金融商品を販売する会社(IFA)とが分化してきたのです。
アメリカでは全金融商品の販売の3割がIFA経由になるなど、IFAが金融市場で果たす役割は日に日に大きくなっています。
注1) とはいえ、報酬の形態によってはなおも顧客との利益相反が生じる可能性がありますので、IFAを利用する際にはしっかりとIFAの報酬体系を確認する必要があります。
IFAのライセンス
IFAは金融商品を取り扱います。金融商品は誰でも販売することができるわけではなく、ライセンスが必要です。お医者様に医師免許が必要なように、IFAにもライセンスが必要になるのです。医療の世界ではブラックジャックのような「ライセンスはないけど凄腕」という人が探せばいるでしょうが、IFAの世界にはライセンスのない凄腕はおりません。なぜならライセンスがないとそもそも証券会社や保険会社が商品を取り扱いを認めてくれないからです。
香港でIFAと名乗るためには、証券のライセンスあるいは保険のライセンスが必要です。どちらか片方を保有している場合もありますが、弊社の日本デスクのアドバイザーのように両方保有していることもあります。
証券のライセンスでは、株式や債券など個別銘柄の推奨をしたり、また独自にファンドを組成し運営したりするライセンス。保険のライセンスは生命保険や損害保険を販売することができます。
ライセンスの確認方法
ライセンスは各監督官庁で確認することもできますし、通常は最初の打ち合わせの際にアドバイザーからライセンス番号を提示します。
IFAが提供するもの
IFA文化が根付くにつれ、IFAの職能も下記のように細分化されていきます。
- 資産運用
- 生命保険
- 損害保険
- 不動産ローン
- 節税対策
- 信託サービス
ここから更に資産運用一つとっても株式ブローカーの色合いが強いのか、それとも一括で資金をお預かりして運用するファンドマネージャーのような動きをするのかでも異なってきます。
このように、一口に「IFA」とはいってもどのようなサービスを提供するかはIFAによって大きく違ってくるのです。それゆえ、IFAがご自身の持っているニーズを満たすかどうかがIFAが選びには重要になるのです。
IFAサービスの提供地≠資産の保全場所
香港のIFA業界は他の国のIFAと大きな違いがあります。それは「香港以外の国の金融商品をも取り扱うことができる」ということです。
香港のIFAにお願いしたら、自分のお金は香港にとどまり続けるんでしょう? 香港のIFAにお願いしたら、香港の株式とか香港のファンドにしか投資できないんでしょう?
などの質問がございますがどちらの質問にも答えはNoです。これはIFAを通じて金融商品を購入する際のレイヤーがごっちゃになっているからなんですね。
弊社のサービスには3つのレイヤーがございます。1つめのレイヤーは金融サービスを提供する場所。これは香港です。私たちは香港で金融ライセンスを取得しているので、香港がアドバイスの提供地です。
2つ目のレイヤーは金融商品です。このレイヤーで投資家の資金が管理されます。このレイヤーはAMGではありません。実際にご投資金を送金いただくのは世界的に有名な金融会社です。IFAは商品から独立しておりますから、投資家が投資金を入金するときも出金するときも、投資家のお金に触ることはできません。
3つ目のレイヤーは株式や債券など具体的な投資先です。これは文字通り世界中のものとなりますから、香港の株式であったりドイツの債券であったりアメリカのファンドだったりするわけです。この投資先をAMGがコントロールしています。
ですので香港のIFAを使ったとしても、ご投資資金が香港にとどまり続けることはむしろまれで、送金した次の瞬間には香港以外のオフショアで、世界でもっとも厳重な管理体制・法体制のもとコントロールされます。
香港籍の商品を選択したとしても、私どもの扱う金融商品はグローバルな金融会社が提供しているものですから、ご投資金が香港内にとどまり運用しているものとは限りません。香港籍でない商品を選択したのであればなおさらです。それはシンガポールかもしれないしイギリスのマン島かもしれないし選択する商品によって異なるのです。とはいえ金融オフショア地がほとんどです。
香港はサービス提供地ですから、ポートフォリオを練ったりライフプランを考えたりするところです。
IFAの報酬 – コミッション・ベース vs フィー・ベース
IFA業界が成熟してくるにつれ、IFAにはクライアントのニーズに応じた様々な報酬体系が生まれました。大きな流れとしては、コミッションベース vs フィーベースです。
