香港IFAで働くための資格試験(証券編)
香港のIFAでアドバイザーとして働くには、個人で資格試験に受かり、所属するIFAを通じて業界団体からライセンスを取得する必要がある。では、どういった内容を勉強するのか。今回は証券ライセンスの試験の概要と内容をご紹介。
香港の証券監督当局:SFC
前回に引き続き、香港のIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)企業で働くための資格試験についてご説明します。前回は保険のライセンスでしたが、今回は証券のライセンスについてお話します。弊社AMGも証券ライセンスを保有しています。
香港では、株や債券、ファンド、デリバティブ(金融派生商品)など証券にかかわるビジネスを監督しているのは、SFC(Securities & Features Committee)という政府の独立機関です。証券の売り買いだけでなく、アドバイス、資産運用、格付けなどの関連の業務を行う企業はすべて、SFCからライセンスを取得する必要があります。SFCのライセンスの種類は1つ(One License)ですが、Regulated Activity (登録活動)が9タイプあり、ビジネスの種類や性質に応じて適当なタイプを申請し、登録を受ける必要があります。
1 Dealing in Securities
2 Dealing in Futures Contracts
3 Leveraged Foreign Exchange Trading
4 Advising on Securities
5 Advising on Futures Contracts
6 Advising on Corporate Finance
7 Providing Automated Trading Services
8 Securities Margin Financing
9 Asset Management
10 Providing Credit Rating Services
ちなみに、弊社AMGは1.Dealing in Securities(証券取引) 4. Advising on Securities(証券に関するアドバイス) 9. Asset Management(資産運用)のタイプの認許を受けていて、私個人は1と4のLicenced Representativeとしてのライセンスを持っています。
Licensing Examination for Securities and Futures Intermediaries
保険の資格と同様、個人としても上記業務に携わる場合、資格試験に受かった上で、所属するSFC認定企業を通してRepresentativeとしてのライセンスを申請しなくてはいけません。SFCの資格試験はHKSI(Hong Kong Securities and Investment Institute) http://www.hksi.org/hksi/ という機関が運営しており、中環(Central)の隣のエリア上環(Sheung Wan)に試験センターがあります。試験は16種類があり、上記のRegulated Activity (RA)に応じて試験を組み合わせて受験します。
Paper 1 Fundamentals of Securities and Futures Regulation ★
Paper 2 Regulation of Securities
Paper 3 Regulation of Derivatives
Paper 4 Regulation of Credit Rating Services
Paper 5 Regulation of Corporate Finance
Paper 6 Regulation of Asset Management
Paper 7 Financial Markets ★
Paper 8 Securities ★
Paper 9 Derivatives
Paper 10 Credit Rating Services
Paper 11 Corporate Finance
Paper 12 Asset Management
Paper 15 Sponsors (Principals)
Paper 16 Sponsors (Representatives)
証券の売買をするには、Paper 1 , Paper 7 およびPaper 8の試験が必要です。試験問題の形式は保険の試験と同様で、問題は英語と中国語の併記、回答は4択です。Paper 1と7の試験時間は90分で問題数は60問、Paper8は60分で40問です。どの試験も70%以上正解すると合格です。CBE(コンピューターの試験)と PBE(紙の試験)が選択できます。コンピューターで試験を受けると、試験終了とともに試験スタッフから結果の紙(Unofficial Result)が手渡されて持ち帰れます。(やはりなんでもスピーディーな香港!)ただし、正式な合否はHKSIのサイト上に8営業日後にアップされます。どの試験も試験申し込み後はHKSIのホームページからテキストがダウンロードでき、このテキストの内容に沿った問題が出されます。試験を申し込む前にちらっとテキストが見たい場合は、同僚等に相談するしかなさそうです。
では、各試験の内容を見てみましょう。
Paper 1 Fundamentals of Securities and Futures Regulation(証券と先物取引規制の基本)
Paper 1 は証券や先物取引にまつわる法律や規制の枠組みについて勉強します。香港の会社法や金融行政の基本を踏まえた後に、SFO (Securities and Futures Ordinance, 証券・先物取引法)という法律の枠組みや意図を理解します。前述した証券監督機関SFCの組織や役割についても覚えなくてはなりません。その他、香港の証券取引所であるThe Stock Exchange of Hong Kong (SEHK)についてや、証券取引にまつわる不正行為や不適切な営業活動などにも触れ、話題は多岐にわたります。つねに注意しなくてはならないのが、どの法律がどの活動を規定しているのが、どの機関がどの職種を取り締まっているのか、何についての紛争はどの委員会が担当しているかなどのポイントで、法律や権限の範囲に関する質問が多いです。
Paper 7 Financial Markets(金融市場)
Paper 7はシンプルな内容で、金融市場についてです。世界の金融市場および香港の金融市場の全体像、そして株、債券、為替、デリバティブなど個別の市場がどのように運営されているかを勉強します。金融にまつわるリスクについての説明もあります。債券については、収益率や価格の計算問題もあるので、数学的な理解も求められます。簡単な例題を上げますと、Calculate the total amout obtained at maturity of a deposit of HKD200,000 after three years if the interest rate is 6% per annum(simple interest). (20万香港ドルで年利6%(単利)の債券の3年で得られる総額金額を求めよ)→答え:200,000 (1+6%x3)=HKD236,000 こちらは単利の計算なので簡単ですが、実際には利子を繰り入れる複利の計算もしなくてはいけないのでより複雑な計算式を覚える必要があります。
Paper 8 Securities(証券)
Paper 8 は証券にフォーカスして詳しく勉強します。香港における債券市場の歴史や香港での株式上場などについても解説してあります。Paper7でもあった利子や債券価格の計算はより複雑なものが出題されます。証券の分析の章もあるので、保険の資格試験でも触れた、収益率など比率分析の計算問題もたくさんあり、計算機が必須です。ストックオプションのリスクを図るデルタ、ガンマ、ベガ、シータなどのパラメーターについては概念が複雑でちょっと理解するのが大変です。
受けてみての感想
以上、試験の内容をかいつまんでご紹介しましたが、実際受けた感想としましては、とにかくPaper 1 が難しく苦労しました。SFC資格試験の中でも、一番の難関と言われているそうです。テキストにも参考として必要勉強時間が1章につき約10時間(全9章で計90時間)と書かれているほどで、読む量がかなりのものです。ましてや内容が法律なので、テキストも問題も法律用語の説明や言葉の定義ばかりで、普通の英語に慣れている人でもかなり読みにくい文章になっています。一方、Paper7,8は具体的な投資にまつわる話で面白く、興味深く学べました。
勉強を通して、香港政府がいかに戦略的に法やシステムを整え、金融市場としての発展をけん引してきたがよくわかり感心しました。保険の資格試験もそうでしたが、テキストはよくまとめられていて、香港の規制の他、証券やデリバティブの原理や仕組みが短時間で理解できますので、お客様にアドバイスをする際にはとても役に立っています。IFAの中には、保険の資格だけを保有している人が多いですが、もし株・債券、ファンドなどに投資をするのであれば、証券の資格も持っている担当者の方が安心ですので確認してみてください。登録の有無はSFCのウェブサイトで確認ができます。弊社AMGの場合は、”Asset Management Group Limited”という名前で検索いただければ出てきますので、試しに調べてみてください。
保険の資格についての前回の記事はこちら。