コミッション・ベースとは金融商品を販売し、その販売の対価として商品の提供元から受け取る方法です。伝統的に銀行や証券会社はこの手法を採用しています。
フィー・ベースとは販売の対価としての報酬ではなく他の尺度で報酬を得る方法です。たとえば運用残高に応じて報酬を頂いたり、毎年定額で頂いたり、時間給でいただくようなやり方です。フィー・ベースの場合はこの他にも様々な方法がありますが、コミッション・ベースとフィー・ベースが大きく違うのは顧客との利益相反が起こりやすいかどうか、という点です。
コミッション・ベースでは、IFAとしてはコミッションの高い金融商品を優先して販売することが考えられます。IFAは「金融商品から独立していること」で幅広く金融商品を扱い、その中からクライアントの事情に適したものを販売することができるはずですが、販売手数料はそもそもクライアントから見えないため結局はコミッションの最も高いものがクライアントにもっとも適したものとは限らず、そこで利益相反が起こりえます。
一方、フィー・ベースではコミッション・ベースの報酬体系よりも利益相反が比較的起こりづらい仕組みであると考えられています。フィー・ベースは運用資産額の何%、時間あたりいくら、年間いくらなどクライアントに明示した上でサービスを提供するので、クライアントがフィーに対して納得していることが前提となるからです。もっとも、必ずフィー・ベースのほうがコミッション・ベースよりも利益相反が起こらないかというとそうではありません。
例: 時価総額に対して1%、年間USD5,000、相談報酬1時間1万円など。いずれかの組み合わせでサービスを提供していることが多い。
制度としていうと、イギリスでは日本の金融庁にあたるIFAという組織がコミッションを受け取ることを禁じました。アメリカではコミッション・ベース、フィー・ベースともに認められており、香港でもアメリカと同様にコミッション・ベース、フィー・ベース両方ございます。香港では2015年からの手数料徴収方式は認められるものの、いくらの手数料を得ているのかを開示する制度が誕生し、手数料体系の透明化が進んでいます。
日本ではまだまだコミッション・ベースが主体でフィー・ベースへの移行は進んでおらず、またそのコミッションも世界標準からすると比較的高いので日本の資産運用業界が遅れていると言われる一因となっています。
弊社AMGでは提供する商品によってコミッション・ベースであったりフィー・ベースであったりすることがありますが、大きくわけますと資産運用では時価総額に対して0.5%-1.0%のフィー・ベース、生命保険ですとコミッション・ベースで頂戴しています。
プライベートバンカーとの違い
プライベートバンクとは、富裕層に金融サービスを提供する金融機関のことを指します。そこで実際に富裕層に会って提案をする人たちのことをプライベートバンカーと言ったりします。かつてはプライベートバンクとはスイスの由緒正しい銀行だけをプライベートバンクと言い、それ以外はプライベートバンキングと言って区別をしたりしてましたが今ではその区別はあまり意味を持ちません。また現在では銀行機能を持たない証券会社や、そもそも金融業ですらない不動産会社が「プライベートバンク部門」をつくり富裕層をターゲットとしています。すなわち「富裕層に資産運用のアドバイスをする人」のことをプライベートバンカーと言っています。
このように、プライベートバンカーは「誰を顧客とするか」という顧客との関係を切り取って名前をつけたものです。一方、IFAは「金融商品をどう扱うか」という商品との関係を切り取って名前をつけたものです。ですのであるIFAが富裕層の顧客しか相手にしないというのであれば、それは一面ではプライベートバンカーといえるでしょう。
結局はご自身の求めるサービスとそのコスト
ところで欧州でプライベートバンカーの巨額脱税幇助が相次いだため「プライベートバンカー」に対するイメージが悪くなり、プライベートバンカーたちは「ウェルス・マネージャー」を名乗りはじめました。IFA業界は伝統的に自らを「ウェルス・マネージャー」を名乗っていましたので、単に「ウェルス・マネージャー」という肩書きではIFAなのかプライベートバンカーなのかどちらか判断がつかなくなっています。
とはいえ担当者がプライベートバンカーなのかIFAなのかウェルス・マネージャーなのかではなく、自分が必要なサービスを納得できるコストで応えてくれるのか、ということのほうがずっと大事でしょう。